明日は平日月曜日!!!
響也たち四人がアパートに向かっていると、突然、響也のスマホに通知が来た。
「……うん?月切先輩からだ……なになに…えー、[『たまかり探偵事務所』って所の従業員三人が、明日からうちで働くことになるので、どうぞ仲良くねー……あっそうだ、響也くん、明日から依頼こなしてもらうから、よろしくー]………だってさ」
「じゃあ、働く時もいっしょだね!うれしいな」
「でも、なんでこんなタイミングよく……」
「さあ?僕はわからない」
「デズも皆目見当もつきません…」
「……うーん…ま、いいんじゃない?それより、明日からお仕事頑張ってね、響也くん!」
「……うん」
「まあ?本当は行かせたくないけど、それでも将来のお嫁さんとして、夫の個人的な所まで介入しすぎるのも良くないからね!」
「あはは……気が早いよ、あの時はちょっとおかしかっただけで、これからお互いをちゃんと知っていかないと、ね?……あ、そういえば、虚子さんって、一人暮らしなの?」
「うーん……事務所ぐらし?てか、また虚子さんって……虚子ちゃんって呼んでくれないの?」
「いやー…虚子さんって言う方がしっかりくるんだよ……ほんとなんでだろうね?キャラ的にかな」
「……うーん…そうなのかなあ…じゃあ、また今度虚子ちゃんって言ってくれるならいいよ?」
「……言うことあるかなあ?」
「もう!そこはわかった的なこと言うべきでしょ」
「……わかったよ、虚子さん」
「………んもう……つんつんつん」
「や…やめ、ほっぺはつんつんしないで……ああ……」
その間、村正とデズは、ひそひそと話し合っていた。
「いやー良かったです……マスターを手懐ける事が出来そうな人が偶然近くにいて」
「……そんなにやばいの?」
「村正さんと戦った時はまだ本気ではありませんでした。いつもなら、速攻であなたの首を切り落としています」
「……こわ」
「マスターが恋をしていて良かったです……そのおかげで、今あなたたちはこうして仲良くお話しできているわけです」
「………まぁじか……」
村正は、虚子の底知れなさを感じ、怖くなった。
「……お、ついた。ここが私のアパートだよ」
しばらくして、響也のアパートの部屋の前まで着いて、彼はそう言った。
「あー…僕のプライベートがー……」
「……ごめんね、村正」
「いーよ…まあ、これは必要な犠牲だろうし」
「……?犠牲」
「あー…いや、なんでも無い」
「響也くん、どうしたの?」
「いや、なんでも無いよ…それじゃ、入ろっか」
そう言い、響也は鍵を開けてドアをひらいた。
「ただいまー……」
「お邪魔しまーす」
響也と虚子はそう言って家に入った。
「ここが響也くんの家かー」
虚子はよくあるアパートの内観を見回した。
「……普通なんだね……くんくん…うん、年季の入った普通のアパートみたい。直近に年頃の女性がいた痕跡はないね」
「あはは……そりゃそうだよ。私には女性の友達はいないからね(匂いでわかるの?すごいけど、プライベートが……)」
「……でも大学とかで話はしたよね?」
「それくらいは許して欲しいかな……誰とも話せないのは寂しいし」
「もう…響也くんには私だけでいーの…」
「いや…流石にそれは」
「ねえ、響也。ご飯どうする?」
「あ!忘れてた」
その時、誰かのお腹から音が鳴った。
「……あ、私も、お腹減っちゃった…」
「デズも、そろそろ夕食がとりたいです」
「うーん……今からってなると、自転車でコンビニに行っても真っ暗になってるし……どうしようかなぁ…」
その時、家のチャイムが鳴った。
「はいー……今出ますー……」
響也はそう言って、ドアスコープを除いた。
そこに立っていたのは、黒い和服を着て、竹刀袋を持っている女性だった。
「ん?どなたですか」
響也は、小さくドアを開けてそう言った。
「そんなに警戒しなくていいよー……うち、そこにいる虚子ちゃんの所の所長だから」
「え?それって…」
「あれ、所長!どうしてここに?」
