47. 1日目の振り返り
「今日の投票だが、田原さんは天童くんに、天童くんは田原さんに投票するだろう。
はっきり言って、俺がどちらに投票するかに掛かっていることは、俺自身も身に染みてわかっているつもりだ。」
大きく深呼吸をする。
こんなとき、煙草があればな、と草野克則は思った。
「かなり気力を要するが、初日から振り返りたいと思う。2人の行動と、山崎や磯谷くんの行動に焦点を当てながら、見ていきたい。」
天童真理夫は力強く、田原葉月は力なく頷いた。
しかし、どちらの目も、自分は人狼ではない、と訴えていた。
「まず、1日目。犠牲者や各自が誰に処刑投票したかを整理させてくれ。」
草野克則は、龍造寺猛虎に人狼の可能性があることを敢えて2人に伏せることにした。
1日目:
・犠牲者:田中次郎(人間)
・処刑:真目正義
・占い:磯谷周吾(人間 / 狂人被疑), 神阪甲太郎(人間 / 占い師)
処刑投票:
・田原葉月 → 真目正義
・天童真理夫 → 金田一
・山崎信一 → 真目正義
・(龍造寺猛虎 → 金田一)
共有者カミングアウト vs 占い師カミングアウト:
・田原葉月:共有者カミングアウト
・天童真理夫:共有者カミングアウト
・山崎信一:占い師カミングアウト
・(龍造寺猛虎:共有者カミングアウト)
「まず、最初に田中が狙われた。」
「えぇ。そうですね。」
「そもそも、なぜ田中だったんだろうか。」
「何とも言えないっすけど、能力を与える力を持つ張本人だからじゃないっすか?
もしオイラが人狼でも初日は田中さんを狙いますね。霊媒師とわかってて狙わないのは気持ち悪いっすからね。」
(自身が人狼だったら、と言う話を自らできると言うことは、天童くんはやはり人間か?)
「田原さんはどうだ?もし田原さんが人狼でも、初日は田中を狙うか?」
「私が人狼だったら…ですか。そうですね…。私だったら周吾くんか神阪先生を狙います。
初日は狩人が草野さんを守ることになってましたから、占い師を狙うチャンスなので。」
「いやぁ、でも初日は占い師を狙いづらいんじゃないっすかね。人狼が狂人が誰かわかっている場合はそれもできるかもしれないけど。わからない場合は狂人を喰ってしまうことになるべ。」
「わからなかった場合で、例え狂人を狙ってしまったとしても、正占い師に疑いをかけられるので、その後の議論が進めやすくなると思います。」
「あぁ、なるほど。確かにその通りだね。」
草野克則の意図しないところで、田原葉月と天童真理夫の口論が始まっていた。2人とも処刑されないよう必死だ。
(田原さんが言うことも最もだ。もし田原さんが人狼だった場合、初日の被害者は田中じゃなかった可能性がある?実際に田中が狙われたと言うことは、天童くんが人狼か?)
「ちなみに、1日目は真目さんが処刑され、磯谷くんと神阪先生がお互いを占った。」
「占い師カミングアウトか共有者カミングアウトで投票しましたよね。」
「そうだ。山崎は占い師カミングアウトに。田原さんと天童くんは共有者カミングアウトに投票している。」
(龍造寺さんは共有者カミングアウトに投票している。人狼が2匹とも共有者カミングアウトに投票するメリットはない…。やはり山崎が人狼の可能性が高いか。)
「わたしは共有者カミングアウトの発案者なので、もちろん共有者カミングアウトに投票しました。
人狼や妖狐に占い師が誰かという情報を渡すべきではないと考えたからです。
共有者であれば、確実に人間とわかりますし、その人を中心に話をまとめることができ、人狼に都合がいいようリードされることもありません。」
「確かに。その通りだと思うよ。オイラもその意見に賛成して投票しました。」
「もしわたしが人狼だったら、共有者カミングアウトの発案はしません。発案しなければ、占い師が誰かわかるから。
他の誰かが共有者カミングアウトを発案したとしたら、人狼2人のうち、1人がそれに乗っかることはあるかもしれませんが。」
だから、と田原葉月は続けた。
「わたしは人狼じゃないです。」
大神満が殺されたことによるショックを隠し、真剣な目で訴えていた。
それは、天童真理夫に対する宣戦布告でもあった。
「オイラだって人狼じゃない!
もしかして、キミは人狼だっていう疑いを逸らすために発案したんじゃないのか?
そもそも、占い師カミングアウトが悪みたいにキミや大神くんは言っていたが、オイラは正直、占い師カミングアウト派の人たちが言ってることも、理解できる。
占い師がカミングアウトしてないと狩人は占い師を守れないし、処刑裁判にかけてしまうリスクがあるからね。
どっちも人狼を退治するための発案だべ。」
「人狼が、誰が占い師かわかる機会をみすみす見逃して、共有者カミングアウトを発案すると言いたいんですか?」
「その可能性もある、と言いたい。だって、占い師を処刑裁判にかけるチャンスが出てくるべ!」
「それは詭弁です!」
「まぁ、落ち着いてくれ。2人の言い分はわかった。」
恐らくこれ以上2人に議論させても、ここから人狼の正体に発展することはないだろう。
草野克則は話題を変えることにした。
「この日は真目さんが、処刑裁判に掛けられた。
田原さんは真目さんに。天童くんは金田くんに投票している。」
草野克則は田原葉月と天童真理夫にそれぞれ投票理由を尋ねた。
「真目さんの投票の拒否の仕方があまりに不自然に感じたので、投票しました。
正直なところ、金田さんも怪しかったですけど、金田さんはバイトの先輩でもあるし、投票しづらかったんです…。特に最初の投票だったので…。」
「金田くんは自分の意見を二転三転させていた。大神くんもそのことを指摘していたが、オイラもかなり怪しいと思って投票しました。」
どちらも、最もな理由だ。
少しでも、人狼の正体に近づくことを願ったが、人狼はなかなかボロを出さない。
ふと空を見上げる。
そこには、この状況に似つかわしくない青空が広がっていた。




