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3 京都占領と和睦交渉

大永7年(1527)11月16日 堺御所。


晴元くんの要請で柳本さん、三好元長殿、畠山義尭(よしたか)殿が京都に進軍した。このとき、彼らには私と、 ”管領” 晴元の連名で和睦とその後の政務に関する方針を書いた書状を持っていってもらった。


柳本さんからの報告では、彼らはまず義晴くんの陣所である東寺の東北を包囲したらしい。しかし、京都には高国と細川尹賢をはじめ、義晴くんが事前に召集していた朝倉、六角、大和衆を含めた10万人余の大軍が集結していたそうだ。


私は、そこまで軍勢の動員力に差があるのかと愕然とした。彼らが無事に帰って来れるよう、公方のポケットマネーから寺社に寄進までした。


やがて年が明けて大永8年正月、高国はあれほどの大軍を動員したのに、柳本さんたちを滅ぼさなかったようだ。結局膠着状態になって和睦交渉がスタートしたのだった。


「こちらが、堺勢として要求する内容でございます。将軍はどのような条件で?」


交渉は阿波国から晴元くんの代官として来ていた三好元長が担当した。相手は朝倉教景。どちらも要望を書いた紙を交わし、確認し合う。


「将軍の仰せはこの通りです。我々としては、あなた方の内容で交渉を進めて構わないと思われます」


「わかりました。我らが御前様は停戦のみをお望みですので、こちらとしても異存ございません。では約定を」


だが、元長は心の中で毒を吐いていた。(御前様や晴元様の書いた「理想論」じゃ、京の狸どもは動かせない。ここは俺の『特製プラン』で強引にまとめるしかないな……)


元長は私たちが用意した和睦案を密かに書き換え、独断で交渉を成立させてしまったのだ。


それから1週間以上経った大永8年1月28日、これに激怒した柳本さんは


「元長め、何考えてやがるッ!?俺ら、高国倒すってことで戦ってたのに、勝手に晴元殿を養子にするだと?こんな弱腰の和睦、認められるかッ!」


と言って陣を焼き払って堺に下がってしまった。


ー堺公方邸、私は晴元、その叔父細川持隆、奉公衆の斎藤時基と京都の情勢が危なくなった時の対応を会議していた。すると、急報が飛び込んできた。


「申し上げます!京にて交渉されていた柳本殿が、本陣を焼き払って退却されたとのこと!柳本殿は此度のこと、問いただしたいとのことで、お会いなさりますか?」


みんなで一斉に顔を見合わせた。しかし、説明を聞かない訳にはいかないということで、急遽対面になった。柳本は戦からすぐに戻ってきたためか、ひどくすす汚れた状態で入ってきた。彼はどっかと私の目の前に座り、むすっとした表情で頭を下げている。


戦場から帰ってきた男のあまりの気迫に私はたじろいでしまったが、すぐに思い直して


「頭をお上げください。此度のこと、いかがされたのです」


「申し訳ございません!御前様。和睦の儀、まったく当初の通りに行きませんでした!」


これに対し、晴元も命令した責任を痛感してか、


「いえ、三好を信用して任せたのは自分です。責任は自分にあります。。。」


と二人とも謝ってきた。私はオロオロしながら慰めの言葉を探していた。なんとか明るくなるように振る舞った。


「いやいや、今回の交渉では結局向こうの将軍だって承知してなかったらしいし、仕方ないよ!」


「そうですね....嘆いてばかりでも事態は進みませんからね!.....まあ、一旦上洛して将軍と合流するのは延期しますか」


晴元君は義晴との合流方法を考えているみたいだった。


「そうそう、ポジティブに行こうよ! 失敗は成功の母って言うし!」


私が精一杯のJKスマイルを見せると、晴元は少しだけ表情を緩め、扇子でトントンと机を叩いた。


「……御前様がそう仰るなら。ですが、京都の義晴側も、独断で進められた講和条件には相当お冠のようです。和睦の再セットには、もう少し『インパクト』が必要ですね。……維国殿、時基殿。悪いけど、もう一度条件を細かく練り直したい。徹夜、付き合ってくれる?」


「.....御意」


二人の側近が深く頭を下げ、作戦会議は深夜まで続くことになった。


そして、その後もこんなことになっていることも知らずに京都の将軍方との交渉をしていた元長だったが、将軍方の朝倉教景が兵を引き上げてしまう。これによって交渉は頓挫し、元長は四国に逃げ帰ったのだった。



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