表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

コメディがすぎる

初描きです。

温かい目で見守ってくださったら嬉しいです。

7話までは一斉に公開で、その後は週1以上目標で投稿していきます。

「加奈ちゃんおはよー」

「おはよ」


もう少しで高校2年生を迎えるというこの時期に、私はとある悩みを抱えていた。


「かなちゃーん、聞いてよぉ、今日間違えて梅干しの種だけ食べて実捨てちゃったのぉ」

「えー大丈夫?それ」


そうはならないだろうと誰もが思うが、あえて言わない。


「えーそれお腹空かん?うちお菓子持っとるよ!」

「いいの?ありがとうー!」


……誰もがは言いすぎたかもしれない。ただ、この時点でやはり私の悩みは深刻なものだと悟った。それは、

―――コメディすぎるんだこの環境!!!

現状に不満があるとかそういうものでは決してない。ただし、あまりにキャラが濃すぎる友達、そしてこうして心の中でツッコミを入れてしまっている私。

コメディだぁぁっ、あまりにもコメディだっっ!


女子高生である私の憧れはやはり、少女漫画、恋愛漫画、つまり甘酸っぱいラブストーリーの世界!私のことだけを愛してくれる王子様みたいな人と出会ってハッピーエンド!そのためにも早くこの現状から脱さなければ、高2のビッグイベントの数々を糖分濃度0で迎えることになってしまう…。

そこで昨夜『花よりみたらし団子』を初めとする数々の恋愛漫画を読み返し、私はとある秘策を思いついた。


「尚樹っ!今日一緒帰ってうち寄ってって」

「え?いいけど、加奈の家来いって珍しいな。おばさんがなんか用あるとか?」

「ううん、話したいことがあるの!じゃあ放課後すぐ帰るから生徒会の仕事とか終わらせといてよ?」

「うっ、わかったよ」


よしっ、これで準備は整った!これでコメディを脱却して恋愛漫画のヒロインになるんだっ!


「加奈〜?帰るぞー」

「うん、はやく行こ」



放課後になって尚樹が話しかけてきた。忙しいはずなのに本当に生徒会の仕事を終わらせてくれたらしい。本当にこういうところは尊敬できる。


「てか、ほとんど毎日一緒に帰ってんのにわざわざどうしたんだよ。」

「しばらく生徒会忙しそうじゃん?だから先に言っとかないと、私が部活ない日は一緒に帰れないじゃん」

「生徒会終わるまで待っててくれよそこは、今日もノルマギリギリだったんだぞ?」


そういいながらも約束はきっちり守るのだから、優しいのかなんなのか...

そうこうしている内に私の家に着いた。


「じゃあ、手洗ったら私の部屋来てね~」

「え?リビングじゃないの?」

「リビングだと色々めんどくさいから、早くしてね?」

「...わかったよ」


なんだか渋い顔をしているが了承したので関係ない。よし!あとは準備だ!



