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蛇足的ないわゆるざまぁパート⑤

 もちろん、何もないというのは目視でのことだ。何か、魔力の残滓のようなものでも僅かに残っていれば。それは公爵だけでなく、同行した魔導士も同じ気持ちでいた。藁にも縋る思いで玉座を中心に調査を進める。

『せめて、もう二、三か月早く調査が出来ていたら。』

とは、魔導士たちの誰もが考えていることだ。苛立ちが募るのは、何も目に見えた結果が無いからだけではない。王太子たちの悪びれることもない様子が、余計に神経を逆撫でるのだ。

『初めから包み隠さず報告すればよかったものを。』

そうすれば、すぐに調査に来れたはずだ。聖女召喚の術も、失われずに済んだかもしれないというのに。

 不満たらたらであったが、公爵が何も言わない以上、彼らもまた何も言えなかった。王太子たちに対する公爵の態度は、冷ややかなものだったから王太子たちの味方ではないはずだ。おそらく、証拠が出そろうまでは何も口にするつもりはないのだろう、とそれぞれ勝手に解釈して作業を進めるのだった。


「ご報告いたします。」

「うむ。」

「玉座周辺から、液体が流れ出たと思われる範囲を調査いたしましたが、魔力の残滓すら確認できませんでした。」

予測できた結果であったが、やはり肩が落ちる。口を開こうとする王太子を制止して、公爵は指示を出す。

「時間が経ち過ぎているのか、魔王の目論見かは判断付かぬな。城内を探索する。書物は勿論だが手記のようなものも残さず確認するように。少しでも手掛かりになりそうなものがあれば報告するように。」


「待て、城内なら探索済みだ。」

流石に業を煮やしたのか、王太子は苛立たし気に公爵の指示に物申す。

「…では、その探索の際に何が見つかりましたかな。まさかとは思いますが、凱旋時の宝飾品や武具の類とは仰せになりませんよね。」

「そ、れは…」

「…。今回はそのようなものを探しているのではありません。おそらく貴方方が歯牙にもかけなかった書物の中身が肝要なのです。」

そう言うと、公爵自らも城内奥へ歩を進めるのだった。


 探索隊のメンバーを三隊に振り分けそれぞれに探索場所を指示する。

探索を進めていくと、中庭に辿り着いた。手入れがされなくなったからだろう、草花は鬱蒼と生い茂っていた。公爵は、ふと足を止め庭の中央に位置する池に視線を落とした。

 蓮の花が咲いている。深い緑か黒い花に染まるこの中庭で薄い桃色に色付く蓮が、やけに印象深い。


 蓮の異質さを感じつつ、公爵は書斎か書庫はないかとさらに歩を進めるのだった。

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