第23話 絶対に見捨てない
俺の目の前でレイティアが触手攻めに遭っている。たとえモンスターといえど、レイティアの綺麗な柔肌を触るのは許せない。
「あんっ♡ 恥ずかしいっ! アキ君っ、見ないでぇ!」
エロ触手によってレイティアの脚が開かれてしまう。パンツが丸見えだ。
「白、じゃなくて、くそっ! レイティアを離せ!」
つい熱くなって飛び出して行きそうになるが、相手は空を見上げるほど大きい。
「くっ、不用意に近付くと触手に捕まってしまうか。どうする」
その時、アリアの悲鳴が響き事態は最悪の様相を呈してしまう。二人目となる触手プレイの犠牲者が出てしまったのだ。
「きゃあぁああああ! アキちゃぁーん!」
グチュッ! ニュルニュル! ニュチョ!
エロ触手がアリアの体に絡みつき、巨乳が突き出て強調されてしまう。こんなの絶対他の男には見せたくない。
「ああああああっ! 俺のアリアを触るんじゃねぇええええ!」
「また本音が漏れてるわよ」
再びシーラが俺にツッコミを入れる。だが、今は問題発言を気にしている場合じゃない。
「ねえっ、何でアタシだけ捕まらないのかしら? もしかして……クラーケンって巨乳好きとか?」
遠い目をしたシーラがつぶやく。
「シーラ、胸の話は後にしてくれ! あと、その剣を借りるぞ」
俺はシーラの腰に下げているレイピアを抜いた。
「ちょっとアキ、どうするのよ!?」
「俺が二人を助け出す。シーラは魔法で援護を」
「危ないわよ! あんた剣のスキルは無いでしょ」
「仲間が襲われているのに黙っていられないだろ! 俺は絶対に仲間を見捨てない!」
シーラがまじまじと俺を見つめる。
「あ、あんたって、意外と男らしいのね。ちょっと見直したわ」
「とにかく俺が突撃する。シーラは雷槍で敵の目を一点集中攻撃」
「了解っ! でも、当たらないかもだけど……」
シーラの命中率が不安だが、俺はレイピアを構えて突撃する。
(今の俺なら大丈夫なはずだ! 魔族の加護と竜族の加護を受けてステータスは桁違いに上がっている。必ず二人を助けるぞ!)
「スキル!」
【付与魔法・肉体強化】
【付与魔法・魔力強化】
【付与魔法・防御力強化】
【付与魔法・攻撃力上昇】
【付与魔法・素早さ上昇】
【付与魔法・クリティカル上昇】
「よしっ!」
立て続けに付与魔法をかけ自身を強化する。
「これで肉体も強化されたはずだ。攻撃スキルが無くても上昇したパラメーターと強化した体で何とかしてみせるぜ!」
ズダダダダダダダダ!
ズシャッ!
レイピアでクラーケンの触手を切り裂いた。
「よし、攻撃が通ったぞ! 確実に俺は強くなっている」
しかし無数に襲い掛かる触手は、斬っても斬っても切りがない。
「雷槍!」
ズババババッ!
シーラの魔法はクラーケンの目には当たらなかった。ヌメヌメとした表皮でレジストされてしまう。
「くっ! やはり魔法耐性が! 表皮に覆われていない目ならイケると思ったが、的が小さくて難しいか」
俺は頭の中で対処法を考える。
(クラーケンの表皮は魔法耐性があり、軟体のボディには物理攻撃も通りづらい。弱点として考えられるなら、表皮に覆われていない目か口の中か……。しかし、どうやって?)
グワンッ!
「ヤバい!」
一瞬の隙を突かれ、巨大な触手が俺を襲う。
ビタァアアアアアアアアーン!
「ぐわぁああああああ!」
鞭のようにしなりを利かせた触手で跳ね飛ばされ、俺は宙を舞った。そのまま落下したところに、追撃の触手が叩きつけられる。
ビタァァァァァーン! ビタァァァァァーン!
「ぐああああっ!」
皆の声が聞こえる。
「アキ君っ!」
「アキちゃん!」
「アキぃいいっ!」
ビタァァァァァーン! ビタァァァァァーン!
強烈な殴打で意識が飛びそうだ。
「アキ君っ、逃げてくれ! このままでは死んでしまう!」
「そうよ、アキちゃん! 私たちなら何とかするから!」
「アキぃいいいい! 逃げなさいよ! あんたが死んだらどうすんのよ!」
俺を気遣う声が聞こえる。
(ああ……俺はツイている。こんなにも俺を心配してくれるパーティーに入れたのだから。前のような卑劣な奴らとは大違いだ)
ビタァァァァァーン! ビタァァァァァーン!
