第7話
「まぁ!セシル様!よくお似合いですわ!」
エドアルドから贈られたドレスと装飾品を身に付けたセシルにニコラは感嘆の声を上げた。
「え?そうかしら?」
いつも身につけることない色と見ためのドレスにセシルは落ち着かなかった。姿見に映る自分の姿はどう見ても『服に着られている』ように見えるのだが
「えぇ、えぇ。よくお似合いですとも」
セシルはニコラの言葉など聞いていないかのように姿見の自分の姿を角度を変えながらまじまじと見ていた。そんなセシルを見つめ、ニコラは確信していた。
これは間違いなくセシルに贈られたものである、と。
薄桃色を基調としたドレスは肌の白いセシルにはよく似合っていた。真珠をあしらった髪飾りはセシルの漆黒の髪によく映えた。それに胸元に輝くルビーと真珠の首飾り・・・。大きな石ではないがその紅い輝きはセシルの碧い瞳と双極を成し、セシルの美しさをさらに引き立てている。
一度しか逢っていないのに陛下はよくこれだけセシル様に似合うものを揃えらたものだ・・・。
ニコラは感心していた。
「ねぇ?本当に可笑しくない?似合ってる?」
不安げなセシルの頭をニコラはそっと撫でた。侍女が主人の頭を撫でるなど普通では考えられないが、親子ほど歳が離れ、親子のように接してきた二人にはそれは自然な触れ合いであった。
「私はセシル様には嘘は申しません。本当によくお似合いですよ」
「・・・うん。ありがとう」
セシルはまだ自信が持てなかったがこれ以上言うのをやめた。ニコラはセシルの表情からそれを感じ取ったが何も言わなかった。
本当に、どうしてこうも謙虚なのだろう?
セシルはもっと自分に自信を持つべきだとニコラは常々思っている。華美な服装は自分には似合わないとセシルは思っているが、実際にはよく似合うのだ。
確かに、セシルの母親が好む派手すぎる物は似合わないが、今回のような明るめの配色の可愛らしい感じの服はよく似合う。
これからはこういう感じのドレスを着せよう。
ニコラは密かに決意していた。
「さてと、セシル様。少々お待ちいただけますか?私も着替えて参りますので」
ニコラの言葉にセシルの顔はパッと明るくなる。
「ニコラ、付いてきてくれるの?」
「当たり前です。侍女は一人だけ同席出来るのですよ?それに、セシル様をお一人にはできません」
先程の庭園での一件もあるのだ。一人になどできるものか。ニコラはセシルに気づかれぬようそっと溜息をついた。
本当にこの主人はこういうことに疎い・・・。
だからこそ、ニコラは誓う。
守る・・・と。