29. 占い先投票(3日目)
全員ぐったりしていた。
目の前で人が亡くなったのだから、当然だ。
「占い先も皆で話し合いたいんだが、どうだろうか?」
草野克則の提案に磯谷周吾や大神満が賛同する。
「それはいいと思います。」
「僕も。賛成です。」
「占い先だと話し合うのが少し楽です。何か、穏便に済みそうで。」
「そうだな…。」
田原葉月の言葉に草野克則が頷いた。
「オイラを占って欲しいんですけど…。オイラを人間と確定してもらいたい。」
天堂真理夫が口を開いた。
「天童さん本人が希望してるし。いいと思います。」
「そうだな…。特に異論はないか?」
犬飼陽子が賛同し、草野克則が決を採ろうとしたときだった。
「悪かばってん、おいは違う人を占った方がよかと思うとります。」
占い先は天堂真理夫で決まりかけたその時、龍造寺猛虎が話し出した。
「今は目立っとらんばってん、今後、身内ば疑わなんいかんときが来るのは間違いなかです。
その時が来てから占いば始めると遅かけん、大神くんたちの身内ば占っといた方がよかと思っとります。どぎゃんですか?
具体的には、大神くんか田原さんか妹さんか。
もう磯谷くんは占っとるけん。」
「それもそうだな…。」
「大神くんを占い先にしたらどうだろう?」
「え?僕ですか?」
「あぁ。大神くんはネットでジンローをやっていただけあって発言力が強い。
早めに人間かどうか確定しておきたいと思ったんだが。」
山崎信一の一言に大神満は返事をした。
「いいですよ。全然占ってもらっても構いません。」
「ちょっと待ってください。それはちょっと消極的だと思いますよ?」
「え?」
誰もが大神満を占い先で同意すると思われていた中、石原兼続が口を挟んだ。
「私【石原】は、占い師カミングアウトに賛成した人の中に、人狼と狂人、妖狐がいると考えています。」
僕と同じ考えだ、と大神満は思った。
「大神くん、田原さんは共有者カミングアウト派だったので、私【石原】は有姫さんを占うべきだと思います。」
「アタシも人間ですよ!全然占ってもらっても構いませんけど。」
「気分を悪くしないでください。今日占ったら、疑いが晴れますので。」
石原兼続が少しだけ申し訳なさそうな顔をした。
「ちょっと待った。
磯谷くん。君はもし有姫さんが人狼だった場合、人狼だった、とカミングアウトできるか?」
草野克則が重要なことを尋ねる。
磯谷周吾は言葉に詰まった。
(僕が占い師だったら、そんなことができるだろうか…。いや、そもそも、ゆきちゃんは人狼じゃない。…けど、そんなこと考えたこともなかった…。想像したことも。)
「ボクは…できます。」
磯谷周吾は少し躊躇いながらも、ハッキリと言った。
ほぅ、と言いながら目を細めた草野克則は念を押した。
「本当にできるか?」
「ボ…ボクは…」
「出来るんだよな?」
尚も草野克則は威圧的に磯谷周吾に詰め寄った。
「で、できません…。」
「やってもらわないと困るんだよ。」
低くドスの効いた声が静まり返った空間に響いた。
草野克則は磯谷周吾に掴みかかった。
「うっ…。」
「出来るな?」
「や、できませ…」
「出来なくても、やってもらわないと困る。」
尚も磯谷周吾を締め付ける。
「ちょ、草野さん!やり過ぎだべ!」
「草野さん、辞めてください!シューゴが!」
「お兄ちゃん!!」
周囲が制止する声を無視し、草野克則は胸ぐらを掴み磯谷周吾の後ろにあった大木に押し付けた。
「おい!やれ!お前にみんなの命がかかってるんだ!」
山崎信一が止めに入ったが、それを意に返さず、続ける。
「磯谷有姫は人狼でした、って言ってみろ!」
「言えません…。」
「言え!初日の神阪先生の結果だって怪しまれるぞ!」
「言えません…。」
「草野さん、あんた、山崎さんが人狼だったら言えるのかよ?」
「当たり前だ。」
草野克則は声の主、天堂真理夫の方を見るとキッパリと言った。
そして、胸ぐらを締め上げる。
ギリギリと締め上げる音が、周囲にも聞こえた。
「言ってみろ!言えないようなら、明日は君たち4人の中から処刑者を出す。」
「待ってください!お兄ちゃんは言えます!ちゃんと言える人です!」
磯谷有姫は観念したようだ。
「お兄ちゃん、言って。」
そう促した。
「もう辞めてください!草野さんは自分の子供が人狼だったら、言えるんですか!?」
大神満の一言に、草野克則の力が緩んだ。その隙に、山崎信一、天堂真理夫、龍造寺猛虎、石原兼続が取り押さえる。
「…すみません。わかりました…。
言います。ちゃんと言います。」
そう言って、磯谷周吾は座り込んだ。
「シューゴ!」
「周吾くん!!」
「お兄ちゃん!!」
大神満、田原葉月、磯谷有姫が磯谷周吾の元に駆け寄った。
磯谷周吾の顔は怯えていた。
「…すまない。磯谷くん。」
取り押さえられた草野克則がポツリと呟いた。
「皆さん、一旦落ち着きましょう。
夜までにまだ時間はある。
30分後にもう一度ここに集まりましょう。」
石原兼続が皆に提案し、草野克則は山崎信一らが連れ添いながらその場を離れた。
大神満や磯谷周吾は、暫くその場を離れられなかった。
その様子を見ているかのように、風はピタリと止み、辺りは静まり返っていた。