尚も触手の殴打は俺を襲う。地面にめり込みそうなくらいに。
バフで肉体や防御力が強化されているとはいえ、これ以上攻撃を受けたら意識が飛びそうだ。
(俺は……俺は仲間を見捨てない! グリードたちのような卑劣な裏切り者には絶対にならない! 俺は、大切な仲間を助けるんだ!)
俺は力の限り叫ぶ。
「絶対に逃げない! 俺は大切な女を守るんだ! 絶対に見捨てたりしないぞぉおおおお!」
きゅぅぅぅぅーん♡
「アキちゃぁぁん♡ そんなに私のことを♡」
「アキ君っ♡ お、おお、俺の大切な女とかぁ♡」
「アキ、あんたって男は……」
皆の声が聞こえる。俺は砂浜を転げながら触手殴打を避け続ける。
この際、ダサかろうが何だろうか関係無い。地べたを這いずり回っても皆を守るんだ。
「うぉおおおおおおおおおお! くらえぇええええ!」
ズシャッ!
死に物狂いで放った一撃が、レイティアを捕まえている触手を切断した。
「きゃああっ!」
ガシッ!
レイティアを抱きとめる。
「大丈夫かレイティア」
「あっ♡ アキ君」
「レイティア、狙いを定めるんだ。しっかり構えてから剣を振り下ろせ」
ギュッ!
「あっ♡」
彼女の腰を抱いて落ち着かせる。
狙いをアリアを捕まえている触手へと向けさせた。
「今だ!」
「てやぁああああ!」
ズバババッ!
レイティアの剣は、見事狙い通り触手を一刀両断にする。落ちてきたアリアを俺がキャッチした。
ギュッ!
「アリア、無事か!?」
「アキちゃん♡ ああぁん♡」
ギョエエエエエエエエ!
「危ないっ!」
ドンッ!
食われる!
そう思った時には、俺はアリアを安全な場所に突き飛ばしていた。巨大なクラーケンの口が開き、俺を飲み込もうと襲い掛かる。
(ヤバい! 食われる! これは終わったか……。いや待て! 表皮は魔法耐性と物理耐性だが体の中は弱点のはず!)
「口の中がガラ空きだぜ! だぁああああああ!」
グサッ!
クラーケンの開けた口の中に、思い切りレイピアを突き入れてやった。
「ギョエェエエエエエェェエエエエッ!」
クラーケンは大口を開けたまま苦しみ悶えて仰け反った。
「今だ、シーラ、アリア! 奴の口の中に魔法を叩き込め!」
「了解っ!」
「はいっ!」
俺の合図で二人の魔法が放たれる。
「雷槍!」
ズババババッ!
「火炎槍!」
ゴバァアアッ!
「ギョバァアアッ! ギョエエエエエエッ!」
二人の魔法を口の中にぶち込まれたクラーケンの巨体が倒れた。
俺はすかさず皆に支援魔法をかける。
「よしっ! 【付与魔法・魔力強化】【付与魔法・攻撃力上昇】【付与魔法・クリティカル上昇】! 皆、弱点は口の中だ! 攻撃を」
「よっしゃぁ! 食らいなさい! 大気と大地の精霊に命ず! 古の契約に基づき神雷の雨よ降り注げ! 神罰の雷!」
「よくも愛しいアキちゃんをやってくれたわねっ! 地獄より顕現せし炎は万物敵を灰燼に帰せ! 地獄の業火! 死ねっ! 死ね死ね死ねぇええ! 死んじゃえ!」
ズバッ! ズババババババババッ!
ドンドンッ! ズドドドドドーン!
立て続けに魔法を食らったクラーケンは、プスプスと音を立て表皮が焼け焦げてゆく。今なら物理攻撃が通るはずだ。
「よし、レイティア! 剣技を叩き込め!」
ギュッ!
「あっ♡ アキ君の体温を感じる♡」
「今だっ!」
「愛の竜撃斬! どっせぇええええ!」
ズババババババババババ!
「ギョッエェエエエエエエエエ!」
見事命中した剣技でクラーケンが真っ二つになった。
「やったぁああ!」
「やったわ!」
「やったわねっ!」
喜ぶ彼女たちを他所に、俺は敵に向かい突っ込んで行く。
「まだ終わってない! モンスターの核が健在だ! どりゃぁああああ!」




