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ある人が呟いた。「俺の色盲が娘に遺伝した」と。
色盲はX連鎖性潜性遺伝であり、ほとんどの場合、男性にのみ現れる。
その方は普段の生活に支障がない程度の色覚異常(色弱)だった。娘さんが学校の検診で色覚異常を指摘された、とのことだ(今から二十数年前の話である)。
色盲の遺伝子はX染色体上にある。厳密には色覚に必要なタンパク質を作り出す機能を持たない遺伝子を「色盲の遺伝子」と言っているので、女性であれば2つあるX染色体の一方が該当の機能を持たなくても、もう一方が機能を持てば(正常であれば)発症しない。
必要なタンパク質を作り出す機能を持つ染色体を大文字のX、機能を持たない染色体を小文字のxとすると、件の男性は[x,Y]であり、子どもは[X,Y],[X,Y],[x,X],[x,X]の組み合わせ、つまり正常な男児とキャリアの女児がそれぞれ同じ確率で得られることとなる。
ん?女児の色盲はどこから出てきた?。
件の男性の妻がキャリア(症状がない)だった場合を考えてみる。
男性[x,Y]と女性[x,X]の子どもは[x,Y],[X,Y],[x,x],[X,x]の組み合わせ、つまり色盲の男児と正常な男児と色盲の女児とキャリアの女児がそれぞれ同じ確率で得られることとなる。
件の男性に対して、「奥さんもキャリアだよ」と肩を叩いた所で誰も幸せにならないので、何も話さなかったけど。たぶん奥さんも、自分がキャリアだって気がついていないのだろうし(孤発例なら尚更のこと)。
異世界恋愛読んで、思い出してしまうなんて。ああ。