十話 彼女の様子が、どこかいつもと違って見えた
トリニダード視点です
【トリニダード】
「ビビアナになにがあった? なぜレイナに敵意を向けた? 理由はなんだ?」
学園では、私とレイナが親しくて嫉妬したと言われているが、考えにくい。
私とビビアナは、そんな甘い関係ではないからだ。
私は国民を導く王として、ビビアナは国民を見守る国母としてふさわしくあるよう、努力する同士だ。
そして、互いに道を外さないように監視している関係でもある。
色恋などではない。
私とレイナだって、色恋などではない。
互いに、友人として話が合うだけだ。
ビビアナが、レイナに妬くはずがない。
ああ、だが、レイナに毒を盛ったのは間違いなくビビアナだ。
ベアトリスとアンナが見ている前で、レイナを階段から突き落とした。
【トリニダード】
「私は、ものすごい思い違いしていたのかもしれない」
手紙や教科書を、二人の仲を裂く為に誰かがやったと思っていたが。
こうなってくると怪しい。
たしか、校長の前でもレイナを転ばせたこともあったはずだ。
もし全てが、ビビアナの仕業だったとしたら?
【トリニダード】
「ビビアナが私に恋をした?」
いつから?
さっぱり見当がつかない。
互いに目標に向けて、道から外れることがないようにと監視していたのに。
【トリニダード】
「私の目は、節穴ということか」
それにしても解せない。
ビビアナは馬鹿ではない。
あんなにわかりやすい方法では、自分が犯人だと公言しているようなものだ。
そこまで愚かな人間だったか?
手紙の内容を思い出せ。
レイナにひどい言葉をぶつけていた。
レイナが私に近づきすぎだと、自分が私の婚約者であると。
【トリニダード】
「……まさか、自分の立場を危ぶんだのか?」
私がレイナを気に入り、今さら全てが理想的なビビアナとの婚約を破棄すると?
【トリニダード】
「馬鹿な……」
ビビアナは楽しそうにレイナの話をしていた。
よく、私はレイナと一緒にいすぎだとも言っていた。
あれは、友人を取られまいとけん制していたのだと思っていたが。
【トリニダード】
「違ったのか? 私がレイナと仲良くすると、婚約者の地位が危ういから?」
馬鹿な。
こんなことをして明るみに出た方がまずいのに。
ビビアナは最後まで何かの間違いだと訴えているが、毒を買いにいかせた証拠がある。
階段から突き落としたのは、ベアトリスとアンナが証人だ。
学園長の前でも堂々とレイナを転ばせた。
後のことを考えられないほど、自分の地位が危ぶまれて焦っていたのか?
それとも、あれだけ堂々と犯行を行えば、逆に疑われないとでも思ったのか?
【トリニダード】
「どちらにせよ、愚かだ」
ビビアナとの婚約は解消するしかない。
――そして、私の婚約者にふさわしい人間を、ビビアナの他に私は一人しか知らない。
明るく、努力家で、気遣いができる者――
レイナだ。
人がよすぎるのが心配で、適当な理由をつけて、王立図書館に連れて行った。
心理学の本を渡し、人に陥れられ苦労した研究者の生涯を描いた本を渡した。
レイナが悪意に敏感になり、もっと公正な目をもてれば、私の片腕として頼もしい存在となる。
だが。
【トリニダード】
「レイナには酷なことを頼むことになるな……」
自分を攻撃していた者の後釜など。
それでも、どこの貴族令嬢よりも、レイナの方が相応しい。
苦い思いで、私はまずビビアナとの婚約を解消するため動き出した。




