51. 5日目の振り返り
5日目:
・犠牲者:磯谷有姫(人間), 犬飼陽子(妖狐)
・処刑:山崎信一(人狼)
・占い:田原葉月
処刑投票:
・田原葉月 → 山崎信一
・天童真理夫 → 山崎信一
・山崎信一 → 大神満
占い先希望投票:
・田原葉月 → 田原葉月
・天童真理夫 → 龍造寺猛虎
※今までの予想が当たっていることがほぼ確定したため、龍造寺猛虎の投票先は割愛。
「5日目。有姫さんが狙われた日。君たちなら誰を狙う?」
「えっと、あの日残ってたのは満くん、有姫ちゃん、草野さん、山崎さん、神阪先生、天童さん、龍造寺さん、犬飼さんでしたっけ?」
「そうだな。2人が人狼なら誰を狙う?」
「わたしは草野さんを狙います。」
「俺…か。」
「はい。草野さんはまとめ役だから。まとめ役がいなくなると、まとまらなくなるんじゃないか、と思って。」
「ここは迷うところですけど…。」
天童真理夫はそう前置きをして続きを口にした。
「神阪先生を狙いますね。」
「え?だって、神阪先生を殺したら、妖狐は呪術死しないんじゃ…。」
直ぐに田原葉月が矛盾点を指摘する。
天童真理夫は深くため息をついた。
「そうなんだよね…。神阪先生の強襲に成功した場合、妖狐を占うことができないから、妖狐は呪術死しない。だから、翌日の処刑裁判で妖狐に投票するしかなくなる。
1ターンだけ処刑裁判を回避することがてきるべ?」
それに、と天童真理夫は続けた。
「妖狐が呪術死しないと、本物の占い師を確定できなくなるから、上手くいけば、磯谷くんが本物の占い師だと思わせることもできるべ?」
「確かに…。」
草野克則も田原葉月もそんな考えがなかったようだ。ただただ驚いた表情を見せた。
しかし、天童真理夫の顔が少し曇った。
「但し、強襲に失敗した場合は、妖狐は呪術死するだけ。人間を減らすことはできない。」
「そうなると、処刑裁判を回避することもできないですね。」
「前々日に狩人が磯谷くんを守ったことを考えると、かなりリスクがあるな。
磯谷くんが守られた後に処刑されたのは金田くん。彼がもし狩人なら真っ先にカミングアウトするだろう。」
「そうですね…。」
「それに、その後人狼の被害に遭った石原先生は共有者。
このときは確実に狩人は生きていると考えるべきだ。強襲に失敗する可能性が高い。」
「そうなんですよ…。1つのアイディアであって。僕が人狼だったら、もう1人の人狼に提案してみます。
多分却下されますけど…。」
天童真理夫は弱った顔を見せつつも、更に話の続きがあった。
「田原さんが人狼だった場合、有姫さんを狙うことによって自分への疑いを避けることもできます。神阪先生を狙うのにリスクがあれば、有姫さんを狙うのもアリかな。」
「なっ!何言ってるんですか!?
わたしが有姫ちゃんを襲う訳ないでしょ!」
田原葉月が憤慨する。
「天童さんこそ、本物の人狼で、山崎さんに今の案を却下されたんじゃないですか?
そして、最終日に満くんかわたしが残ることを予想していた。どちらかに罪をなすりつけるための伏線として有姫ちゃんを襲ったんですね?」
「いやいや、1つの可能性を示しただけさ。おれは人狼じゃないから、田原さんが人狼だってことを草野さんにアピールしなきゃいけない。
君も同じ立場だけど。」
天童真理夫は至って冷静だった。
田原葉月はムッとしている。
「何で有姫さんだったんだろうな…。」
草野克則がポツンと呟いた。
「疑いを逸らすためしか考えられないけど…。」
田原葉月の方を見ながら、天童真理夫が小声で言った。
(疑いを逸らすため…。本当にそうだろうか?)
