六話 ささやかな日常が、少しずつ変わりはじめて
――笑顔で王子と食事し、寮まで送って貰う。
談話室には、ビビアナがベアトリスやアンナと談笑していた。
私に気づき、ビビアナが笑う。
その笑顔にほっとして、私も笑顔を返した。
【レイナ】
(いや、何ほっとしてるのよ。ビビアナも、なんでいつもどおりなの?)
【ビビアナ】
「今帰りと言うことは、食事でもしてきた?」
【レイナ】
「あ、はい。ビビアナさまもお誘いしようとしたのに、トリニダード王子ったら、さっさとお店に入ってしまわれて……もう」
【ビビアナ】
「目に浮かぶようね」
ビビアナがクスクスと笑う。
【レイナ】
(妬きなさいよ)
【ビビアナ】
「でも、レイナをトリニダード王子が独り占めするのはずるいわね。次の休みには、わたくしと出かけて、そのあと二人で食事しましょうか?」
【レイナ】
「ぜひ!!」
【レイナ】
(ようやくいじめる気になった!?)
レイナは心の中で思う。
二人きりになったとたん、ビビアナは厳しい顔をするのだ。
そして、立場をわきまえなさいとか言われて、いじめられるようになるに違いない。
【ビビアナ】
「ふふ。トリニダード王子だと躊躇するのに、わたくしとなら、二つ返事でいいって言ってくれるのね」
【レイナ】
「当然ですわ」
いじめイベントを逃すわけにはいかない。
いじめられたら、日記に証拠を残しておこう。
……強く決意するレイナだったが、ビビアナには植物園に連れて行ってもらい、楽しく食事をして帰ってきただけだった。
【レイナ】
(……なんでよ、おかしいじゃない……)
――レイナが王子と二人きりで話すようになり、一年が過ぎた。
もうレイナ達も二年生だ。
ビビアナとは相変わらず仲がいい。
ビビアナといるのは楽しくて大好きだったが、このままでは困る。
私は寮のベッドに倒れ込み、考える。
【レイナ】
「私が許されてるのは物語の主人公だからかしら?」
だから、何をしても許される?
それはありがたい世界だけど、王子ルートに入れないのはいただけない。
【レイナ】
「こうなったら、無理矢理にでもいじめをつくっちゃおうかな」
言ってから、それはとてもいいアイディアな気がした。
ビビアナがどういじめるのかは知っている。
ゲームでプレイしたから。
あのいじめを、私の手で再現すればいいんだ。
ビビアナが、私をいじめているように見えればいい。
なぜ今まで思いつかなかったのか。
【レイナ】
「そうと決まれば、早速準備しなくちゃ」
私はほくそ笑み、部屋を後にした。