「入るぞ~...ってなにこれ」

「加奈特製!恋愛作戦会議室ーー!」

「嫌な予感しかしないんだけど」


まあまあそんなこと言わず~、と軽くあしらいながら尚樹を部屋に招き入れる。


「尚樹って、恋愛漫画とか見たことある?」

「一部に恋愛要素あるやつなら」

「はー、センスないわ~...、じゃあこれ読んで」


私はとある恋愛漫画を押しつけた。

尚樹は嫌そうな表情をしながらも読み始めた。


「...読んだけど、これが何?」

「実はね、尚樹には――私のこと、好きなふりをしてほしいの」

「……は?」

「それでアプローチして。そうしたら、この学園にいるであろう私を好きな人が焦って出てくるでしょ?」

「でも、この漫画最初に出てきた人と結ばれてるけど、これだったら俺立場的にライバルにならないとだめなんじゃない?」


さすが尚樹、いいとこ突いてくれる


「そこ!私はライバル推しなの!」

「...?なるほど?」

「だから、尚樹によって引き寄せられたライバル君と恋すればいいって話なの!」

「うん、全く分からん帰っていい?」


本当に荷物をもって帰ろうとする尚樹を慌てて引き戻す。


「もう呆れたとしか言えないんだが...」


どこに呆れるところがあるというのだ、かんっぺきな計画なのに


「リスクが高すぎるだろ、失敗でもしたらどうなるかわかってるのか?加奈が傷つくかもしれないんだぞ?」

「大丈夫だよ!私失敗とかしないんだから」


そう返事をしたら尚樹が少し言いにくそうに「あのなぁ...」と前置きを置いて


「まず、アプローチの仕方、お互いに恋愛経験ないのにどうするんだよ。次に、アプローチに対する周りの反応、億が一、周りが本物のアプローチだと信じたとして、もし付き合ってると勘違いされたら?」


わ...


「そうしたら加奈を好きな人も諦めてしまう。それと、もしそうなった後で加奈に好きな人ができた時も、加奈からアプローチしてみろ? 嫌な噂しか流れないし、俺はそんな思い加奈にしてほしくない。」


わわ...


「そして第一、そもそも加奈のことが好きな人がいなかった場合ただの茶番になる。わかるか?」

「あーーー!なにもきこえないーー!」

「現実見ろって...」


なんって恐ろしいことを言うんだ。2回くらい心が折れそうになった


「これだから根っからの理系は嫌なんだよ!論文聞いてる気分だったわ!」

「俺も幼稚園生の夢を聞いている気分だった」


こんなにも理詰めされるとは思っていなかった。恐ろしき理系の成績者トップ...


「...手伝ってくれる?」

「いーや、手伝わない。自分で出会い探しとけ~」

「ちょっと!」


そう言って尚樹は帰ってしまった。...確かに尚樹の言う通りなのかもしれない。


「私の青春終わったああ」



―加奈の家を出て、自分の家に帰る。さすがに言い過ぎたかとスマホで謝ろうとしたが、やっぱりやめた。「手伝ってくれるってこと!?」と調子に乗る姿が容易に目に浮かぶ。


「誰がただの釣り餌なんかになるかよ」


なんだか無性に腹が立って、それをごまかすように参考書を開いたが、内容は一切頭に入ってこなかった。



昼休みになって昨日で使い切ってしまった生徒会の仕事のストックを取り戻すためにご飯もそこそこにひたすらパソコンと向き合っていた。


「尚樹くんなんで昨日生徒会来なかったの?」


加奈の弟である京谷も生徒会室に来ていた。京谷も仕事をしているらしい。終わらなさそうだったら京谷の分も手伝わなければと思い、さらに集中して終わらせようとしながら、京谷の質問に答えた。


「...昼休みにノルマは済んだからいいかなって」

「えー絶対嘘じゃん、やっぱ、ねーちゃんが話してたのって尚樹くんなの?」

「...なんてはなしてた?」


やはり怒っていただろうか。文理選択が違うため教室も遠くてまだ何も話せていない。


「はは、まじで尚樹くんだったんだ。怒ってはなかったよ?ただちょっと面倒くさい状態になってるだけで」

「ん?どういうこと?」

「なんか、『あっさり断られたし、私の青春終わったぁ、このまま甘さも酸っぱさもなく塩分濃度の高い高校生活で終わるんだぁ』って言って珍しくちょいネガティブモード」

「...そっか」


結局悲しませてしまったか。あの変な計画をして傷つくよりはいいと思ったが...


「尚樹くん何とかしてよ~、ネガティブなねーちゃんとかなんか怖いんだって」


自分も姉に振り回されてきたことから京谷には本当に同情する。仕方ない、京谷の頼みだ


「京谷の分の仕事終わりそう?」

「うん!あと10分あれば余裕だよ」


昼休みはあと20分程あるし、それなら京谷は放課後に居残りせず帰ることができそうだ。じゃあ今日は俺の分の仕事だけでいい。


「...ならいいか、じゃあ行ってくる」

「さっすが尚樹くん!ありがとう~、いってらっしゃい!」



―「かなっち元気なくね?大丈夫そ?」

「そうだよぉ、もしかして加奈ちゃんおなか減っちゃったの?」

「ううん、やっぱ塩分だけって嫌だよね...」

「なに?かなっち壊れた?」

「あ~卵焼きのこと?大丈夫だよ!りさなんて砂糖入れ忘れるどころか炭にしちゃったことあるよ?」

「あははー、すごーい」

「やばい、かなっちがツッコミしてない。これは深刻だっ」


もうおしまいだ、何もしていないのにどんどんコメディに染まっていく。甘味も酸味もない、塩分の塊...


