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眼鏡かけてよ

「ねぇ尚樹、眼鏡かけてみない?」

「...なんで?」

「なんでも」


京谷が持っていた度数の入っていないブルーライトカットの眼鏡を片手に放課後に生徒会室で仕事をしている尚樹に突撃した。


「加奈今日は部活ないの?」

「大会終わったからしばらくオフだよ。先週までかなり詰め込んでたし」

「......」

「嫌そうな顔すんのやめてくれる?追い払おうったってそうはいかないんだから」

「まさかー、そんなことしないよー」

「棒読みにもほどがあるでしょ」


なんとしてでも尚樹に眼鏡をかけさせないと...、それでこの前の妙な感覚の答えがわかるのだから。あのとき不覚にも尚樹に対してときめいてしまったのは単なる驚きなのか、それとも推しに対するときめきと同じ類のものなのか。私の好きなタイプであるオフで眼鏡かけてるという姿を見て確かめるんだ。



「おねがい京谷、この眼鏡貸して!」

「それはいいんだけどさー、そこにねーちゃんが尚樹くんのこと好きっていう可能性は含まれてないの?」

「100ない」

何を渋っているのかと思ったら

「うそぉ~、でも尚樹くんにときめいちゃったんでしょ?」

「うん、それは否定しない。でもそれとこれとは違うの!推しにもときめくし、なんなら吊り橋効果だってありえるでしょ?」

「尚樹くんのアプローチを恐怖って言ったよこの人、とんでもねー姉だ」

「とにかく!貸してくれる?」

「いいけど、それ生徒会室でやってよ」

「えぇ?なんでよ、ほかの人もいるんでしょ?迷惑じゃない」

「僕と尚樹君以外はほとんど来ないからいいじゃん、それならお返しもいらないよ」

「ほんと?」

「ほんとっ」


眼鏡借りた時に何か企んでいる気がしたから、京谷がいないうちに試したいのに...!


「で、これでいいの?」

「うっわ...」

「いやいやかけさせといてそれはひどくない!?」


意外とあっさりかけてくれたのはいいが、尚樹が眼鏡をかけている姿に、なんだか腹が立つ


「しつれーしゃーす、あっ、もうかけてる!いいね尚樹くん似合ってる~」

「げっ、もう来たの?」

「ちょっとねーちゃん、僕が来る前にするなんてひどいじゃーん」

「京谷、ノックくらいしろっていつも言ってるだろ」

「今日は失礼しますって言ったんだからセーフでしょ!」

「言えてなかったでしょあれは、あざーすみたいな適当さだったよ」


二人が馬鹿らしい会話をしている内に、眼鏡姿の尚樹を観察する。似合っているのだけれど、そう言ったら調子に乗って普段からつけそう。


「それより尚樹くん本当に似合ってるね、普段からかけたら?」

「俺視力2.0あるんだぞ?いらないって」

「いやいや絶対かけた方がいい、イケメン生徒会長ってうわさが広がっちゃうよ~」

「...ド陰キャ生徒会長の間違いでしょ...」

「ちょっとひどくな!?俺そんな風に見えちゃってる!?」


自分でもどうしてこんなこと言ったかわからない、黒髪ストレートの尚樹にに眼鏡が似合っていないはずがない。


「えー、僕には似合ってるようにしか見えないけどな」

「京谷俺のことド陰キャだと思ってるわけじゃないよね?俺丁度いいくらいの陰キャだよね?」

「陰キャは認めるんだ...」

「とにかく!似合ってないから尚樹は学校とかで眼鏡かけちゃだめだからね」

「ふーん、じゃあねーちゃんの前でならいいの?」


京谷がにやにやしながらいじってくる。だから京谷が来る前に終わらせたかったんだ。


「なにそれ、俺もう加奈にまでド陰キャ認定されてるってこと?手遅れ過ぎない?」


鈍感にもほどがある尚樹にへのいたずらも込めて素直にうん、とうなずいた。


「じゃあ、私帰るね、生徒会がんばって~」


やっぱり尚樹は尚樹だもん。推しとかそういうのじゃないよね!ほかの人は知らないとこ知ってるっていう優越感?ってやつでしょ。この前のもきっと知らない面を知って驚いただけだ。



―「はぁ~、俺そんなに陰キャっぽいことしてるっけ?別に普通じゃない?」

「うーん、女子と全然話さないからじゃない?」

「だってなんか怖いじゃん、生徒会長って立場使って話しかけてるとか思われたら俺おしまいだよ?」

「あはは、どんまい~」


女子と最低限しか話さないのに手伝いはしてくれるクール系紳士って呼ばれているのはどこの誰だろうね~、と心の中で思いながら尚樹くんの髪をぐしゃぐしゃにする。これが両片思いってやつかぁ初めて現実で見たかも。


「京谷も生徒会長なったらこうなるぞ、他人事じゃないからな?」

「僕は女子友達もいるから平気だよ、残念だったね、尚樹くん」

「そうだった、京谷女子人気高いんだった...」


別に人気が高いわけではないのだけれど...


「加奈と似て可愛い顔してるもんな、そりゃ話しかけやすいよな」

「そうだね、ねーちゃん可愛いもんね」

「ちがっ、今のはそういうことじゃっ、」

「え、ねーちゃん可愛くないって言うの?尚樹くんひどーい」

「...可愛くはあると思うよ、...これで満足か?」


ほんの少し顔を赤くしながら言う尚樹くんはいつもの冷静で優しいお兄ちゃんっぽい姿と違ってなんだか微笑ましかった。


「うん、さすが尚樹くんだねっ、やっさしー」

「いじってるだろそれ...」


僕のねーちゃんと本物のお兄ちゃんのように接してくれる尚樹くんの幸せを願いながら、ねーちゃんの願い通りにかっこいい尚樹くんが周りに見られないように、尚樹くんの髪をもっともっと、ぐっしゃぐしゃにした。

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