「いや、ゆっきー……由紀乃が君たちに連絡するわけないだろうなーって思って、伝えに来たんだよー……あ、もちろん、ただで上げてもらうわけには行かないから、これ持ってきたよ!」
そう言って、和服の女性はビニール袋の中を突き出した。
「これは……寿司?」
「そう!寿司屋の持ち帰りを買ってきたのよー……4人とも、お寿司食べれるー?」
「……あ、所長。デズは大丈夫です」
「お寿司?!食べたい食べたい食べたーい!!」
「私も大丈夫です…所長」
「村正…はしゃぎすぎちゃダメだよ……でもちょうど夕食をとろうとした所なので、ありがたくいただきます。どうぞ、上がってください」
「じゃあ、遠慮なく入らせてもらいますねー…」
そう言って、テレビのあるリビングの机に全員座った。
「とりあえず、あなたの名前を聞いてもよろしいでしょうか?」
「あ、ごめんなさいねー……うちの自己紹介を忘れていましたわ……うちは、朽崎 百一。『たまかり探偵事務所』と言う所の所長をしてます……よろしくでーす」
「こちらこそ……私は山崎 響也です」
「僕は童斬村正の呪いだよ……テキトーに村正って呼んでね☆」
「村正……初対面の人には敬語を使った方がいいよ?」
「いいよいいよー……うち、そんなかしこまったキャラじゃないからねー……」
「……本当にすみません」
「……所長、それで、どうしてここに?」
「あ…言い忘れかける所だったねー……うち、依頼で鹿児島に行く用事があって、その間うちの従業員をつきぎり探偵事務所で働かせてもらおうとおもってねー……ま、それをそっちの所長に言ったんだけど、それを連絡するとは考え辛いから、探偵事務所を出た時に会った彼方っちにそのこと言って響也くんの住所聞いたのよー……だから、あなたたちのことを知ってたには知ってたの……言わなくてごめんねー」
「いえいえ…あの、なら虚子さんたちも連れて鹿児島にいったら良かったんじゃ無いですか?」
「……それはしない方がいいと判断したんだー……なぜなら、うちの子たちじゃ"奴"に太刀打ちできないからだよ」
「奴?……問題なければ教えていただけませんか?」
「………いいよ、君たちも知っておくべきだと思うし……世の中にはね……アルバイト含め巫女さんだけを喰らう亡霊がいるの……全国各地で目撃情報が出てるんだけど、その気配から全て同一と考えられている…………巫女を喰らうと言う特徴から『巫喰らい』と呼ばれているの……その姿は、都会の商業ビルの半分ぐらいの大きさで、肌は黒く、両手両足、それぞれ9本ずつあるらしい……もちろん、そんな大きさで襲われると神社ごと壊されてしまう今まで被害を受けた神社は、どこもぐちゃぐちゃになってしまっている…………そして今は鹿児島県のある神社で、神社が襲撃される前兆が出たから、私も行くことになったわけ……わかった?」
「あの……その前兆って?」
「………黒い人影が、巫女さんだけを攫いにくる……こいつら自体は全然雑魚だからいいんだけど………それからしばらく……1ヶ月もすると巫喰らいが現れる……だから、それまでに準備を済ませて真っ向から叩く必要がある……それ以外に、今の所の対処法は無いの……」
「……所長、やっぱり私じゃむりなのかな……」
「うん……残酷なことを言うけど、今の虚子ちゃんたちはまだ経験が足りない……勇気と無謀は違うから、死ぬのをわかっていてわざわざ行かせるほど私もおわってないのよ……さて、この話はここでお終いー!………そこの村正くんも目を輝かせてるから、食べよっか」
「わーい!やっと食べられるー!!いただきまーす!」
「いただきまーす」
「いただきます」
「いただきます」
「じゃあ、うちもいただきまーす」
響也たちは、大きなトレイの中に入った寿司を食べ始めた。
「ねえ、響也くんの一番好きなお寿司って何?」
「うーん……一番ってなると……悩むなあ…」
「じゃあこれ、はい、口開けて?」
「ん?わ、わかったよ……」
