一つ目 俺、貧乏です
俺の名前は桐谷○二。以前、世間を騒がせた敏腕プロデューサーだ!
……なんてことは冗談で、いろいろとパクリだ、とか、著作権違法だ、とか言われたら勘弁なので、本名言います。
俺の名前は坂本秀。
高校二年生で、特技はなし。部活もなし。どこにでもいるごく普通の高校生だ。
ん? そんなんじゃ、おもしろくないって?
それならおもしろいこと言おうか。
なんと……………………俺の家、めっちゃ貧乏なんだ……。
「……………………」
そこのお前!
今、俺の親父が安月給だとか、お袋が苦労している的な想像をしていないだろうな!
そんな生半可なものではない!
こんなこと強気で言っても意味ないのだが、借金取りは来るわ、家めちゃくちゃにされるわ、物壊されるわで、想像できないほど苦しい状況なのだ!
親父は確かに安月給で、いつクビになってもいいくらいの窓際万年平社員である。
お袋は……いない。つーか、捨てられた。親父の安月給に愛想尽かし、このかわいい俺を置いて出て行ったのだ……。
おっと、ちょっと辛気臭くなったな。話題を戻すと……そう、ただの貧乏ではない。
もう落ちるに落ち、あとは這い上がるしかないほどのボンビーなのだ。
だいたい、俺が高校に行けたこと自体奇跡に近い! 奨学金は貰えているが、それで通うにも危ない状況だ!
ま、それだから、部活もできないし、これといった特技もない。
しかし! 唯一趣味はあるのだ!
それは、プロデュースだ!
……まぁ、プロデュースと言われても、しっくりこないだろう。
うん。それはわかる。
そこで、プロデュースとは何なのか、俺がわかりやすく、丁寧に教えようではないか。
そもそもプロデュースとは、辞書で引けば、映画、演劇、テレビ番組などを制作することで、その人のことを、俗にプロデューサーと言うのだ。
この仕事、けっこう大変なんだぜ。
その人の力量次第で、人気が出るか、すぐに打ち切りで終わってしまうかがかかっているんだ。
生半可な気持ちではできない、言わば天国と地獄の境目にいる番人なのだ!
それほど重要で、出演者の未来を抱えているのだよ。
そこで疑問に思うだろう。なんでそんなことが趣味なのかって。
もちろん、俺はそのプロデューサーになりきり、頭の中でいろんな想像をして楽しんでいるからだ!
「……………………」
ああ、そこの君。今妄想とか思わなかったか?
いいか! 俺はそんなことを考えているんじゃない!
もっと純粋に、いろんなことをシミュレートして、視聴者みんながおもしろがるような作品を作っているのだ! いや、作りたいと思っている!
そりゃ、俺だって、あんなことやこんなことは考えるぞ。
だって俺花の十七歳だし、健全な高校生だし。
誰でもあっちのことは考えるだろ! 少しくらい許してくれ!
そもそも、俺がなぜこんな妄想……いや、想像をしているかというと!
……………………テレビがないから。
だから、さっき言ったろうが!
俺はそんじょそこら辺にいる、普通の人よりちょっとお金がないくらいじゃなく、本当にお金が無い貧乏人なんだ!
今同情した奴! そんな暇があるなら金くれ! もうこんな生活耐えられないんだ!
ああ~、お金持ちが羨ましい。
テレビが無い分、クラスメイトの話題には着いていけず、その悔しさで毎日コンビニの雑誌を読み漁り、街中を歩いていろんな人の話を聞き、情報収集に費やす。新聞すら取っていないので、ニュースすら知らない。
今の総理大臣? 知るか! 毎回毎回変わって、今誰か検討も付かん!
それに電気もないから、宿題は下校時刻ギリギリまで学校でするのだ!
くわ~、俺って本当に可哀想。良かったことは、お風呂代くらいはあることだけだ!
さて、俺の今の状況を理解してくれたかな?
まぁ、ただの貧乏な高校生で、妄想好きで、将来の夢はプロデューサー!
ということくらいわかってもらえば俺は十分嬉しい。
あと、お金くれたらもっと嬉しい。
そんなわけで、今日の俺の一日も、スタート!