27. 3日目の朝
夜になると、この村は風が吹き荒れる。ガタガタと強風が部屋を叩きつける中、大神満は不安で寝付けなかった。
(万永先生、金田さん、山崎さん、犬飼さん。この4人の中に人狼がいるはずだ。
万永先生でも金田さんでもなかったら?残るは山崎さんと犬飼さん…。
もしこの中に人狼がいないとすると…
共有者カミングアウトに人狼が手をあげたことになる。
人狼にとっての共有者カミングアウトのメリットって何だ?人狼の容疑を軽くできること?
人狼2匹、狂人1人、妖狐1匹。全員が共有者カミングアウトするとは考えにくい。やっぱり4人の中に必ず人狼がいるはずだ!そしてきっと妖狐も。
それに…。
今の間にも誰かが人狼に襲われているのだろうか…。
僕だったらどうしよう…。
葉月は大丈夫だろうか?シューゴは…?ゆきちゃんは?)
不安な思いは募るばかりだった。
いつの間にか、強風は止み、静けさだけが残っていた。
気づけば、大神満は一睡もできず、朝を迎えた。
急いで広場に向かった大神満は安堵した。
昨夜、人狼は強襲に失敗したらしい。この日は12人全員が広場に集まった。
「全員生きていたか。よかった…。」
全員がホッとした表情を見せる中、草野克則が気を引き締める。
「まだ、俺【草野】たちがこの村から脱出できないってことは、人狼が生きているということだ。油断しちゃ駄目だ。」
「草野さんの言う通りだ。」
山崎信一も草野克則に同調し、皆に気を引き締めるよう促した。
「まずは、占い結果から聞かせてもらおう。」
「はい。金田サンは人狼でした。」
「え!?」「は?」
一瞬静寂が訪れた。周りの木々も色を失ったかのように思えた。
「磯谷ぁぁ!!何ジョーダンぶっこいてんだよ!?あぁ?」
掴みかかろうとする金田一を山崎信一が取り押さえる。
「お前だったのか?沖田を殺したのは。」
「ち、ちが…」
「おい!山崎!金田くんも。落ち着いてくれ。まだ神阪先生の結果を聞いてない。」
「人間やったで?金田くんは。磯谷くんはウソをついてる。」
「磯谷周吾ぉ〜」
少し山崎信一の手が緩み、金田一が磯谷周吾に飛びかかろうとしたが、慌てて山崎信一が緩んだ手に力を込めた。更に近くにいた天童真理夫も止めに入った。
それでも金田一の怒りは収まらない。
「静粛に。」
草野克則は何事もなかったかのように淡々と議事を進める。
「霊能力者の方。万永先生が人狼だった場合のみ名乗り出てくれ。」
草野克則の問いかけに、誰も名乗り出る者はいなかった。
「万永先生も人間だった、ってことか…。」
「いや、そうとも限りませんよ、草野サン。」
「どういうことだ?」
「沖田サンが霊能力者だった場合、万永センセーは人狼だった可能性があります。」
(あれ?シューゴは沖田さんは狩人だって言ってたような?金田さんのすごい剣幕に混乱してないか?)
大神満が口を開きかけた時、金田一が口を挟んだ。
「ちょっと待てよ!今はそんなことより、俺【金田】の疑いをはらさせてくれよ!俺は人狼じゃないんだ。」
「ホンマやで?ワシの占い結果は人間て出とるしな。」
「磯谷周吾!お前何の恨みがあってそんなウソつくんだよ?お前こそ人狼じゃないのか?」
「ボクはただ、占い結果を正しく皆サンに伝えただけです。」
それに、と磯谷周吾は付け加えた。
「ボクは初日の占いで人間と出ているので。神阪先生が正占い師だった場合も、ボクが正占い師だった場合も、ボクは人間だと断言できます。」
「くそ!じゃあお前は狂人だ!
俺【金田】の推理が真実に近づいてきたから、俺【金田】を殺すために濡れ衣を着せてんじゃねーのか?え?」
「金田サンの推理って何ですか?
全員がカミングアウトすればいいとか、共有者カミングアウトに賛成していたミツルが偽占い師をカミングアウトさせるための伏線をはったとか、そう言うことですか?」
「確かに、的外れだな…。」
ボソっと山崎信一が呟いた。
「そもそも。もしボクが人狼や狂人で、金田サンが人間だった場合、金田サンは生かしておきますよ?もっと回りをかき乱してほしいから。」
「何だよ。本当に俺【金田】じゃないんだよ。」
「すまないが、一旦整理させてくれ。」
草野克則が丁寧に状況を整理していく。
草野克則:人間(共有者)
磯谷周吾:人間(占い師 or 偽占い師)
神阪甲太郎:人間(占い師 or 偽占い師)
金田一:人間 or 人狼
他8人:不明(人間 4※〜7人/人狼 0※〜2人/狂人 0〜1人/妖狐 0〜1人)
死者
沖田鉄平:人間
田中次郎:人間
真目正義:人間 or 妖狐
万永琢朗:人間 or 人狼※
※ 沖田鉄平が霊能力者だった場合
「つまり、沖田さんが霊能力者で万永先生が人狼だった場合、先に妖狐を処刑しないとダメだべ。」
「つまり、金田さんに票を入れるのは危険ってことですか?」
天童真理夫や犬飼陽子が金田への投票に待ったをかける。
「だから、俺【金田】は人狼じゃないんだって!票なんか入れんなよ!」
「ばってん、占い結果が人狼て出た人に投票せんのは、どうも気色ん悪かばい。」
「確かに。俺【山崎】は金田に1票入れる。」
「そんな…。」
龍造寺猛虎や山崎信一の言葉に金田一が項垂れる。
森は終始静まり返ったままだった。何処からか、カラスの鳴き声が聞こえてくる。
こんな森にも生き物はいるんだ、と、大神満は思った。




