34. 霊能力者カミングアウト
―9時30分。
全員が広場に集まった。
「昨夜、石原先生がやられました。」
「あの…。シューゴの部屋も襲われた跡がありました。」
「そうなのか?」
「えぇ。暗くてはっきりとは見えなかったんですけど、3m程の黒い影…狼が現れて、でも、金縛りに合ったように動けなくて…。
気を失って…。気づいたらミツルが肩を揺すってました。」
磯谷周吾は昨夜の出来事を皆に話した。
「貴重な情報をありがとう。有姫さんの占い結果を教えてくれ。」
「はい。ユキは人間です。」
「なるほど。神阪先生の結果はどうでした?」
「有姫くんは人間やったで。」
磯谷有姫は下を向いたままトーゼンよ、と呟いた。
「昨日の金田くんの結果についてだが、磯谷くんと神阪先生の結果が異なっていた。」
誰かがゴクリ、と唾を飲んだ。
「霊能力者に名乗り出てもらおうと思っているが、反対の人、いるか?」
「今まで通り、人狼だった場合だけ名乗り出るのはどうすかね?」
「霊能力者がもう既に殺されている場合、金田くんは人狼だったとしても、人間と我々が理解してしまうことになると思うが…。」
「あぁ。確かにそうっすね…。」
草野克則の一言に天童真理夫も納得した。
「他に反対意見なければ。」
天童真理夫の他に、反対意見を提案する者はいなかった。
「では、霊能力者の方。生きていたら、昨日の金田くんの結果を教えてくれ。」
「金田くんは人間だったばい。だけん、磯谷くんは嘘ば付いとる。」
周囲が騒ついていたにも関わらず、その声は鮮明に聞こえた。
龍造寺猛虎が、大きく右手を挙げていた。
「え?シューゴが?」
「そんな訳はない!龍造寺サンこそ嘘を付いてる!」
「おいは嘘なんかついとらんばい。」
「遂に占い師のボクに濡れ衣を着せようとしてきたか!」
「何ば言いよるとね?おいは本物の霊能力者ばい。」
「龍造寺サンはボクとユキ、ミツル、ハヅキちゃんの4人を疑っていた。ボクらを狙いたい理由でもあるんですか?」
「なかよ。おいは全員ば平等に見とるけん。ばってん、霊能力で、金田くんは人間って結果が出たけん、人間って言ったとばい?」
「そもそも、昨日の石原先生の雰囲気だと、石原先生自身が霊能力者なんじゃないですか?
誰もわからない中、一人だけ霊能力者がいると確信していた。それは、本人が霊能力者だからだ!
石原先生が殺された今、ホンモノの人狼が、霊能力者になりすましてるんじゃないんですか?龍造寺サンっっ!」
「おいが人狼だったら、霊能力者が生きとるかもしれんこの状況で名乗り出たりせんよ。名乗り出るにしても、もう少し様子ば見るばってんね。」
2人の言い争いに、皆困惑していた。
が、草野克則が口を挟んだ。
「実は、石原先生は、もう一人の共有者だ。」
「え?霊能力者じゃ…。」
磯谷周吾の疑いの言葉を草野克則が否定する。
「そう。石原先生は霊能力者じゃない。」
「じゃあ、何で…?石原先生は霊能力者がわかったんですか?」
大神満がたまらず、草野克則に詰め寄る。石原兼続本人がいないことが歯がゆかった。
「昨日石原先生に確認したんだが…。実は石原先生にも霊能力者が誰なのかわからなかったが、人狼が2人残っていることを確信していたらしい。」
「え?」
「あの時点で処刑裁判にかけられたのは、真目さんのみ。要は真目さんと金田くんが人狼だった場合のみ妖狐の勝利になる。」
「オイラはそこを気にしてたっす。」
「真目さんは元々妖狐の容疑が掛かっていたわけで、人狼ではない。」
だから、あの時点で人狼が2人残っていて、金田くんが人狼だった場合でも妖狐が勝つシチュエーションにはならない。」
「確かに…。」
「石原先生は、霊能力者をワザとチラつかせて人狼側の反応を見る作戦に出た。
そして、石原先生を霊能力者と思い込んだ人狼は、石原先生を狙った。」
「石原先生は、自分をワザと人狼に狙われる対象にしたってことですか?」
「あぁ。そうだ。」
「そんな…。」
(だから、ゆきちゃんは今日は狙われないって…。そういうことだったのか…。)
「人狼が石原先生を霊能力者と思って襲ったのは間違いないだろう。
だた、考えてみてくれ。霊能力者を狙うのは不自然じゃないだろうか?」
草野克則の疑問に磯谷周吾は余裕がなくなった様子を見せた。
「人狼が能力者を狙うのは普通ですよね?何かおかしなところがありますか?」
「確かに人狼が能力者を狙うのは普通のことだが…」
草野克則は一呼吸おいた後、続けた。
「なぜ霊能力者だったんだろうか?」
時刻はいつの間にか10時30分を回るところだった。