「これはわたしの仮説ですけど…。」
そう前置きした後、田原葉月が口を開いた。
「周吾くんは、一度、妖狐の強襲を回避しました。占い師候補が2人いた中で、狩人は周吾くんを守った。
もしかしたら人狼は、有姫ちゃんは狩人の可能性があると考えたんじゃないでしょうか?」
「なるほど。確かに。その可能性はあるな。」
草野克則が同意する。
「あの時点では、ほぼ確実に狩人が生きているとわかっていた。
狩人候補を狙ったとしても、何ら不思議はないな。」
「ちょっと話が強引じゃないっすかね?」
「まぁ、可能性がある、という程度で、確実に有姫さんが狩人とは言えないが…。他の人よりは可能性が高い、という見方もできなくはない。」
「わたしじゃなくても、この日、有姫ちゃんを狙う理由があるということです。天童さん?」
厳しい目つきでジッと睨む田原葉月を見て、天童真理夫は困った表情を浮かべた。
何で狩人は磯谷周吾を守ったのか。
理由ははっきりとはわからないが、磯谷有姫が狩人で、兄を守った可能性は、なくはないな、と草野克則は思った。
そして、ふとあることに引っかかった。
しかし、敢えてこの場では触れず、最後まで様子を見ることにした。
もしかしたら、人狼の正体を暴くことができるかもしれない。
人狼にバレないよう、失望感を出しながら、草野克則は話を進めた。
「この日の処刑裁判は2人とも山崎に投票してるな。」
「龍造寺さんの説得に納得しましたからね。」
「わたしも。」
流石に全員の疑いに逆らって他の人に投票はしなかった…か。
「この日の処刑裁判に関しては、特に疑問な点はない。占い投票に話を移したい。
この日、田原さんは自分自身に、天童くんは龍造寺さんに投票した。」
「今になって思うと、田原さんのこのときの行動はおかしいべ?」
「何でですか?」
「だってさ、このタイミングで自分を占い対象にするってとは、どう見ても自分で自分を占い対象にしておくことで、人間感を出すのが狙いだべ。そして、このタイミングで占い師を襲うのは、人狼じゃないとできないべ。」
「でも、このときだって、まだ狩人が生きてる可能性がありました。
わたしが人狼なら、そんな危険は冒しません。」
「じゃあ何でこのとき、自分に投票したんだ?」
2人の議論に草野克則が割って入る。
「占い対象になると、人狼から狙われやすくなる、と周吾くんが言ってたから。」
田原葉月は下を向いたまま続きを話した。
「信じてもらえないかもしれないけど、満くんを守りたかったんです…。
それに、あのときのメンバーは草野さん、神阪先生、龍造寺さん、天童さん、満くん、わたし。
次の日の処刑裁判の対象になるのを避けたかったのもあります。
そういう意味では、満くんに守ってもらった、と言うか…。」
「確かに。そのメンツだと、その日に狙われる可能性が高いのは、俺、神阪先生、龍造寺さんだ。
自分を守る、という意味では納得がいく。」
流石、最終日まで残るだけあって、人狼は賢い。やはり、簡単にボロは出さない。
「天童くんはどうして龍造寺さんに投票したんだ?」
「龍造寺さんを人間と確定したかったからっすね。」
「さっきは龍造寺さんの説得に納得したって言ってましたよね?」
「それとこれとは全く別の話さ。
何も、龍造寺さんを疑っていたから投票した訳じゃないんだよ。」
間を置かずに、天童真理夫は話し出した。
田原葉月の鋭い指摘にも、天童真理夫は飄々としている。
草野克則には、まるでその指摘を待っていたかのようにも見えた。
「犬飼さんが呪術死した時点で、神阪先生が占い師ってことはほぼ決まった。
そして、神阪先生と龍造寺さんの出した金田くんの結果が人間だった。
人狼が正占い師の結果に便乗していた場合、取り返しがつかなくなるべ?
それで、龍造寺さんを占いたいと思った訳さ。」
「龍造寺さんは山崎さんが怪しいと言い出した張本人ですよ?誰も山崎さんを疑ってると発言していないときに。
人狼が人狼を処刑裁判にかけたことになりますよね?」
「あの時は、その可能性を見過ごす訳にはいかないと思った。だって、そこを見落としたら完全に終わりだ。」
「あの時点で、人間と確定していない人は、龍造寺さん、天童さん、満くん、わたし。
山崎さんの処刑を提案した龍造寺さんを占うよりは、天童さん、満くん、わたしの誰かを占うのがベストだと思いますけど…。」
「いや、オイラはそれでも龍造寺さんを人間と確定したかった。あの時点で人狼が2人残っていたら、、、誰かを人間と確定したいという動機で投票できる余裕があったのは、あの日までだったからね。」
烏の鳴き声が森の中に響いた。
それはまるで、あと少しで時間だ、と警告しているようだった。




