表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/103

第56話

「何だと?!」


舞踏会を終えたエドアルドの元にセシルがディレクに暴力を振るわれたとの一報が入った。エドアルドはそれを聞いて大変驚いた。


「セシルの具合は?」


報告を持ってきたエルンストに早口に問いかける。


「頬が少し腫れておいでで、口の中を少し切られたようです。平手で叩かれたようで、骨には異常は無いだろうとのことです」


エルンストの言葉にエドアルドは今すぐセシルの元に駆け出したい衝動に駆られた。だが、それを堪えてその場に留まった。


エルンストと話し合わなければならないと思ったからだ。



「・・・母親と兄が来ているなんて報告は受けていないぞ?」


知っていれば面会になど行かせなかった。エドアルドは自らの行動を悔いた。


「恐れながら、あの件は極秘事項です。知っている者は一部しかおりません。ですから・・・」


「ブルックナー家が一家総出で来ていても誰も不審に思わない、か」


エルンストの言葉をエドアルドが引き継いで呟く。セシルの立場を守るために極秘に事を進めていたことが裏目に出た。エドアルドはギリっと歯軋りして窓の外を睨みつける。


「どうなさるおつもりですか?」


エルンストの問いかけにエドアルドは窓の外から視線を外さずに応える。


「どうするも何も、表立って処罰すればこの件が公になる。芋づる式にあの件も公になりかねん。そうなっては大臣連中が黙っていまい」


エルンストの顔が曇る。エドアルドの言うことは尤もだ。これはセシルの立場を危うくするに足る大事件なのだ。


「この件はすでに戒口令を出しました。後は対処の問題だけです」


その対処が一番難しいことをエドアルドもエルンストも分かっている。下手をすればセシルの立場はもちろんだが、ブルックナー家の存亡にも関わる。


ふっとエドアルドが溜息をついた。そして、窓の外から視線を外してエルンストの方へ向き直る。


「当初の計画通りに事を進めるしかあるまいな・・・」


「しかし、それでは・・・」


「本来なら極刑にせねばならぬ事案だがな」


それが出来ぬ状況であることが腹立たしい。しかし、怒りですべてを台無しにするわけにはいかない。セシルを手放すことなどエドアルドには出来はしないのだから。


エドアルドは湧きあがる怒りをグッと堪えて冷静に物事を考えることに努めた。


最善策などありはしないのかもしれない。だが、諦めるわけにはいかない。


「エルンスト、準備を進めておけ。あの件が片付いたらこの件へ移るぞ」


あの件とはゲオルクの件だ。決行が目前に迫っているためそちらを優先するしかない。


「畏まりました」


エルンストはそう答えてエドアルドの執務室を後にした。


「何でこうも次々と・・・」


エドアルドは苦々しい気持ちでそう呟いた。そして、セシルの元へ行くために自らも執務室を後にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