僕のねーちゃんとお兄ちゃん
どうしよう、奏汰君ってどういう系統の服が好きなんだろう...。
一人で和室にある姿見の前でたくさんの服に囲まれていた。ガーリー?フォーマル?カジュアル?まさかのストリート系?
「まっじでわかんない...」
「ただいまー、あれ?まだねーちゃんしか帰ってないの?」
「京谷!ナイスタイミング!」
「あー、僕にとってはバッドタイミングかも」
途方に暮れていた時に丁度京谷が帰ってきた。さっすが私の弟、いい時に来てくれるじゃない。
「今デート服考えてるの!京谷も手伝って」
「今考えるって早すぎない?気候とか変わったらどうすんの?」
「今週末だからいいの!そんな急には変わらないでしょ?」
京谷はなんだか驚いた表情をして、すぐに何か企んだようなにやにや顔になった。
「そういえば土曜日かなり寒いじゃなかったっけ?」
「ふふっ、日曜日なのよそれが!残念だったわね~?」
かなり煽ったため不機嫌になってしまったかと一瞬焦ったが、先ほどよりももっと悪そうな顔をしている。姉のデートの予定きいてここまで悪役顔できる人いないでしょ。
「日曜日ってバス少なかったよね、調べておいてあげるよ。何時集合なの?」
「...10時だよ、ありがとう」
まさかの優しさに少し驚く。こんなに気が使える子だったとは
「なら9時50分着のバスがいいね」
「え、遅くない?もう一本前のはないの?」
「こういう時は、エスコートされる側が後からつく方がいいの!」
「た、確かに!」
流石モテ男、デートの掟のようなものを理解してる!
デートに行く前にたくさん聞いておこうかな
「母さんたち遅いから僕がご飯作っちゃうね」
「え、いいよ、私作るから」
「へーきへーき、僕丁度作りたいのあったんだ」
「そっか、じゃあお願いしようかな。ありがとう京谷」
―こんなにもスムーズにデートの予定を聞き出せるとは...、ねーちゃん騙されやすすぎない?
リビングで当日のコーデを悩んでいるねーちゃんをキッチンから眺める。
「尚樹くんと一緒にいるときの笑顔の方が、ずっと似合ってるのに」
僕の独り言は野菜を炒める音にかき消された。
この音を聞くとあの日を思い出す。
「きょうやって女子みたいな顔してるよな」
「ははは、きもちわりー!」
大雨の中、公園で地面にころがされて、四人ぐみから急にそんなことをいわれた。
そうか、今までされてきた小さないやがらせは、そんなことがきっかけだったんだ。
「なんかいえよ、つまんねっ、」
「うっ、やめてよ」
急におなかをけられて、やめてといったのに、にたにたとわらっているだけで、あしでおさえつけられる
「ちょっと!何してんのよ!」
「げっ!おにが来た!」
おねぇちゃんがかさも持たずに走ってきて、四人をにらむ。
「おい、にげるぞ!」
「ちょっとまてよ、―おまえ女子に守られてはずかしくないの?女子みたいな顔で、女子より弱いとか、だっせー」
さっきぼくをけってきたやつが小声でいってきた。
だってしょうがないじゃん、ぼくにはおねぇちゃんしかいないんだもん
「まちなさいよ!きょうやにあやまって!」
「かなちゃん、ストップだよ。まずはきょうやくんのけがをてあてしなきゃ」
「きょうやくん、だいじょうぶ?いたいねぇ、よくたえたねぇ」
なおきくんがおねぇちゃんを止めにいっている間に、急にぼくの上だけ雨がやんだ。はるかちゃんがぼくをたすけにきてくれたんだ。
「だいじょうぶ!ありがとはるかちゃん」
「いいのよぉ、きょうやくんはえらいねぇ。やりかえさなかったんだから」
「ううん、やりかえせなかったんだ。ぼくよわいから」
「いいのよぉ、本当に弱いのはあの子たちよ、まとまってないとあんなことできないんだから」
そういって、はるかちゃんはさっきの子たちがにげた方をにらんでいた。
はるかちゃんもおこることあるんだ、ぼくのためにおこってくれてるのかな?
そうおもうとなんだかうれしい。なんでだろ、おこらせちゃうのなんていいことないのに。
「きょうやくん、僕がおんぶしていくから帰ろ?背中に乗れる?」
なおきくんがきてくれて、ぼくの前にしゃがんだ。
「うん、ありがと」
なおきくんがぼくをはこんでくれて、はるかちゃんとおねぇちゃんは二人でぼくがもっていたランドセルを持ってお家に向かっていた。
「ねぇ、なおきくん」
「ん?どうしたの?」
ぼくは大雨のせいでぬれているから、ぼくをおんぶしたなおきくんもびしょぬれになってしまっていた。
「ぼくね、おねぇちゃんじゃなくておにぃちゃんがほしかった。」
「そっか、なんでか教えてくれる?」
「女子に守られるのは、はずかしいんだって。でもぼくにはおねぇちゃんしかいないから、ほかに守ってくれるひとなんていないから」
こんなにもわがままみたいな話を、なおきくんはやさしくきいてくれた。それでついぼくもすなおに話してしまった。
「じゃあさ、僕がきょうやくんのおにいちゃんになるよ。」
「え?」
「そうしたら、きょうやくんにはお姉ちゃんとお兄ちゃんがいる。それに、すっごくやさしくて強いお姉ちゃんがいるんだから。とっかえっこなんてもったいないでしょ?」
そんなことできない、ときっぱりいわずにいっしょに考えてくれるのがすごくうれしくて、もっとつよくなおきくんにしがみついた。
「だからね、きょうやくん。―かなちゃんにはいわないであげてほしいな。」
決しておこったような口調ではなく、ただぼくたちのことを思っていってくれている。そんな風にきこえるなおきくんの声がぼくは大好きだった。
「きょうやくん、お姉ちゃんのこと大好きでしょ?」
「うん!だいすき!」
「はは、僕もだいすきだよ。だから、僕がきょうやくんのおにいちゃんになったのはひみつだよ?約束できる?」
「うん!」
あの日から僕は尚樹くんのことがもっと大好きになった。
もっとお兄ちゃんらしく話して!とか、僕のこと呼び捨てで呼んで!とかいろいろお願いしたな。
頑張って応えようとして、ぎこちなくともやってくれるのが凄く嬉しかった。
だからこそ、僕のねーちゃんとお兄ちゃんには幸せになってほしいと、心から願っている。




