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一話 はじめての学園生活、わくわくが止まらない

――目が覚めたら、見慣れない天井で驚いた。

見知らぬ部屋だ。

どうしてここに?


ぼんやり考えて思い出す。


【レイナ】

「私の名前は、レイナだ。ここは、ゲームの世界」


私はこの世界の主人公で、様々な攻略対象たちと恋に落ちる。


……前世はつまらない、くだらない人生だった。

学校ではいじめられ、家に帰れば父から睨まれる。

母が不倫し、離婚。


母に私を連れて行く気がなく、私も父を裏切った母がいやで父について行った。

けれど、母によく似た私を父は嫌悪していた。


学校でも家でも居場所がなく、私はいつもひとりだった。

たまたま見かけたゲームが、どうしても欲しくて、バイト代を貯めて買った。


それが今いる、このゲームの世界だ。

優しい両親と、親切な隣人。

なんてすばらしい日々なのだろう。


前世で私はバイト帰りに、近くの男が包丁を振り回した。

痛くて気持ち悪くて、男が次々に人を襲っているのをただ見ていた。

自分を刺した男を見て、私は思った。


大それた事を躊躇なく行動に移せる意志の力がうらやましいと。

私はただ、目立たないように生きていたから。


そして気づけばこの世界にいた。

たぶん、私はあそこで死んだのだろう。

本当に何の意味もない人生だった。


【レイナ】

「だからこそ、私は今の人生を満喫してみせる」


絶対に幸せをつかみ取る。

なんとしてでも。


【レイナ】

「しっかりしなきゃ。今日は学園の入学式だ」


町の学校に通い、成績優秀と先生に褒められ、名門の学園の入試を受けることになった。

結果、特待生として学費の免除を認められた。


【レイナ】

「私の本当の人生はここから始まるのよ」


入学式、学園の門をくぐって早々、庶民が来たと言うことで貴族のお嬢様方から、レイナは徹底的にいじめられる。

礼儀作法がなってないと笑われる。


けれどゲームで私は貴族達の話し方をみていた。

どのキャラの台詞も、空で言えるほど暗記している。


あの話し方でいけば大丈夫。

問題ないはずだ。


ほら、新入生達のひそひそ声が聞こえる。


【???】

「ほら見て、あの子じゃない? 庶民の新入生」


【???】

「同じクラスにならないといいけれど。庶民臭さがうつってしまいそうだわ」


そんな陰口を言う二人の女子に、私は余裕のある笑顔で返した。


【レイナ】

「ごきげんよう。わたくし、レイナと申します。お二人の仰る通り、庶民の出ですから、礼儀作法などなっていないことも多いと思います。ご指導いただけると嬉しいですわ」


そして、一礼をする。


すると二人の新入生が、気まずそうに顔を赤らめた。


【???】

「まあ、多少の知識は、ある、のね」


【???】

「その感じだと、この学園でもやっていけそうね」


【レイナ】

「光栄なお言葉ですわ」


【ベアトリス】

「わたくしはベアトリス。これからよろしくね」


【アンナ】

「アンナですわ。よかったら、一緒に入学式へ行きませんこと?」


私に断る理由もなく、ベアトリスとアンナとともに行動した。

若干好意的になった二人との話は、楽しかった。

友達と話をするのは初めてだったから。


入学式を終え、クラスが違う二人と別れて自分のクラスに入る。

このクラスには、この国の第一王子と、その婚約者がいるはずだ。


視線を巡らせれば、いた。

金髪碧眼の、冷たい彫刻を思わせるようなトリニダード王子と、赤い髪がとても美しく、意志の強そうな瞳が印象的なビビアナ。


二人は仲良く話すでもなく、それぞれ席に着いていた。

二人だけに挨拶をするのは望ましくない。

取り入ろうとしているのがあからさまだ。


だから目が合った二人に笑顔で微笑みかけ、視線を外す。

すると、また聞こえよがしな声が聞こえてきた。


【クラスメイトA】

「まあ、見た? トリニダード王子とビビアナさまと目が合ったのに、ご挨拶もないわ」


【クラスメイトB】

「さすが、庶民の子ね。失礼を失礼とも思わないなんて」


レイナが笑顔で何かを言う前に、ビビアナが言った。


【ビビアナ】

「あら、彼女は笑顔で目礼してくれたわよ?」


【レイナ】

「…………」


意外だった。

ビビアナは、ここで新入生二人に混ざり、自分を馬鹿にしてくるはずなのに……。


ゲームの主人公は、ビビアナとあっても、すぐにうつむき席についた。

自分はそうしなかった。

その違いだろうか。


それでも、いじめっ子リーダーの台詞とは思えない。

驚いていると、先生が入ってきて、自己紹介がはじまる。


皆が家柄とともに挨拶をしていく。

レイナの番になり、立ち上がって挨拶する。


【レイナ】

「レイナと申します。不作法なことも多いと思いますが、なにか間違いをしたら、その都度教えてくれると嬉しいです。よろしくお願いいたします」


そして、一礼する。

その後も自己紹介が続き、学園の説明を受けて解散となる。


【クラスメイトA】

「貴族気取りの庶民っていやね、見ていて恥ずかしい」


【クラスメイトB】

「自分を分かっていないというのも、見ていていたたまれませんわね」


そんな言葉が嘲笑と共に聞こえてくる。


【ビビアナ】

「恥ずかしいのはどちらなの?」


ビビアナが、即座に二人に言った。


【ビビアナ】

「彼女は礼儀正しくて、カーテシーも優雅だったわ。そして特待生なのだから、成績も優秀なのよ。家柄だけにしがみついて、妬む方がよほど恥ずかしくて、いたたまれないと思わないの?」


【レイナ】

「…………」


何が起こっているのか、本当に分からない。

ビビアナが、私をかばった? なぜ?

ありえない。


ビビアナがぼう然とする私を見て、優雅に気品ある笑みを浮かべる。


【ビビアナ】

「ごめんなさいね、入学そうそう、嫌な思いをさせてしまって」


【レイナ】

「ビビアナさまが謝られることは……」


【ビビアナ】

「貴族が全員、あのような物言いをするわけではないの。どうか貴族をひとくくりで見ないで頂戴ね」


【レイナ】

「はい」


【ビビアナ】

「わたくしは、貴方のことが好きよ。慣れない場所で堂々としていて、すばらしいわ。わたくしとお友達になってくださらないかしら?」


【レイナ】

「光栄……いえとても嬉しいです、ビビアナさま。これからよろしくお願いいたします」


変に距離を置くより、クラスメイトとして接した方がいい。

そう判断して微笑むと、ビビアナが嬉しそうに笑う。


【ビビアナ】

「早速ですが、寮までいっしょに帰りましょう」


【レイナ】

「はい!」


ビビアナの隣を歩く私の悪口を言う人なんて、いるわけない。


【レイナ】

(思いがけない後ろ盾ができたわね)


まさか、ビビアナが味方につくなんて。

予想外だった。


王子の前で善人ぶってる訳でもなさそうだ。

私達はもうクラスを出ていて、王子はまだクラスにいるのだから。


ビビアナが友達なら、私にちょっかいを出す生徒はいないだろう。

いじめがない、学園生活。

それは、前世からの夢だった。


こんなに簡単に叶うなんて思わなかった。


【レイナ】

(ビビアナに感謝ね)


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