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4.

マズルフラッシュが瞬き七.六ニミリ独特の重々しい銃声が店内に響き渡る。

 続けざまに二発、三発。それでも相手は倒れない。それどころか射手に向かって脚では無く両腕を繰り出し向かっていく。

 その隙に実紅はカウンターに向かって文字通り飛ぶように駆け寄り軽やかに奥に目掛け飛び込む。

 中には八人ほどの男女が身を強張らせ潜んでいた。

 突然現れた人影に恐慌状態になる彼らに向かい、成り続ける銃声の合間を縫って。


「警察よ、助けに来た。合図したらVIP席を回り込んで出口へ走って」


 皆が頷くのを確認するとカウンター越しに店内を偵察。

 リュドミラの正確無比な射撃は相手を釘づけにしていたものの倒される気配はない。

 意を決した実紅は。


「行くで!」


 カウンタの脇に飛び出るとベネリを構えつつ生存者を送り出す。

 銃声と魔物の姿に怯えながらも生存者たち壁沿いに駆け出してVIP席を目指す。

 射撃を続けるリュドミラの背後を轟音に耳を塞ぎつつ駆け抜け、機動捜査隊員が待つ出口に走り込む。

 最後の一人、十代後半の日本人の少年がカウンターから飛び出した時だった。

 VIP席まであと数歩と言う所で彼が何かに躓いて倒れ込む。

 オーバーサイズのジャージを着こんだ大男の死体。頭は砕かれ手にはトカレフ。

 間の悪い事にリュドミラはマガジンチェンジの最中。

 実紅が十二ゲージスラッグ弾をセミオートで叩き込みつつ少年の元へ駆け寄る。

 鹿も一撃で倒す弾だが、皮膚を傷つけ血を噴出させる事しか出来ない。

 少年が立ち上がり、リュドミラの背後に駆け込んだその時。

 一瞬、相手が前のめりに倒れ込んだように見えた。しかし違った。前転で実紅に急接近したのだ。

 撃ちまくって押しとどめようとする実紅、リュドミラもマガジンチェンジを追え七.六ニミリ弾をフルオートで叩き込む。

 だが止まらない。

 そして実紅の眼前にそれは現れた。

 長大な丸太の様な右腕を繰り出し彼女を打ち据えようとする。人造大理石を一発で叩き割るあの腕だ。

 間一髪、身をかがめ豊かな黒髪の上をそれが通過する。

 至近距離でスラッグ弾を叩き込むべく銃口を向けようを身を起こした瞬間、信じられない速度で左腕の一閃が彼女に撃ち込まれた。

 車に撥ねられるのと何ら変わらない衝撃。

 実紅の体はカウンター目掛け吹き飛ばされ酒瓶が並ぶバーキャビネットに叩きつけられ、カウンターの陰に消えた。

 フルオートのまま的に弾を叩き込みつつ実紅への接近を試みるリュドミラ。

 機捜隊も店内に侵入し五.五六ミリ弾を浴びせかける。

 しかし、相手はひるまない。EDMも銃声もかき消せるほどの咆哮をあげながら出入り口目掛け前転を開始する。

 撃ちまくり押しとどめようとする機動捜査隊。しかし威力が足りない。

 ついに出入り口にやって来たそれは拳を隊員に叩き込む。

 直撃を喰らった隊員は背後の仲間を巻き込んで階段に叩きつけられた。

 動かない仲間のプレートキャリアを掴んで引きずりつつ撤退を始める機動捜査隊。

 それを魔物は後を追い腕で階段を這い上り始める。


「おい!コラぁ!相手がちゃうやろ!相手が!」


 叫び声に振り向くと、そこには実紅が仁王立ちしていた。

 額をガラス片で切り血を滴らせ、歩き始めると首筋や二の腕などから突き刺さっていた酒瓶の破片をぱらぱらと落とす。

 手にはベネリでは無くグロックG21。

 相手が前転を始める前に猛ダッシュで駆け寄り、床をスライディングして肉薄、繰り出される拳を二発とも交わして足元に滑り込む。

 そして、引き金を続けざまに引き絞り45APC弾を筋肉に鎧れていない下腹部から脊椎や肝臓、心臓目掛け叩き込む。

 全弾撃ち尽くし、スライドが後退したままになったとほぼ同時に、相手はよろけ始め音を立てて床に仰向けに倒れ込む。

 マガジンを交換しつつ帰り血塗れの実紅が立ち上がり、弾を打ち尽くしたHOWA7.62からHK45に持ち替えたリュドミラと並ぶと共に引き金を絞る。

 店内に火薬の燃える匂いが立ち込め、銃声がEDMをかき消した。

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