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三話 気になる人ができたかもしれない

ビビアナ視点です

寝る前にレイナたちと談笑して、部屋に戻る途中、深刻な顔をしたクラスメイトに声をかけられた。


【クラスメイトA】

「あの、ビビアナさま、少しよろしいかしら?」


【クラスメイトB】

「お話がありますの」


レイナをよく思っていない生徒達だ。

わたくしがいるから、表だってなにかをすることはないけれど、苦々しく思っているのは空気で伝わる。


【ビビアナ】

「どうかしたの?」


【クラスメイトA】

「あの、いいのですか?」


【ビビアナ】

「……? なんのこと?」


話が見えてこず、首をかしげる。

二人は必死な形相で言いつのった。


【クラスメイトB】

「レイナと王子のことです!」


【クラスメイトA】

「レイナは王子に近づきすぎだと思います。ビビアナさまがいるのに!」


そんなことなの、とわたくしはあっけにとられる。


【ビビアナ】

「どちらかというと、トリニダード王子がレイナに近付いているのだと思うのだけれど?」


【クラスメイトA】

「そ、それでもレイナの方が遠慮すべきだと思います」


【クラスメイトB】

「婚約者がいる男性に対する態度だとは思えませんわ」


憤慨する二人は、間違いなくわたくしのことを思ってくれている。

決してレイナを陥れたくて、わたくしを利用しようとしているのではない。


それでも――二人の意見は的外れね。


【ビビアナ】

「レイナはきちんと、わたくしのことも考えてくれているわ。王子と二人だけで話が盛り上がらないように、いつもわたくしにも、話を振ってくれるのはレイナよ」


【クラスメイトA】

「でも! 目に余ります!」


【クラスメイトB】

「ビビアナさまは、レイナに甘すぎますわ!」


【ビビアナ】

「……レイナに甘いといわれると、弱いわね」


その自覚はある。

それでも、やはり二人の意見を聞き入れることはできない。


【ビビアナ】

「あなたたち、少し冷静になって考えてみて? 王子から話しかけられて、無碍に扱えると思う?」


【クラスメイトA】

「それは……」


【クラスメイトB】

「そうですけれど……」


【ビビアナ】

「トリニダード王子に話しかけられるたび、レイナは少し困ったように笑うのよ。わたくしから言わせれば、困っているレイナに構わず、グイグイ話しかけるトリニダード王子に問題があるのよ」


【クラスメイトA】

「…………でも」


まだ納得いかないと言った顔をしている二人に、わたくしは安心させるように笑いかけた。


【ビビアナ】

「二人とも心配してくれてありがとう。でも、なんともないから気にしなくてもいいのよ」


この笑顔で何かを言えば、否と言える人間はいない。

レイナに友達になりたいと言ったときもそうだった。


【クラスメイトB】

「わかりました、ビビアナ様。失礼いたしました」


案の定、二人は残念そうにしながらも頷いて立ち去っていく。

その背中を見送ってから、わたくしは自室に戻った。


【ビビアナ】

「まったく、王子にも困ったものね」


常に見られている者の取る行動ではない。

レイナが助けを求めるように、いつもわたくしを見るのは忍びないのよ。


――そもそも、あの二人もレイナも勘違いしている。


【ビビアナ】

(私と、トリニダード王子は皆が思っているような関係じゃないのにね。誰にも言えないことだけれど)


わたくしも、トリニダード王子も、恋愛感情なんて持っていない。

随分と幼い頃にきまった、婚約なのよ。

愛だの恋だの、生まれるはずがないじゃない。


わたくしは、家のためにトリニダード王子と結婚する。

そして国母として国民を見守る義務がある。


トリニダード王子もそれは同じ。

いずれ国王として、国民を導いていく義務がある。

二人に共通しているのは目的意識。互いに一つの目標を達成するために、協力している友人にすぎない。


【ビビアナ】

(トリニダード王子は盟友と言っていたわね。わたくしにとっても戦友みたいなものだけれど)


だから、レイナが申し訳なさそうにする必要もなければ、あの二人が怒ることでもない。


【ビビアナ】

(そもそも、わたくしにとってレイナは無二の親友だもの)


庶民の子が特待生として、学園に通うことは知っていた。

どんな人物か気になってもいた。

この学園に通える名誉があるのだから、出自に恥じない人であればいいと思っていた。


背を丸めて歩くようなら、厳しく指導して差し上げなくてはとも思っていたけれど、杞憂だった。


校門での最初のベアトリスとアンナのやりとりを見ていて、好感を持ったのを今でも覚えている。


あの堂々とした振る舞い。

気品ある笑み。

優雅なカーテシー。


庶民の生活には、必要のないもの。

それを学び、身につけるのには並大抵の努力では足りないだろう。

そして、クラスで目が合ったときの対応は、新鮮だった。


だれもがわたくしに会えば、必ず声をかける。

それはわたくしではなく、わたくしの家、もしくは王子の婚約者という肩書きの人間とお近づきになりたいから。


おべっかにまみれた表情には見飽きたのよ。


【ビビアナ】

(けれどレイナは違ったわ)


ただのクラスメイトにするように、笑顔で目礼して終わった。

レイナは当たり前のようにわたくし自身を見ていた。

今思い出しても嬉しくて、幸福な気持ちになる。


【ビビアナ】

(今でも、学園でわたくし自身を見ているのはレイナと王子だけ)


ベアトリスとアンナはいい子だけれど、やはりわたくしに遠慮がある。

それが少し寂しい。


【ビビアナ】

(レイナがトリニダード王子を好きならば、申し訳ないけれど諦めて貰わなければ)


でも。

どう見ても、レイナがトリニダード王子に恋をしているようには見えない。

それはトリニダード王子も同じだ。


【ビビアナ】

(二人とも同じレベルで話せる人がいることに喜んでいるだけなのよね)


レイナがトリニダード王子に恋しているなら、言って聞かせないといけない。


トリニダード王子がレイナに恋をしているなら、役目を思い出させないといけない。


けれど、どう見てもあの二人に色恋の気配はない。

あくまでただの学友だ。

目くじらを立てることもない。


【ビビアナ】

「……余計なこと考えてても仕方ないわね。そろそろ寝なくちゃ。明日もレイナとたくさん話をしたいわ」

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