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蛇足的ないわゆるざまぁパート⑥

 いくつかの部屋を探索し、書庫に辿り着いた。その蔵書の多さに圧倒されつつ、公爵は書物をしらみつぶしに調べるよう指示を出す。

 そうして自らも書庫内を調べて回るうちに、

「これは…?」

打ち捨てられるように在った、ぼろぼろの紙の束に視線を奪われた。公爵が見事だと舌を巻くほどの書庫に似つかわしくない、書き損じの手紙のようなそれに公爵は手を伸ばした。インクが所々掠れているそれ。見たこともない文字だと判断した公爵は、探索隊の中でも博識の学者を呼び、解読するよう命じた。


「…もう随分と昔に滅んだ国の公用語のようです。日記のようですが…」

一通り目を通した学者が言い淀む。

「どうした。」「ところどころ掠れているので、正確さにかけることをご承知おきいただけますか。」

公爵は学者の言葉に頷き、通信の術が使える魔導士を呼ぶ。

 王都と通信が繋がったことを確認し、紙切れの内容を読み上げるように公爵は指示を出す。


『ただ、ただ、ぼんやりとした日々を過ごすうちに、ふと、何か面白いことをしてみようという気になった。』

と、学者は読み上げる。断片的ではあったが、少なくとも魔王と聖女が水に成り果てたのは、鬼の禁呪故だと理解できた。


「つまり、あの時の聖女は既に死人であった訳か…」

通信の術の向こう側で、国王の苦々しい声がする。今さら何を言っても始まらないが、聖女を攫われたことがそもそもの失態だったのだ。

 おそらく魔王は、攫った聖女をその場で殺し、鬼の禁呪を使ったのではないか。

重い沈黙が支配する。それを破ったのは、王太子だった。

「そうだとして、一体、なんだってこんな回りくどいことをしたんだ? 自分も死ぬかもしれないのに?」

良くも悪くも空気を読めていない一言は、まだ肝心なことが明らかになっていないことを思い出させた。

「そう言えば、聖女の術が使えなくなった原因がまだであったな?」

「そちらも鬼の術やもしれませんね。」

「そうだな、鬼の術、禁呪について記されていると思われる書物を優先に調べてくれ。」

公爵は一度通信を切断させると改めて指示を出した。


探せど探せど、それらしき記述は見付からず、結局書庫にある全ての書物を総当たりで読み漁ったがあの紙切れほどの収穫は無かった。

 あとは、魔王の私室がまだだったと、仕方なしに書庫を後にする。書庫を後にし、魔王の私室へ向かう途中、中庭が視界をかすめた。思わず視線を向ける。


 一面が、薄桃色に染まっていた。

「あれは… 先ほど通った中庭ではないのか?」

鬱蒼と茂っていた黒い花と深い緑の葉は、一体どこに行ったのだろうか。蓮の花が一面に咲き乱れどこか別の場所に紛れ込んだような錯覚に襲われる。

 公爵始め探索隊の隊員たちはざわめく。そうして吸い込まれるように中庭に向かった。


「どちら様かね?」

不意に聞き慣れぬ声が、蓮の花の向こうから聞こえた。

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