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第14話

「セシル、そう拗ねるな」


エドアルドはセシルの頬を人差し指でつんつんと突きながらそう言った。


「・・・知りません」


セシルはそっぽを向いたまま、そう答える。まだ拗ねているらしい。エドアルドはセシルを抱きしめる手に力を少しだけ力を込め、その頬に自分の頬を擦り寄せた。


「無理強いはせぬと申したであろう?セシルの覚悟が出来るまで、ことを進めることはせぬ」


エドアルドは諭すような口調でそう告げた。その言葉受け、セシルは無理やり身をよじり、エドアルドから少しだけ距離を置いてその顔を見つめた。


「それは、何事においてもですか?」


セシルが言わんとしていることを何となく察したエドアルドはすぅっとセシルから視線を逸らす。


「あー・・・そのつもり・・・だが」


ちらりとセシルに視線を戻し、エドアルドは続けた。


「お前とこうして過ごす時間は・・・多く取りたいと・・・思う」


まるで悪戯がバレた子供のような表情でそういうエドアルドにセシルは思わず、笑みをこぼした。


「セシル?」


笑われるとは思っていなかったのだろう。エドアルドが不思議そうな顔をしている。


「分かりました。私も陛下のことがもっと知りたいですから」


「そうか!」


セシルの答えにエドアルドは破顔し、力いっぱいセシルを抱きしめた。



抱きしめられながらセシルはふと考える。父以外の男性に抱きしめられるなど初めての体験だった。比べる相手もいないのだがちょっと妙だ。



あぁ・・・そうか・・・



「・・・嫌じゃないんだわ・・・」


「ん?何か言ったか?」


「い、いえ、何も」


思わず漏れた小さな呟きはエドアルドの耳には届かなかった。エドアルドは然して気にした様子もなく、セシルの髪を梳いている。エドアルドの胸に顔を埋めながらセシルは先程思い至ったことをもう一度考える。



どうして、嫌じゃないのかしら?



さらに考えを巡らそうとしていた時、そっとエドアルドから抱擁を解かれる。


「セシル」


エドアルドが真剣な眼差しでセシルを見つめている。


セシルの心臓がトクンと跳ねた。


「少しずつでいい。俺を知ってくれ。そして、すぐでなくていい。俺を愛してくれ」


エドアルドが『余』ではなく『俺』という言葉を使った。それは彼が国王としての仮面を取り去ったことの意思表示に他ならない。


それに気付いたセシルは思う。



あぁ、この方は一人の男として自分に愛されたいのだ、と



セシルは胸に何か込み上げてくる物を感じた。それが何かはまだ本人も気付いていないのだけれど・・・。


「・・・はい」


セシルはそう返事をして、今度は自分からエドアルドの胸にそっと頬を寄せたのだ。




真夜中。


セシルが目を覚ますとそこには端正な顔立ちがあった。



あのまま話しながら眠ってしまったんだわ・・・



セシルは目の前のエドアルドの顔を思わずまじまじと見つめた。


銀色の髪は月明かりに照らされ、錦糸のように美しかった。すぅっと通った鼻立ちに形のよい唇。



まるで彫刻か何かのようだわ・・・



セシルは無意識にその顔へと手を伸ばした。もう少しで触れる・・・。その瞬間、急に手首を掴まれた。


「きゃっ」


何事かと思えばエドアルドがニヤリと笑ってセシルの手首を掴んでいる。


「お、起きてらして?!」


「お前があんまりじろじろ見るから目が覚めたんだ」


言うなりエドアルドはセシルを引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。


「・・・陛下!」


セシルは身をよじって抵抗するがエドアルドは腕の力を緩めない。


「何もしないとは言ったがな、これくらいは許せよ。それから、二人きりの時はエドアルドと呼んでく  れ」


「そうは言われましても・・・」


「呼べよ。いいだろ?」


「陛っ!!」


エドアルドは口付けでセシルの口を塞いでしまった。


エドアルドからすれば控え目な口付け。けれども経験のないセシルにとってはそれは刺激的すぎる物であった。


「エドアルドだ。呼んでみろ」


ぽーっとなった頭のままセシルがエドアルドを見つめる。その瞳を見据え、そっとエドアルドが促す。その瞳に宿る熱にセシルは自分の体が熱くなっていくのを感じた。


「・・・エドアルド」


熱に浮かされるまま、セシルがその名を呼ぶ。エドアルドは嬉しそうに微笑むと


「良い子だ」


そう言って、もう一度セシルの唇にそっと口付けを落とした。








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