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Lot Record  作者: LotRodriguez
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- PreOpening1 -

[@Lot Record]

8月3日花火大会当日

 朝からやまだやまおは大忙しだった。BBQのグッズを用意したり、今日の花火大会で売り出すものを準備したり、車をどかしたりしていた。Lotは何もしないので、やまだやまおが準備するしかなかった。


昼過ぎになって眠そうな顔をしてロトが来た。遅れて、リオナ、レイズ、JKが来た。


のんびりした雰囲気の中、ついにLot Recordはオープンした。とは言っても、花火大会かつBBQみたいなノリなので、レコードショップ新規オープンという感じではなかった。


Lot Recordは25畳程の広さで壁一面にレコードが収納されていて、その前はカウンターとDJ Boothで仕切られていた。反対の壁際には大きなソファーセットが2つと簡易ベッドがあり、通路を隔ててDJ Boothがもう一つあった。奥はガランとしていた。


この日は、Lot Recordの入口では、やまだやまおが一生懸命、フランクフルトやビールを売っていたが全然売れていなかった。売れないので飽きると、中に入っては、外に通る人に向けて、DJをしていた。やまだやまおが一生懸命やっているといろんな人が中を覗いて来たり、話しかけてきた。そして、花火が終了し、一枚も売ることなく終了かと思ったその時、奇跡は起きた。


彼氏と彼女という雰囲気のカップルが入店してきた。


彼氏:「ここはひょっとしてレコード屋ですか?」

Lot:「こんばんは~。そうです。と言っても、まだオープンしてないんですけど、とりあえず、中もあるんで見て行ってくださいよ~。」

彼氏:「かなり興味あるんでいいすか?」

Lot:「店長、お客さんでーす。よろしくお願いしまーす。」


Lot:(こんな営業かけるなんて、俺は、ピンプ(女に食わしてもらっている男)か、それとも、町でよく見かけるキャバクラの黒服か。うけるね。レコード屋にはみえねぇなぁ。)

と思っていた。


しかし、それがLotの目指していたレコード屋であり、できるなら、「お客様、今夜のお遊びはLot Recordでどうですか?」などと声をかけたがっていたほどだった。


店内ではやまだやまおが一生懸命接客をしている。Lotは外で待っている彼氏の彼女にフランクフルトを無料であげて、ビールもサービスしていた。

そして、彼氏は何枚かレコードを買って行ってくれた。


やまだやまお:「やったね。これで今日の目標は達成したね。開けてよかったよ。」

Lot:「ホントだね。ヤマちゃんが言った通りだね。いや~うれしいよ。」

JK:「おめでとう。とりあえず、飲もう。」

一同:「けんぱーい。」


Lot RecordではというかLotの仲間は、みんな、昔から「乾杯」を「けんぱい」という。「こんにちは」を「けんにちわ」という。Lotの昔の知り合いが、帰国子女の子がいて、うまく発音できずに「乾杯」を何度言わせても「けんぱい」になっていて、それがHotだと思っていた。


