100円RPG
第0章
ここは……どこだ?
目を開けると、知らない場所にいた。
多数のシャンデリアと豪勢なつくりをした、まるで宮殿のような天井が目に入る。どこかの王族の城にでもさまよってしまったのだろうか。
如何せん記憶がちょうど抜けているためわからない。なぜここにいるのだろうか。その時、低く、渋い声が耳に入る。
「目が覚めたかの?」
声のした方へ顔を向けるとそこには、王冠をかぶり、赤いマントを羽織った、白いひげが長いおじいちゃんがいた。いかにも、どこかの国の王様のような。
「すまない、勝手にこちらの世界に呼び出してしまって。」
……こちらの世界、ということは。
「わしらが、そなたを異世界から呼び出したのだ。」
……つまり、異世界転移ということか。
「お主、名をなんと申すのじゃ。」
王様が聞く。
「……湊です。」
「ミナト、か。いい名前じゃの。そこでミナト、単刀直入に言うのじゃが、、、お主にわしらの国を救ってほしいのじゃ。」
王様が怪訝な顔で話す。
「今、わしらの国は魔族の侵攻に脅かされいるんじゃ。以前、わしらの国から勇者が出現したのじゃが……どうも、すぐ調子に乗るやつでな。勇者だと分かった瞬間に魔王城に突撃しだして、勇者の究極奥義出そうとしたらMPが足りなくてそのまま死んだのじゃ。」
……あまりにもバカすぎる。人生一周目かよ。
「だからわしらは初めて異世界から人を呼ぶことに挑戦してみたら、お主が来た、ということじゃ。」
「……なるほど、まあ、別に前世に執着も未練もないんでいいですけど」
正直、俺はわくわくしている。
前世ではガキの頃、片っ端から見漁っていた異世界系漫画が、まさかの実際に起こってしまうなんて。大学を卒業してブラック企業の駒として4年を経験した今、あの世界にも戻りたいとは思わない。
「おお、そうか。ありがとう、本当に、ありがとう。」
王様が深く頭を下げる。
「わしの名は、サウル。お主には旅の最初の準備金として、これを渡す」
そういって渡されたのは硬貨一枚。見たこともない人物の顔が描かれている。、、、まあ、さすがに異世界から呼び出した人に渡す一枚だから、相当価値があるんだろうな。たぶん日本円で10万円分くらいいくんじゃね?にやけを必死に隠す。
「それでは、頼むぞ。」
晴れた顔で王様が俺に言ってきた。俺も笑顔で
「任せてください。」
と言って城を出る。
城を出ると、様々な出店が並んでいた。その通りは人であふれかえっており、この町がいかに大きな町なのかが一目でわかるほどだった。
「すげえ」
思わず感嘆の声がこぼれる。
立ち並ぶレンガ造りの家、エルフや獣人、ドワーフなどいろんな種族の姿。
目に入るものすべてが、あの頃に夢見た景色で感動する。
異世界、最っ高。
その時、お腹から小さい音が鳴る。
小腹が空いたことに気づいた俺は、近くの串焼きを見た瞬間、飛びつく。
「おっちゃん!この肉串一本ちょうだい!」
威勢のいい中年くらいの男性が大きな声で言う
「おうよ!100ぺヌね!」
ぺヌ、という単位が、この世界の通貨なのだろう。俺はさっきサウルにもらった硬貨を出す。
「はいよ!ちょうどね!はい!」
そう言って俺の想像では10万円分くらいの硬貨がとられ、代わりに串を一本持ってくる。
「……は?」
「どうした?あんちゃん。頼んだの違ったか!?」
店主が慌てる。
「あ、いや、それであってるんすけど。」
「なんだよあんちゃん!ビビらせんなって!」
店主が豪快に笑う。
「……、この硬貨っていくらですか?」
嫌な予感がしながらも聞く。
「ん?100ぺヌのことか?」
「はい……それって、何が買えますか?」
店主が何を言ってるんだこいつは、という目で見てくる。
「あんちゃん、この国の人じゃないのか。じゃあ教えてやるからよく聞いとけよ、こいつ一枚で買えるのは、まあちょっとしたものだ。さっきの串もそうだし、小腹を満たす程度だな。」
時が止まった。
つまり、100ぺヌは、日本の100円とあんま変わらないのか。
……あいつ、俺に100円だけしか渡さなかったのか。
「そ、そうすか……」
とぼとぼと店から離れるように歩く。
「あんちゃん!気をつけろよ!」
この店主はいい人だ。しかしそんなこと考える余地もなく、現実が襲い掛かる。
「俺……全財産無くなった?まだ装備も何も買ってないのに?」
詰んだ。明らかに詰んだ。
「おいおい……俺が勤めてた給料未払いのブラック会社でも交通費くらいは出たぞ……。」
今手元にあるのは、食べ終わった後の串一本。
手元を眺める。
「…………」
俺は串を装備した。
絶望的状況から、湊の大冒険が、今、始まる・・・
ミナト Lv1
HP20
MP16
武器 肉を食べた後の串
防具 なし




