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07 魔族と人間の常識が違いすぎる件



「今日の料理は、吾輩特製、肉厚ステーキにバジルのソースあえでござる!」



 そう言いながら、明らかに不味そうな料理を並べていく男。コックのような格好をしているので、もしかしなくとも、コックなのだろうが……

 私はチラリ、とレイを見た。レイはもはや、何かを悟ったような表情をしていた。



「一応聞くが、ステーキは焼きすぎなのだとして、そのソースはどうしたんだ?」



 レイは男に問いかける。すると、男は目をキラキラと光らせて、質問に答え始めた。



「よくぞ聞いてくれましたぞ! このソースはバジルだけでは味気ないと思いましてな、色々な薬草を入れてみたのでござる。そのため、理論上は色々な効能がある素晴らしい、ソースなのでござる」

「ああ、理論上は、だがな。お前の料理は何時もそうだ……もう下がって良い」

「かしこまりましたでござる」



 そう言うと、コック? は緑色の髪を揺らしながら、出ていった。コックが、髪の毛をしまわなくて、良いのだろうか。それにしても……



「これ、食べれるの……?」

「ああ、まあ、いつも食べている」



 いつもこれを食べているというのか……魔王も魔王で、味覚が怪しいのではないだろうか。

 すると、魔王は、唐突に指を鳴らした。



「食べてみろ」



 何か魔法をかけたのだろうか。だが、料理はへんてこな見た目のままだ。もしかして、味が変わっているのだろうか。

 しかし、この見た目を食べるのは少し、抵抗感がある……

 腹をくくり、フォークで炭を少し取って、口に入れる。



「炭味じゃない!」

「ステーキの味になるように、炭に魔法をかけた」

「あ、ありがとう! レイはすごいね」

「僕もいつもそうして食べてるからな。一人増えたところで、あまり変わりはない」



 見た目をそのままにして、味だけ変えるというのは、いささかズレているような気がするが、味は良かった。

 おそらく魔法は、その人の記録を再現して作るため、レイは相当な美食家らしい。

 というか、これを毎日魔法で味だけ変えて、食べているのだろうか。それなら、あのコックに少しずつ、料理を教えたほうが、効率的な気がする。

 でも、そもそも、何故料理が下手な魔族がコックなのだろうか……

 


「ベオウルフは、たまに美味しい料理を作るんだ。その『たまに』の料理のため、雇っている。まあ、そもそも魔族にとって、食事なんぞ必要ないがな」



 なるほど。魔族にとって、食事は趣向品のようなものなのか。とは言っても、私は人間だ。おそらくこの魔法は、味が、変わるだけで、実際はステーキ味の炭を食べているのだろう。そうすると、栄養価はゼロに等しい。人間は栄養がないと、死んでしまう。



「魔族のレイはいいかもしれないけど、私は人間だから、困ったものだね」

「? ああ、なるほど。ならば、今度ベオウルフに料理を教えてやってくれ。ルシェは、料理が得意だろう?」

「……わかった」



 何故、レイは私が料理が得意なことを知っているのだろうか……私はレオに、少し恐怖を感じた。


 

 それからは、会話がなく、黙々と墨を食す時間が続いた。時折、食器の音が鳴る程度で、無音。はっきり言って、すごく気まずかった。

 幸い、コース料理でなかったのが、救いだ。

 そうして、気まずい中、私たちが食べ終わると、ぞろぞろと、リルやベオウルフ、そして、知らない顔が1人、入ってきた。なんだろう……?



「どうしたの……?」

「ルシェを紹介するために呼んだ」



 なるほど。どうやら、顔合わせをするためらしい。右から順にリル達は私とレイの横に並ぶ。



「メイドのリルです! 特技は元気なところです! ルシェさん、これからよろしくお願いします」

「コックのベオウルフでござる。常に革新的料理の発明をするために、研究しているのでござる。ルシェ殿、よろしくお願いしますでござる」

「レイヴィノール様の執事兼、使用人統括のスチュアートです。どうぞよろしくお願いします」



 改めて見ると、皆美形だ。リルが美少女系なのはさながら、ベオウルフは少し、くたびれた感じがあり、童顔だが、美形なのには変わりない。スチュアートは、the執事という、クールなイケメンで、魔族に権力者がこぞって乗り込んだのも納得である。


「今日からよろしくお願いします」



 私は彼らにペコリ、とお辞儀をした。









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