そうこうしているうちに、俺たちが楽しそうにしているのを見ていた別のカップルがまたご来店。みんな喜んだ。


Lot:「うち、土禁なんですけど、よかったら靴脱いでソファーでゆっくりビールでものみましょうよ!それからレコードの話しても遅くはないっしょ?」

彼氏2:「ですよね!楽しそうだったので、つい覗いちゃいました。」


彼氏2は、そう優しく微笑んでビールを片手に話をした。


彼氏2:「俺、R&B(アールビー:黒人の歌謡曲)が好きなんですよ。」

やまだやまお:「大丈夫です。Lotがいい曲を紹介してくれますから、聞くだけ聞いてみてくださいよ。」


そう言って、店長のやまだやまおとLotは接客を交代した。


Lot:「どんな曲好きなの?」


ロトは毎回接客の時に聞くセリフだ。その相手の好きな曲を聞けば欲しい曲のリストが頭にDLされてくるとかこないとか。レコード好きに多い病気の一つだ。


彼氏2:「えっと・・・なんだっけ?」

彼女2:「As Ifとか。」

ロト「あるよ、これね。でも、オリジナルしかウチ取扱いしないから高いよ?まぁ他よりは安いと思うけど。相場が8000円位だから、As Ifは5000円だなぁ。」

そういいながらレコードでAS IFをかけていた。


彼女2「わ~!いいですよね。これ。やっぱりアガるわ。」

Lot:「でしょ?でもこれは高いからオリジナルじゃなくてブートでもいいんじゃないの?レコードオタクならオリジナルいったほうがいいよっていうけど。」

彼氏2「オリジナルとブートってなんですか?」

Lot:「オリジナルというのは、一応正規盤としてレーベルなりレコード会社がちゃんとプレスしたものを言って、ブートというのは文字通りブートレグのことで、海賊盤ってこと。」

彼氏2・彼女2「なるほど~。じゃぁ、オリジナルの方がいいんですね。」

Lot:「レコード集めてるならオリジナルの方がいいけど、オリジナル嗜好でもないのにオリジナルを集めるのは初心者にはちょっとオススメできないよ。ブートならこれ1000円か2000円だよ。」

彼氏2・彼女2「えぇ・・・そんなに違うんですか?」

Lot:「そうだよ。全然違うよ。だってブートはゴミだから。オリジナルを買いたくない人とか使いたくない人が買うものだし、まぁ、最近は騙されて買う人も多いけど。」

彼氏2「そっか・・・」

Lot:「そうそう。だから、初心者ならまずは安い曲をオススメするわけよ。安くてもいい曲は沢山あるし、それもオリジナルが安いからそういう集めやすいところから攻略していってほしいわけね。」

彼氏2「値段の違いっていうのは、なんなんですか?」

Lot:「まぁ、細かい話いろいろあるけど、一番はプレスの多さじゃないかな。その曲がプレスされるとき何枚出るかそれが一番大きい要因で、次が、国内でもゲットしやすいかどうかじゃないかなぁ。それから人気だな。と思うけど。もっというと盤質とかプレスの原産国なんかや収録Mixにもかなり影響があるけど、初心者はとりあえず、そんだけ覚えれば十分じゃないかな。レコードという面白いマテリアルはビニールだからビニールって英語では呼ばれているんだよね。単なるビニールがプレスされて音楽化されるとこういう風になって名曲が単なるビニールに命を吹き込むんだよ。そして名曲というのは聴いたタイミングによってかわるし、人の評価も時間と共にかわる。それがまた値段に影響を与えるから面白いってわけね。」

彼氏2「なるほど~。じゃぁ、オススメの曲とか無いですか?」

Lot:「そういうGood Question(グッドクエスチョン:いい質問)を待っていたんだよ。これなんてどう?」


そういうと、Mis-Teeq / Can’t Get It Back Remixをかけ始めた。


Lot:「この曲はもともと、Blaqueの曲なんだけど、それをMis-Teeqがカバーするんだよね。そんな感じだから、結局、UK Promo(イギリスのプロモーション用のレコード)でしか出回らなくて。しかも、オリジナルバージョン収録の盤ってのもあるんだけど、それもPromo止まりだったんだよね。内容も微妙だったし。まぁ、このリミックスはブリンブリンだからね。ヤヴァイよ。」

彼氏2:「確かに!この曲はいいですね。」

Lot:「まぁ、沢山いい曲はあるから、どんどん紹介するよ。」


そう言ってLotは次々と彼氏2に曲を紹介していった。


彼女2:「ねー、疲れた。そろそろ行こうよ。」

彼氏2:「わかったよ。じゃ、そろそろ行くか。」

彼氏2:「すいません、そろそろ行きますので、これとこれ、ください。」


そう言って2枚のレコードを買って行った。

レコード好きの人にはこれが何と何だったか気になって仕方が無いと思うので、書いておこう。「Texas / Say What You Want」と「Samantha Muba / Tell Me Gotta Tell You」である。


そして、そのやり取りの中、3組目もご来店した。

3組目はミドル好きのイケメンだった。かなりのコレクターなようで、一般的なところは抑えているようなことを言っていた。ラップなので、やまだやまおが担当した。


深夜0時を過ぎたころ、最後のお客も帰り、俺たちは安堵した。


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