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光の届く庭で

作者:久堂 禮
なぜ、この町に降り立ったのか。理由は思い出せない。ただ、雨上がりの石畳に射す光に、どこか懐かしい響きを感じた。その響きに導かれるようにして、私はひとつの宿へと足を運んでいた。

格子戸を開けた瞬間に漂った茶の香り、静かに微笑む女将の声。初めてなのに、遠い記憶の水面が揺らぐような既視感があった。

庭をわたる風、夜に沈む廊下、行き交う客人たちの短い言葉。何気ない情景のひとつひとつが、胸の奥に眠る空白をそっと揺さぶっていく。

やがて古道具屋で手にした硝子細工や、映写室に浮かぶ淡い映像が、過去と現在の境界を静かに溶かしていった。失われたはずのものが、まだどこかで息づいているように。

それが何なのか、言葉にはならない。ただ、この宿で過ごす日々が、私を私自身へと還していくのだと、確かに感じている。

光の届く庭に立つとき、私はきっと、忘れていた何かに触れるだろう。
プロローグ
2025/08/17 13:32
2025/08/17 14:00
2025/08/17 19:00
2025/08/18 19:00
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