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15/21

15 出発



―――これは、夢だろうか。


 ぼやけた視界の中で、リリはリルの横に静かに寄り添っていた。おそらくずっと看病していたのだろう。すごく疲弊していることが、見て取れる。

 そこに、女の人が入ってきた。こちらもくたびれた雰囲気で、少しぐったりとしていた。



「話があるの」

「なあに、お母さん」



 リリの母は、リリの横に立つ。リリの母は、仄暗い表情をしていて、それでいて、正気を保つために薄笑いを浮かべているような感じがした。なんだろう、すごく嫌な予感がする。


「リルは、助けられないわ」

「えっ……?」

「そう、だってうちには―――――――――」



****



「ハアっ! ハアっ!」



 私は、ガバッと体を起こし、飛び起きる。ぐっしょりと背中が濡れていて、すごく不愉快に感じた。



「……どういうこと? 今のは、夢? 私の妄想?」



 だが、リリの母や、リリの感じがあまりにもリアルだったし、何より、これを嘘だとはとてもじゃないけど、思えなかった。



「とりあえず、起きよう……」



 私は、ベットから起き上がり、テントの中央に向かった。テントの中央には、何やら読書をしている、レイの姿があった。

 こんな状況だけど、朝日が差し込む中で、読書をしているレイの姿は、その容姿と相まり、神々しく感じられた。

 ぼーっと見ていると、レイがこちらを向いた。



「おはよう、ルシェ」



 レイは、ふっと微笑む。その破壊力のある笑みに、私は少し、めまいを感じた。



「おはよう、レイ。リルは?」

「まだ寝ている」



 レイは、自分の隣にある、小さなベッドを指さした。リルは、すやすやと静かに寝ていた。しかし、幸せそうな表情で寝ている、リルとは対照的に、レイは疲労困憊な様子だった。



「レイ、大丈夫? クマができてる……」

「ああ、リルが連れ去られないように、見張っていて、一晩中寝ていないからな」

「こんな状態で、鍵を探すなんて大丈夫?」

「魔族だから大丈夫さ。それに……いや、何でもない」



 レイが突然押し黙る。私は、レイに続きの言葉を問いかけようとも思ったが、レイにも話したくないことくらいあるのだろう。私は、続きをあえて、聞かないことにした。



「私が見張っているから、少し寝てきたら? そんな様子じゃ、少し心配」

「……いや、ただ体にクマができているだけであって、本当に何でもないんだ」

「そうは言っても……まあ、いいよ。でも、無理はしないでね」

「わかった」



 レイは、少し腑に落ちていないような顔をしていた。だが、彼がいくら魔王だとしても、疲れるものはつかれるはずだ。だからこそ、本当に無理はしないでほしかった。これは、私の思いやりである。



「……おはよぉ」



 リルが目覚める。少し、昨日より、背が高くなったようだった。



「おはよう、少し大きくなった?」

「うん!! わたしは、あんまりおおきくなれないから、うれしいな」



 リルはニコニコと笑う。でも、私はその表情に、堪らなく、胸を締め付けられた。



「夢の中でも、成長するんだね」

「いや……夢の中で成長したということは、何かを思い出したんじゃないのか?」

「そうなの? リル」



 私は、リルに質問をする。すると、リルは少し考えたあと、にぱっと明るく笑ってみせた。



「おもいだす、っていうのはわからないけど、ゆめはみたよ」

「夢?」

「そう! ママとおねーちゃんがリルにいっぱいごはんをたべさせてくれるゆめ! ……でも、ママたちかなしそうだった」



 リルはしょぼん、とした表情になる。そういえば……



「レイ、私も今日、夢を見たよ。リリと、そのお母さんの」

「……そうか。それはおそらく、この深層世界の心理がルシェに、干渉してきたんだろう。それも、おそらく、リルの記憶の断片だ」

「なるほどね」



 それから、私達は、簡単な朝食を、レイの魔法で頂き、鍵探しへ出発した。



****



「リル〜、どこで落としたか心当たりとかないの?」

「そういわれても、ないものはないの!!」



 私達は、テントを出て、かれこれ何時間も夢のあちこちを彷徨っていた。夢の中は森が大部分を占めていて、行き止まりこそないものの、同じ景色の連続ループが多々あった。



「というか、あの髪飾りを大切って、言ってたけど、どういうものなの?」

「うんとね、わたしもあんまりよくわかんないんだ」



 リルは、申し訳無さそうにして告げる。なんだか、私は少し申し訳ない気持ちになった。



「そっか。ごめんね」

「あやまんないで!! でもね、ひとついえるのは、おかあさんのたいせつなひとからもらったんだって」

「そうなんだ」



 お母さんの大切な人……それは、リルのお父さんだろうか。それとも、リルのお母さんの家族……?どっちにしても、貴族の紋章のようなものが入っていた以上、確実に何かありそうだ。



「……母、か」



 そんなふうに、私が思案していると、レイがふとつぶやいた。


 


話の速度が遅くてすいません。

でも、細々としたところが描きたくなっちゃう人でして……

続きが気になる! って少しでも思ったら、ポイントと、ブックマークお願いします(.❛ᴗ❛.)

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