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蛇足的ないわゆるざまぁパート⑦

居なかったはずだ、と探索隊全員が肝の冷える思いをしつつ、声のした方に視線を向ける。

 そこには。深いしわの刻まれた様子から長い長い時間を生きてきたのだろうと予測できる鬼が一人、咲き乱れる蓮の花中に佇んでいた。


「あなたは…」

公爵が躊躇いがちに声をかける。魔王城に居る鬼、それも人語を解する鬼だというのなら魔王の軍勢の中でも幹部クラスの実力があるに違いない。

「鬼の里の者ですじゃ。」

「鬼の里、とはいったい…」

「鬼の一族が肩寄せ合って住まう隠れ里ですじゃ。…場所はまあ、秘密にさせていただきましょうな。わしは、異変を感じてここに様子を見に来たのですじゃ。」

飄々とした調子で、老鬼は答える。

「…異変ですか。」

「そうじゃな、おそらくおぬしらがここを捜索している理由とも同じやもしれんなぁ。」

顎をさすりながら、老鬼は呟くように言う。探索隊の顔色が変わるのを見て、老鬼は愉快そうに笑った。


「…何か、ご存じでいらっしゃるので?」

公爵は思い切って尋ねた。このまま探索を続けるより遥かに確実に、探している答えに近付けるのではないか。

「つい最近亡くなった魔王はな、鬼の一族の中のはぐれ鬼の息子じゃったんじゃ。」

「いったい何を、」

王太子が老鬼の言葉を遮ろうとするのを、公爵は止めて言う。

「失礼した。話を続けていただけますかな。」

公爵のその言葉に老鬼は頷くと、話しを続ける。


 老鬼が言うことには、はぐれ鬼は人との間に子を儲けたのだと云う。その親子に何があったかは誰も知らぬことであったが、はぐれ鬼が死んだという風の噂が流れた。その前後にふらりと魔王になる前のはぐれ鬼の子が、里の近くに立ち寄ったという話を聞いたことがある。

「その時に、魔王は鬼術を学んだと聞いておりますじゃ。禁呪も含めて学んだと。」

「禁呪、ですか?」

「そうですじゃ。術者の身をも亡ぼすが故の禁呪、…それがつい最近失われたのですじゃ。」

「そ、れは…」

探索隊はそれぞれ顔を見合わせた。断言は出来ないが、まるで聖女の術が失われたのと似ているのではないかと。


「…人の国でも、やはり何かが失われましたかな? ああ、いや、詳しくお話しされる必要はありませんですじゃ。記憶から失われてしまったものを説明するのは、難しいものですからな。」

「もし、ご存じでしたら教えていただきたい。なぜこのようなことになってしまったか、失われたものをどのようにしたら元に戻せるのかを。」

公爵の問いに、老鬼は緩く首を振った。

「推測でしかありませんがな。おそらくその辺りに纏わる術の全てが失われているようなのですじゃ。己の命に結び付けて、全てあの世に持って行った。そんな感じでしょうかな… わしら鬼は、急に記憶に穴が開いたのを不思議に思いましてな。それで調べに来ただけですじゃ。無くなってしもうたものは仕方が無い。まあ、禁呪はもともと使うべきでない術でしたじゃ。特に困ることもありますまい。では、わしはこれで失礼しますな。」

老鬼はそう言い残して、見た目に反して身軽な身のこなしでその場を後にした。公爵たちの制止の言葉もどこ吹く風で、あっという間に姿が見えなくなった。


「公爵、どういたしましょう?」

「…まずは報告だ。」

苦虫を噛み潰したような顔で公爵は答えた。これほど先の見えない状況は初めてだ、と唸る。おそらく鬼の隠れ里を探すことになるだろうが、あの老鬼の話しを聞く限りではそれをしたところで何の解決にもならない可能性が高い。聖女の召喚はもう二度と出来ない。

 そうだとするならば…

公爵は、ふてぶてしい態度を崩さぬ王太子を一瞥して深い溜め息を吐いた。

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