「はい、あーん…」
「…んぐ………これは、大葉いか?」
「うん!私の好きなお寿司なの」
「……なかなか見ないチョイスだね。美味しいのはわかるけど」
「もぐ………うまい!…………うまい!………うまい!」
「……あの、村正さん。あなたがさっきからあの漫画の炎の人みたいなことしていますが、もしかして村正さんの中でブームだったりしますか?昨日の例の神楽の技も合わせて……」
デズは、村正にそんなことを聞いた。
「……ごっくん!そうだよ!あれ、カッコよくてやってみたかったんだー……」
「……まあ、人の形して2日だから新鮮なんだと思うよ?……」
村正たちの話が耳に入ってきた響也は、そんなことを言った。
「へえ…2日か…うちも色々興味があるから聞いてもいい?……正直、ここにきたのも、しばらくここを離れるからその前に響也くんにあってみたかったからなんだー…」
「そうなんですか……いいですよ…お話しします」
響也は、寿司を食べながら、金曜日から今までのことを話した。
「なるほど……いやー…でも、ここに虚子ちゃんがいるのみてびっくりしたけど、そんな事情があったんだねー……良かったよ、虚子ちゃんが幸せそうで……それに、響也くんも面白い子なんだねー……」
「うっ……それは出来るだけ言わないでいただけると…」
「あははー……それじゃ、響也くんたちのひとまずの目的は、稚児斬りの討伐ってところかなー?」
「……そうだろうね、僕も響也も、おそらくその解決に役立つと考えたと思うよ……僕の刀と稚児斬りのには何か繋がりがあると思うし」
「……私も、そのお手伝いをした方がいいの?」
「ん、お願いするねー……虚子ちゃんは力が強いから本気を出せばとんでもないことになるからねー……お寿司も無くなったし、そろそろお暇させてもらいますねー……どうか、死なないことを祈ってるよー」
「……所長の命令だっていうなら、わかったよ……」
「ありがとうございました……また今度、お話しできることを楽しみにしています」
「そうだねー……うちも、楽しみにしてるねー……それじゃ」
夕食を終えた頃、百一はアパートを出た。
「………さて、湯船浸かりたい人ー」
「はいー僕僕!」
「……私も入りたい」
「デズは、どちらでも」
「わかった。まあ、とりあえず、お風呂沸かしてくるからどっちが先に入るか決めててねー」
「はーい……ん?どうした、虚子。さっきから、落ち込んでるみたいだけど……」
「………なに、あなたには関係ないでしょ?……それに、あなたに呼び捨てにされる筋合いはないから気安く呼ばないで」
「……じゃあなんて呼べばいい?」
「………呼び捨てでいいわ、やっぱり」
「……何がしたいの?君」
「……あなたには関係ない」
「まあまあ、二人とも喧嘩はやめてください…ね?」
「………んんん………」
「………ぎににに……」
虚子と村正は互いに睨み合い、時間を潰した。
「あれ、二人ともなんで睨み合ってるの……まさか、夕方のをまだ」
「いや、そう言うわけではないようです。マスターと村正はそもそも相性が悪いみたいで……」
「……そうなの?……困ったなあ…」
しばらくすると、お風呂と沸き、まず村正が入った。
その間、響也は模造刀を持ってアパートの外に出ていた。
過去彼が通っていた居合の基礎の中に、殺陣の動き、人を倒せる動きを想定して、ひたすらに振っていた。
「………ふう」
「お見事です」
納刀していると、ふと、デズがそれを見にきて、そんなことを言ったのに気づいた。
「………まだまだだよ……あの二人に比べたら……そう言えば、虚子さんと離れててもいいの?」
「確かに、融合するとマスターから離れられる距離も限りが……それは融媒の人間によって長さが変わります……マスターなら、これくらいの距離ならどうってことないです」
「そうなんだ……村正はどれだけ行けるんだろうか……いや、今考えても仕方ないな………ねえ、デズさん……お風呂に入る前に、せっかくだし、軽く手合わせしない?……周りを壊さない程度に…ね?」
