用語解説
○組織・用語
・ヴィブムス
未知の金属化合物を主成分とする流動的な身体を持つアメーバ状の金属生物。
あまりにも既知の地球生物とかけ離れた生態から生物学史においては実在を否定され、専門機関フォートレス・ハックでは水銀の古称に由来する「argentuma vivumus」という名称が仮の学名として用いられている。日本ではアメーバの古い和名「飴虫」に因み「銀漿虫」と和訳される。正式に記載された場合、アメーボゾア(アメーバ動物門)に含まれる1綱を本種のみで単型構成すると見られる。
植物の光合成のように熱エネルギーとケイ酸塩から栄養物質を合成する能力があり、アメーバ状の体構造を保ったまま体長2mほどにまで成長する。通常は地下のマグマ溜まりを生息域とし地上に出ることはないが、火山噴火に巻き込まれるなどして意図せず地上に出ると熱エネルギー源の確保が難しいため、周囲の植物などを取り込みつつ休眠状態に入り、タンパク質を消化する触媒物質(炭素生物における酵素に相当するもの)を自己生成することで地上生活に適応する。充分な触媒物質を生成して休眠から目覚めると、そのまま地表に潜伏して大型の動物、特に人間に接触する機会を待ち、生きた人間に接触した場合、対象の肉を消化・吸収し、その後に残った骨格と中枢神経系を、アメーバ体の一部を使って包み込む形で人体を模倣する。消化触媒はケラチンや化学繊維を消化できないため、体毛の濃い大型動物や厚着の人間は消化しきれずに途中で吐き出してしまい模倣に至らない。
・スワンプマン
ヴィブムスの人間模倣体を指す呼称。
人間の赤い血液の代わりにヴィブムスの体液「銀漿」が体内を循環する。その影響で瞳や頭髪の変色、体温の上昇といった身体的特徴は表れるものの、体格や顔つき、皮膚の色や質感はかなり精巧に再現され、外見から人間とスワンプマンを判別するのは(上記の特徴を知らなければ)難しい。
基本的には人間を襲った現場周辺を意思なくうろつくゾンビじみた生活を続けるが、身体機能上は人間と同じ食事で栄養を取って生活することができ、骨格だけでなく中枢神経系も捕食対象のものをそのまま利用するため、脳の状態がよければ言語に適応してヒト社会に紛れて生きることもできる。ただし性格に関しては模倣元からの乖離が大きく、高い知能を得た個体でも元の人間の人格は残らず新たな名前を名乗り始める。また、明確な自我を持つ個体ほど自分のアイデンティティ、特に名前に執着する傾向にある。
有事にはスワンプマン化以前に自分のアメーバ体を構成していた銀漿の余りを操作・硬化させ、全長10m前後の戦闘用外骨格「オステオン」を形成する。
自我を獲得したスワンプマンは通常のスワンプマンよりオステオンによる戦闘能力が高い傾向にあるため、フォートレス・ハックに優秀な戦力としてスカウトされ、戦闘の意思がない場合も他のヴィブムスに普通の人間と誤認され襲われる可能性が高い(ヴィブムスにも人間とスワンプマンを目視で区別する能力はない)ため保護される。明確な自我を持ちながらも人類に敵対する個体はほぼ例外なく強敵となるため警戒される。
・オステオン
スワンプマンが形成する10m級の戦闘用外骨格。日本支部の文書では「鎧骨格」と表記される。
共通して巨大な骸骨に甲冑を着せたような外見をしている。基本的に銀色を中心とした機体色をしているが、名有りスワンプマンの搭乗機体は頭部など一部の装甲の色が搭乗者の髪色・瞳の色に一致し、「色付き(カラード)」という通称が用いられる。
ヴィブムスの体液「銀漿」は異常液体(水→氷のように、凝固すると体積が増える物質)であり、オステオン形成時に濃度や組成の差により様々な構成物に分化する。重度の損傷を受けると、機体の全身に銀漿が循環しなくなることでコクピットに相当する胸部のカプセル状部分以外が過熱されて液化し、スワンプマンを逃がす脱出機構として機能する。
オステオンと操縦者は銀漿を通じて生体的にリンクしており、スワンプマン側の代謝で生み出した熱エネルギーをオステオンの機能で増幅して動力源とする。また、オステオンの操作には複雑な操縦技術を必要とせず、スワンプマンが自身の身体を動かす感覚で操作する。
オステオンには外見や武装の特徴に基づいた識別名(日本支部では和名も割り当てられている)と別に、強力なものから順にA,B,Cの3階級がある。階級はスワンプマンの模倣対象の状態により変化し、模倣時点ですでに死亡していた場合はC級、致命傷を負っていた場合や死後間もない死体を模倣した場合はB級、模倣時点でまだ意識があればA級となる。敵の攻撃が胸部カプセルを貫通するなどスワンプマンの身体を著しく損傷すると、A,B級を獲得したスワンプマンでもオステオンはC級にグレードダウンし、スワンプマンも自我を失う。
・フォートレス・ハック
ヴィブムスの研究と敵性ヴィブムス撃退を行う組織。
対オステオン専門の武装組織としてアメリカで発足、スワンプマンの存在が明らかになってからはヴィブムスの生態解明のため研究機関としての側面を強めていき、日本・イタリア・メキシコに支部を設立した。
組織名は「敵性銀漿虫鎮圧軍(FORces To suppRESS Hostile Argenti Creatures)」の略。戦闘以外の活動が増えた現在のフォートレスは「軍隊」ではないのだが、改名案が出ないまま現在に至る。
STと呼称される人型機動兵器およびオステオンによる戦闘を行う機動部隊(第1・第2)、情報操作などの事後処理を行う対外班、オステオンの出現を監視する観測班、ヴィブムスの生態や性質を研究する研究班、無力化した敵性スワンプマンを隔離・監視する収容班、STや資材の搬出入を担当する輸送班、STの整備やパーツ・武装開発を行う整備班、局員の医務を管理する医療班、食事をはじめとする生活全般のサポートを担う生活班の9つの部署で構成される。
日本支部の所属人数は50人弱。
・サプレストルーパー
フォートレス・ハックが運用するヒト型機動兵器。
「ヴィブムスの生態上オステオンとの戦闘が山間部で発生しやすく戦車や戦闘機では対処が難しい」「オステオンに似た背格好で対話を行った方が相手のスワンプマンを説得しやすい」という理由からヒト型の機体構造を採用されている。
現在までに、防衛戦仕様機「アルビナス」、近接戦仕様機「オーウェン」、狙撃特化機「チェゼルデン」、指揮官用高出力機「キューヴィエ」、新規兵装試験機「ヴェサリウス」の5機種がロールアウトしている。