32. 不安な夜と4日目の朝
帰り際、磯谷有姫がずっと俯いていることに、磯谷周吾が気づいた。
「ユキ。大丈夫か?ごめんな、結局占い先を変えれなくて…。」
「お兄ちゃん…。アタシ、怖いよ…。」
磯谷有姫は顔色が悪く、薄っすらと涙目になっていた。
「ユキ…。」「有姫ちゃん…。」
「大丈夫。石原先生の言葉を信じよう。明日、絶対に人狼と妖狐を探し出す。」
「そうだね…。みんな、頼むよ。」
磯谷有姫は涙を拭いながら深く頷いた後、にっこりと笑った。
それは、不安を隠すような作り笑顔だった。
磯谷周吾は磯谷有姫の肩に手を置き、大丈夫、ともう一度力強く言った。
大神満も田原葉月も、顔を見合わせて頷いた。
気づけば、辺りは薄暗くなっていた。
磯谷有姫は不安を紛らわすかのように、小石を蹴った。
小石は何処か遠くまで転がり、草むらの中に消えてしまった。
何か重要なものが隠れてしまったかのように。
この日も、大神満はなかなか眠りに就けなかった。
(石原先生が言ってた霊能力者って誰だろう?本人と石原先生しかわからないって…。誰だ?
僕はわからなかった。他の人もわからなかった。だけど、石原先生は霊能力者がいることを確信している…。
もしかして、石原先生本人か?
人狼は誰を狙うんだろう?ん?妖狐は3日に1回人か人狼を喰べるんじゃなかったっけ?
占い師を狙うはず…。シュ、シューゴが危ない!
だから、石原先生は今日はゆきちゃんは狙われないって…。
あんまりだ…。
シューゴ生きててくれ!)
その日、大神満は夢を見た。
(小さい頃、シューゴと遊んでいる夢。小さい頃よく行った公園で走り回っていたら、シューゴだけが大きくなって。僕は小さいままで。
シューゴに追いつけなくなって…シューゴの姿が消えてしまった…)
ところで、大神満は目覚めた。
「シューゴ!!」
大神満はすぐに磯谷周吾の部屋へ全速力で駆けつけた。
風は止み、朝日が少しずつ登り始めていた。
磯谷周吾の部屋に着くと、部屋のドアが壊れていた。
すごく嫌な予感がし、部屋の中に入った。磯谷周吾はベットの上ではなく、床の上にうつ伏せに倒れていた。
「シューゴ!!シューゴっっ!!」
大神満は磯谷周吾の肩を揺すった。
何回呼びかけたことだろう…。
磯谷周吾は目を覚ました。
「ん?ミツル?」
磯谷周吾は無傷だったが、ドアも壊れ、窓ガラスは割れ、辺りに青みがかった毛が散乱していた。
「何かあった?」
普段と変わらずマイペースな友の姿に大神満は胸を撫で下ろしたと同時に、震えが止まらなかった。
「ユキは?」
「まだ見に行ってない。」
「行こう。」
大神満は深く頷き、磯谷周吾と共に、磯谷有姫の部屋に向かった。




