二話 友達ができるって、こんなに嬉しいんだね
入学式に少し馬鹿にされただけで、私は簡単に学園に溶け込めた。
もう、二週間学園生活を続けているが、誰も私のことを馬鹿にしない。
陰口も叩かない。
それは、いつも隣にビビアナがいるからだろう。
仲良くなったのはビビアナだけではない。
最初に校門で馬鹿にしてきた二人、ベアトリスとアンナとも今は仲がいい。
今も四人で昼食を食べている。
この四人で行動するのがすっかり当たり前になっていた。
友達の暖かさに、私は心から感謝した。
【レイナ】
「ビビアナさま、ベアトリス、アンナ、いつもありがとうございます」
口に出すと三人が不思議そうにレイナを見た。
レイナは自然な笑みを浮かべて、三人に視線を返す。
【レイナ】
「入学式の日、本当はとても不安でしたの。わたくしのような人間がこの学園にいていいのかって。ふさわしくないんじゃないかって。だから、こうしてお友達に囲まれている今が信じられないぐらい嬉しいの」
【ビビアナ】
「まあ、それを言うならわたくしこそレイナに感謝しているわ。わたくしを家柄で見て取り入ろうとする人間ばかりに囲まれていたから、疲れていたの。レイナはわたくし自身を見てくれる気がしたわ。そしてその予感は当たった。それがとても嬉しいのよ」
【ベアトリス】
「わたくしも、最初は身分を気にしてひどい態度をとったけれど、レイナと話すと楽しいわ」
【アンナ】
「わたくしもよ、レイナと友達になれてよかったわ。勉強も教えてくれるしね」
【トリニダード】
「随分と感動的なやりとりだな」
【レイナ】
「……トリニダードさま……」
突然現れたトリニダードは、言葉とは裏腹にいつもの冷たい彫刻のような表情をしていた。
緊張が走る中、ビビアナがトリニダードに笑いかける。
【ビビアナ】
「立ち聞きなんて、いい趣味とは言えませんわね。どうかなさったのですか?」
【トリニダード】
「レイナ、先ほどの経済学の論文とてもよくできていた。あの論文を貸してくれないか?」
【レイナ】
「え、ええ。かまいませんわ。クラスに戻ったらお渡しいたします」
【トリニダード】
「ありがとう」
トリニダードはそれだけ言って去っていく。
【レイナ】
(もともと王子ルートに行きたかったけれど、フラグが立ちつつあるわね。ビビアナには申し訳ないけれど、私も幸せになりたいの。ごめんね、あなたの王子をもらうわよ)
ビビアナのことは好きだし、心から友達だと思ってる。
大好きなのは本当で、嘘じゃない。
でも幸せの障害になるなら切り捨てる。
前世の私はつまらなかった。
だからこそ、この世界では何がなんでも幸せになるって決めたから。
ゲームの世界に生まれ変わっていると気づいたときから、王子を攻略すると決めていた。
なぜなら、王妃になればお金には困らない。
バイトで苦労しなくても欲しいものは手に入る。
それが魅力的だった。
そして何より、今は友達がいる。
ビビアナがいなくなっても、ベアトリスとアンナがいる。
だからさみしくはない。
ビビアナとの友情を捨ててまでも王子ルートに行きたいのは、トリニダードが好きだからと言うわけではない。
王妃になれば、つまらないバイトに追われることもない。
生活は保障されているのだ。
ゲームだと攻略キャラは皆、魅力的に見えたけれど。
もちろん、今でも魅力的だとは思うけれど。
プレイしたようなときめきはない。
多分、私という人間が、ここに存在するからだろう。
ときめきだけでは、生活していけない。
そんな現実感が、攻略対象にのめり込ませてくれない。
【レイナ】
(とにかく、王子ルートよ。王子と結婚すれば、何不自由なく暮らせるんだから)
王子ルートは勉学に励むことによって、開かれる。
今のように、王子から話しかけてくるようになるのだ。
最初は勉強についてのことだが、いずれ二人きりでお茶を飲んだりするようになる。
そして、嫉妬に狂ったビビアナがいじめを仕掛けてくるのだ。
今こうして誰よりも仲がいいビビアナにいじめられる。
それは考えたくもないものだった。
しかもその後ビビアナは、学園から追放される。
想像すると胸が痛い。
【レイナ】
(でもこれは必要な痛み。私が幸せになるために乗り越えなきゃいけない痛み)
がんばろう。




