十三話 もう届かない願いを胸に抱いて
前半がトリニダード視点、後半がビビアナ視点です。
レイナは首を切られる最後の最後までわめいていた。
レイナが静かになり、民衆は喜びに震えている。
馬車の中ですべてを見ていたベアトリスとアンナが声をあげて泣いている。
【トリニダード】
「すまない。すべて私のせいだ。ビビアナの件も、レイナの件も。ビビアナが罪を犯していることに気づけなかった。レイナからビビアナを奪い、レイナは変わってしまった。これらはすべて、私の責任だ」
【ベアトリス】
「トリニダード王だけの責任ではありませんわ」
【アンナ】
「ビビアナさまの分までレイナを支えるって、わたくしたち決めたのに。出来なかった……っ」
【トリニダード】
「私はもう王ではないが、弟にお前たちの話はしてある。王宮で働くつもりなら、可能だ」
言うと、ベアトリスもアンナも力なく首を振った。
【ベアトリス】
「いえ、あそこにいると変わってしまったレイナを思い出して辛いですから、わたくしは家に帰ります」
【アンナ】
「わたくしも家に帰るつもりでいます。変わったレイナの姿を思い出すと、罪を突き付けられている気がして辛いのです」
その言葉に、私はベアトリスとアンナの言外の決意も悟った。
この二人は、おそらく今日を最後に二度と会わないのだろうと。
二人が顔を合わせるとビビアナやレイナを思い出して辛くなるから。
どれだけの友情を感じていようと、会うつもりはないのだ。
ビビアナが壊れた。レイナが壊れた。
そしてベアトリスとアンナの友情も壊れた。
全ては私が至らなかった責任だ。
王の座を退いても、責任を取り切れない。
【トリニダード】
「……すまない……」
私はこの後悔と罪の意識を抱えて、一生生きていくのだろう。
それが私にできる唯一の贖罪。
*
修道女たちのうわさで聞いた。
レイナが王子の婚約者になったこと。
結婚したこと。
お似合いだと思う。
レイナならばうまくやるだろうと思う。
わたくしが誇りに思う友人のレイナならば、立派に務めを果たすだろうと。
わたくしとレイナを引き裂いた犯人はわからないまま。
なぜこんなことになったのかわからないまま、わたくしは修道女として神に祈りをささげている。
レイナが常に光に導かれますようにと。
そんなレイナが、悪辣な王妃になり、斬首された。
何が起こったのか、わたくしにはわからない。
レイナと悪辣という言葉が、どうしても結びつかない。
【ビビアナ】
(レイナが死んだ? 斬首刑? なぜ? どうして?)
私の問いに答えてくれる者はいない。
けれどレイナが斬首されて、王が変わったのは事実だという。
噂好きの修道女は、罪人のレッテルを張られたわたくしと話はしないが、他の修道女たちとの話は聞こえる。
レイナに何があったのか知りたい。
けれどわたくしは外界と連絡を取る手段はない。
親にも勘当された。トリニダード王にも見限られた。
ベアトリスもアンナも、私がレイナを殺そうとしたと思っていて近づかない。
【ビビアナ】
「これは、何かの間違いよ。レイナが悪辣王妃なんて、おかしいもの」
わたくしがレイナを殺そうとしたという罪よりももっとおかしい。
それでもレイナは死んでしまった。
それならば、わたくしのすることは一つだ。
【ビビアナ】
「神様、お願いします。レイナの死後の魂に安らぎを――」
*
――一人の少女が転生した。
幸せになるため努力した。
その結果、多くの人が、大きな国が、傷ついた――