「いいでしょう、マスターほど強くはありませんが、どうぞお手柔らかに……これも親睦を深めるために必要なことでしょうし」
そういうと、黒い煙を纏い、鎌をつくった。
「……その武器作るやつって、呪いの標準機能だったりしない?」
「そうですよ、これがデズたち呪いの基本です」
それから、言葉を交わさなくなり、武器を構えた。
「いざ!」
響也がそういうと、二人は構えをとり、互いに近づいた。
響也は横薙ぎ一閃を繰り出し、それをデズは、持ち手で当てて、その勢いのまま鎌を響也の左肩に当てた。
「あ……」
「デズの勝ちです………抜刀の速度は速かったですが、デズが鎌を左に構えていたこと、ここがアパートで激しく動けなかったことが良かったみたいです」
「………君、私みたいな戦い方するね」
「マスターのストーキングに協力したりしていましたから、当然見ていたんですよ……あなたの殺陣を」
「……え?入学してからストーキング始めたんだよね?多分……1ヶ月ほどで見切るって……親が親なら子は子ってことわざ思い出したよ……」
「そんな感じでしょうね……デズで良ければいつでも相手しますよ」
「まってな……今に目にもの見せてやる」
二人は、そんな話をしながらアパートに入って行った。
「あ、響也くん。デズ、さっき何してたの?」
「マスター、デズたちは、外で軽く手合わせをしていました」
「えー、何?手合わせだって?!僕もやりたかったなぁー……」
「村正、もう風呂上がったんだ」
「……こいつ、初めて風呂に入ったから、やり方がいまいちわかってなかったみたいなの……だから、仕方なく、私が洗ってあげたよ」
「へえ、そうなんだ、ありがとうね、虚子さん……嫌だったろうに」
「えへへー……響也くんに褒められるならなんだってできる気がするよ…」
「……そんなことよりさあ!!……デズくん!僕と手合わせして!」
「……今から湯船に浸かろうと思っていたのですが」
「ちぇー……」
「まあまあ、村正、明日から仕事だし普通に大学あるから、今日は休もう?」
「呪いも、普通に疲れますからね……」
「………そういえば、荷物事務所に置きっぱなしだった……ごめん、ちょっと行ってくる!」
「え?いや、明日でも……」
「私、朝弱くてギリギリだから朝になったら取りに行く時間がないんだ……だから行ってくる」
「デズもついていきます」
虚子とデズが走って外に出て行った後、響也たちは寝支度をしていた。
「はあ…なんであんな奴のためにお布団使えないんだよ…」
「元から布団は二つしかなかったからね………響也は、私の中で一緒に寝よう?」
「………響也、虚子ってさ、本気だったら僕を瞬殺出来てたんだって………」
「………そうなんだ」
「………あんな殺気を出しておいて、まだ本気じゃなかった……僕らなんて全然相手にならないんだ………やっぱり、僕たち、こんなことしなくてもいいんじゃない?」
「………村正も、弱ることあるんだね」
「……正直、怖かったんだ、殺気と真っ向から向き合って………だから、それから逃げるために煽ったり、例の神楽をしたんだ」
「……煽るのって逆効果じゃない?」
「冷静さを欠かせたら、逆に避けやすいかなって………実際そうだったし」
「………そっか、ならよかったね」
「………うん、ねえ、僕疲れたから先に休んでていい?」
「いいけど……私の魂の中でしてね」
「もちろん」
そう言うと、村正はすっと響也の体に入った。
「あれ?………私も、眠く……」
そうして、響也は布団の上で寝落ちしてしまうのであった。
〜人物紹介〜
・朽崎 百一…響也と同じ大学の3年生。
21歳で、いつも黒い和服に竹刀袋を提げている。
響也と似たような噂が出ているが、そのことを百一は知らなかった。なんなら、お互いに同じ学校に通っていることすら知らない。
好きなことは漫画集めで、最近完結した漫画のアニメが放送された「ひょーはくざい」が一番好き。