40. 処刑投票(5日目)
言葉に詰まる山崎信一をよそ目に、龍造寺猛虎は口を開いた。
「俺が言いたかとは、山崎さんと犬飼さんの2人とも妖狐が磯谷くんを襲ったということに対して、違和感なく話ば進めとったけんですね…」
龍造寺猛虎は一呼吸置いた後、核心に迫る自身の意見を述べた。
「つまり、山崎さんは実は人狼で、一昨日の夜、石原先生を襲っとったけん、磯谷くんが襲われていることを朝知った。
身に覚えがない被害者が出とるけん、勿論それは妖狐の仕業だろうと考える。」
「な、何を?」
「犬飼さんは山崎さんの言う通り、妖狐だけん、『妖狐が磯谷くんを襲ったこつ』に何の疑問も浮かばんで、自然と受け入れとった。」
「それは違う。」
否定する山崎信一をよそに、龍造寺猛虎は尚も続けた。
「だけん、山崎さんが怪しかと思います。おいは山崎さんに投票するけん。」
「確かに。説得力があるな…。」
神阪甲太郎も納得した。
「山崎。俺【草野】も龍造寺さんと同意見だ。お前が磯谷くんを襲った犯人が妖狐だと決めつけたことに、違和感を覚えた。
それに、お前は俺と磯谷くんの部屋の現場検証も行ったはずだ。青みがかった黒い毛も見たはず。
司会進行のため、すぐには発言できなかったが、龍造寺さんが気づいてくれた。」
お前だったのか…、と草野克則は呟いた。
「ち、違いますよ、草野さん。」
「俺【草野】だって、可愛がってきた部下を処刑したくはない!
ただ…俺【草野】はここに来た時の自己紹介の時のお前の発言にも違和感があった。
全員が、あたりが真っ暗になって気付いたらこの村にいた、と言っている中、お前だけは病院に向かっている途中で気付いたらこの村にいた、と話していた。」
「それは、説明を省いただけで、病院に向かっている途中で、あたりが真っ暗になって…」
「実際、この村に誘われる際、人狼が辿る道と人間が辿る道が違うんじゃないか?お前は、人間がどうやって誘われるかを知らなかった。」
「だから、違うんです!」
「俺【草野】が自己紹介の最初にお前を指名しなかったら、このことには気づかなかったかもしれないな…。」
それに、と草野克則は続けた。反論する山崎信一の言葉は届いていないようだった。
「お前が犬飼さんを疑うタイミングは不自然だ。」
「え?」
「2日目、被害者が出なかった段階では、狩人が人狼から被害者を守った、と考えていたが…。恐らく、そうじゃなかった。」
「え?どういうことですか?」
「2日目、人狼は妖狐を襲ったんじゃないだろうか?だから被害者が出ていない。
狩人が守った場合でも、磯谷くんのように軽傷を負うんじゃないだろうか。
田中の霊能力が強くないんだろうな。」
草野克則が進行役を逸脱して自分の意見を言うのだから、余程確信があるのだろう。
皆が黙って話に耳を傾けた。
「そのときから、妖狐の正体を知っていたお前は、処刑裁判にかけたり、占い対象として提案するのを我慢して、人間を喰ってもらうことにした。」
「俺【山崎】が人狼なら、気づいた時点で占ってもらうよう提案しますがね?だって人狼も喰べられちゃう訳でしょ?妖狐に。」
「俺【草野】も最初はそう考えたが、人狼らしき人物が見つからない現状を考えると、妖狐は占い師を狙うはず。それで、妖狐が人狼を喰べるリスクを覚悟で提案するのを1日遅らせた。」
「そんなリスク、誰が負うんですか?」
「この作戦がうまく行けば、占い師を殺してもらえるかもしれないし、狩人が生存してるか確認もできる。
お前は多少のリスクを取っても最善の結果を求める男だ。今まで捜査を一緒にやってきたからわかる。」
よく無茶してたよな、と草野克則は付け加えた。
「昨日の朝、2人が被害に遭った状況と、占い師候補の磯谷くんが狙われたこと。この2つを繋げたとき、人狼は妖狐の存在をその前に知っていて、1日泳がせているかもしれないと思った。だから、『誰かに妖狐の疑いをかける人物』が現れるだろうと予想していた。
そしたら、山崎。お前だった…。」
山崎は黙って俯いている。
「今日の話し合いはここまでだ。何か意見がある人?」
「俺【山崎】じゃない!俺は人狼じゃない!なぁ、誰か助けてくれよ。俺じゃないんだよ!」
山崎信一が声を荒げる。
残念だ、と言い残し、草野克則は投票した。
「俺【山崎】は人狼じゃない!」
叫び続ける山崎信一の声は12時きっかりに途切れた。
【5日目】各自の処刑投票結果:
山崎信一:6票
大神満:1票
山崎信一 → 大神満
神阪甲太郎 → 山崎信一
天童真理夫 → 山崎信一
大神満 → 山崎信一
田原葉月 → 山崎信一
草野克則 → 山崎信一
龍造寺猛虎 → 山崎信一




