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第68話

ちょっと短いんですが、久しぶりにセシルの出番です。

「・・・んっ」


朝、セシルは無意識に自分の隣にあるはずの温もりを求め、そっと手を伸ばす。だが、そこには何も無くてセシルは不思議に思って瞳を開く。そして、思い出す。


「・・・あぁ、そっか」


昨夜、エドアルドは昼間言った通りこの部屋を訪れなかった。少し前まで当たり前だった一人きりの目覚めがセシルはひどく寂しかった。


「今夜は陛下はいらっしゃるのでしょか?」


セシルが顔を洗い、髪を梳き、着替えを済ませて食卓に着くと食事の準備をしながらニコラが問いかけた。それにセシルは困ったような笑みを浮かべて答えた。


「さぁ、どうかしらね。もしかしたら暫く来られないともおっしゃったから」


セシルはそう言いながら胸の内に寂しさが込み上げていた。出来ることなら毎晩でも逢いたい。その腕に抱かれて眠りたいと願ってしまう自分がいる。それと同時にそんな我が儘を言えないと我慢している自分も存在していた。


エドアルドが国王である以上、こんなことはこれから先も起りうることだ。公務で王宮を空けることもあるだろう。今は落ち着いていると言ってもいつ戦が起こるか分からない。そうなってしまえばエドアルドは戦場に赴き、セシルの側にはいられなくなる。


それに先日の一件でセシルの立場その物が揺らいでいるとセシルは感じていた。このまま王宮を追われることにでもなったら二度とエドアルドに逢うことはできない。これから先の長い人生をエドアルド無しに生きて行かなくてはならなくなる。


寂しくても寂しいなどとは言ってはいけないとセシルは思っていた。


「セシル様、王太后様の元より使いが参りました。セシル様お手紙だそうです」


セシルが朝食を終え寛いでいるとニコラが書簡を持ってきた。中身を見れば今日の午後、一緒にお茶でもいかがという内容だった。セシルは無性にクラリッサに逢いたくなった。この胸の内に宿る不安も寂しさも口に出すことは出来ないがクラリッサと過ごす時間は自分にとって大きな安らぎになるように思えた。


「ニコラ、お返事を書くわ。準備をお願い」


ニコラはすぐに紙とペンを用意した。それを受け取りセシルはクラリッサに誘いに応じる返事を書いた。


「これを王太后様へお願い」


ニコラに手紙を託すとセシルはまるで祈りを捧げるかの様に胸の前で手を組んだ。それは己を励ますために無意識に行われた行為だった。


次からブルックナー家の秘密編になります。

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