「――加奈」

「へ、尚樹?」


いつの間にか私の前の席に尚樹が座っていた。なんでここに?生徒会は?


「今日一緒に帰ろう?」


私を気遣うような態度で聞いたこともないような優しい声で話しかけてきた。これは本当に尚樹なのか?実はドッペルゲンガーとか?


「加奈?聞こえてる?」

「あ、うん!えっと、私今日部活で結構遅いから...って知ってるでしょ?」

「そりゃ知ってるけど、部活終わるの待ってるから、...だめ?」


尚樹ぎこちなく目をそらし、最後には迷子の子犬のような瞳で私の顔を覗いてきた。

見たことのないような甘い表情に不覚にもドキッとしてしまう、いやいやこれは尚樹であって...


「それなら、いいよ」

「よっしゃ、じゃあ放課後楽しみにしてる、またな」


そう言って教室を去っていった。...いくつかの机にぶつかりながら


「...ちょっとかなっち!いつの間に尚樹君あんな感じになってたの!?」

「そうだよぉ、前まで『うん』とか『わかった』とかしか言ってなかったのに!」

「それはりさぴが聞いてなさすぎ感あるけど、前と違うことは確かだわ」

「いや、私もわかんない」


―ピコッ


「わぁ、かなちゃん通知切らなきゃ!授業中なったら大変だよ?」

「ほんとだ、ありが...と...」


―尚樹からメッセージが届いています


『これで満足か?じゃあ無事作戦遂行ってことで』


...昨日断ったくせになんなの、尚樹はただライバル君を引き寄せるだけでいいのに、それだけなのに、


『作戦大失敗だわ、このあほ樹』


妙な感覚に陥らされた反撃としてそれだけ送る、何通か追加でメッセージが届いているが未読スルーで通知を切る。こちらがやられてばかりだったのが少しすっきりした。


「ありゃ、かなっちご機嫌だね?復活した?」

「うん!それはもうすごく」

「やったぁ!流石かなちゃん!これで放課後遊びに行けるね!」

「ちょっと、りさぴ聞いてたでしょ?かなっちは尚樹君と一緒に帰るんだから」


美玖がにやにやしながら「ねー?」と聞いてくる、ほんとにいい性格してる


「あんま大きい声で言わないでよ、いつものことだって!」


クラスの子たちにも聞こえるような声でいうものだから少し焦ってしまう


「いーや、あれはいつも通りじゃないね、あーあ、かなっちが尚樹君に取られちゃうぅ」

「みくちゃん大丈夫だよ、尚樹君かなり奥手な感じするからまだセーフ」


クラスの子たちから視線を感じて気恥ずかしくなる。...あれ、でもこれ作戦としてはいいのかも?みんなに付き合ってはないけど...って思われてるってことじゃん!

私のクラスは文系だから男子は少なめだけど、それでも優しくてかっこいい子が多いって言われてるくらいだし、ちょっとくらい期待していいよね!

そう思って頬が緩む私であった。



―メッセージを送るのにあんなに緊張したのはいつぶりだろうか、それに対しての返信は作戦大失敗、それに加えて俺への罵倒。さすがにびっくりしてどういう意味かと聞いてみたものの既読すらつかない。大失敗ってどういうことなんだ、アプローチ下手すぎたか?いやでも俺にしては頑張っただろ。...加奈にきもいとか思われてないよな?いや、きっと大丈夫だろ、うん。

そう自分に言い聞かせて、胸に残る違和感を忘れようと必死に生徒会の仕事に取り組んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