とある少女の備忘録
初投稿です。拙い文章ではありますが、読んでいただけたら幸いです。
備忘録:記憶すべき事柄を簡単にメモするための個人的な雑記帳(Wikipediaから引用)
きっかけは、あれだったのかもしれない。
6歳の頃、陳列棚に置かれたガムが目に入った。誰も私のことを見ていない__そう思ったときにはポケットにガムを突っ込んでいた。そのままトイレに駆け込みそれを食べた瞬間、完全犯罪は成立した。ゴミはサニタリーボックスにでも入れたんだと思う。とにかく、私は案外犯罪は簡単にできるものだと幼いながらに学んでしまったのだ。
12歳の頃、ふと自分の人差し指の腹にカッターナイフをあててみた。力を込めて刃を押し付けても指は切れなかった。次に力を込めずに刃を指にあてたまま真横に引いてみた。指には一本の赤い線が滲んでいた。
14歳の頃、ぽろっと同じ部活の子の陰口を言ってしまった。翌日、それは7倍になって私に返ってきた。廊下で7人で集まって私の陰口を言い合っているのを壁を隔てて聞いていた。しばらくして先生の介入があり、形式的な和解に至った。何人かはもう部活に来なかった。
高校に入学して“その子”に出会った。同じクラスの、地味で、大人しくて、能動的に人と関われない子。私は友達数人にそっと耳打ちした。
「〇〇さんって___らしいよ」
日に日に孤立していくその子。肥大化していくうわさ話。
数ヶ月後、その子の手首に新しめの傷があるのを見つけた。私はその傷を死にたいが為付けたものだと思うことにした。その子の机に手紙を入れておいた。
「〇月○日の放課後、1-Aの教室で待ってます」
その子は教室に現れた私を見て驚いた。手紙の主が私だとは思わなかったのだろう。
私はその子を壁へ突き飛ばし、ポケットから取り出したカッターナイフをその子の首にあて、思い切り手前へ引いた。
一瞬だった。
その子が瞳に浮かべた驚愕の色も次の瞬間には消えていた。
私は指紋を拭き取ったカッターナイフをその子に握らせ、血のついた服を着替えて帰路についた。案外、大したことなかった。
次の日に届いた休校のメール。その次の日に知らされたその子の死。少しくらい他殺を疑われるものだと思ったけれど、その子の日記に「死にたい」とか書かれていたとかで早々に自殺だと判断されたらしい。その子が左利きなのも幸いした。私は右利きだったから、危なかった。
なぜ殺人を犯したのかと聞かれれば、ただの好奇心だと答えるだろう。私は人を殺したことがなかったから。どんなものなのか知りたかっただけ。
きっかけなんて、なかった。
この初めての殺人という貴重な経験を忘れないように記録しておこうと思う。
私はノートの表紙にタイトルを書いた。
「赤音の備忘録」
ここまで読んでいただきありがとうございます。




