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ウルフ  作者: やなぎの裕流莉
22/54

22. 混乱

その場を動く者、ぐったりとその場に腰を下ろす者。皆様々だった。


大神満も、ぐったりとその場に座り込んだ内の一人だった。

そんな中、磯谷周吾と山崎信一だけは、じっと周囲の行動を観察していた。


10分後、みんなが集まった。

草野克則が大きな声で宣言する。

声は夕暮れの森の中に響いた。

「それでは、占い師が名乗り出るか、共有者が名乗り出るか、決を採ります。」


各々が手を挙げる。

決めづらそうに挙げる人が、多数だったが、結局、占い師が名乗り出ることになった。


占い師カミングアウト案賛成者:8人

万永琢朗、山崎信一、磯谷周吾、神阪甲太郎、金田一、犬飼陽子、磯谷有姫、沖田鉄平


共有者カミングアウト案賛成者:6人

大神満、田原葉月、龍造寺猛虎、天堂真理夫、石原兼続、草野克則


「皆さん、勇気を持った挙手をありがとう。占い師が名乗り出ることは決まった。

 他の能力者は名乗り出ない、そう言うことでいいかな?」

「狩人は名乗り出なくてええんちゃいます?あと、霊能力者は処刑された人が人狼だったら名乗り出ることで、ええんちゃいますか?」

神阪甲太郎の提案に、皆頷いた。


「では、占い師の人は名乗り出てくれ。」

「はい…。えっ!?」

磯谷周吾がはっきりと手を挙げる横で、もう一人の男が恐る恐る手を挙げた。

何と、神阪甲太郎だった。

お互い、訳がわからなくなったのだろう。キョトンとしている。


「え?神阪センセー?」

「い、磯谷くん?何で手を挙げてんねん?」

「神阪センセーこそ…。」

「ワシは占い師だからや。」

「いや、ボクが占い師ですよ?」



はぁ、と溜息をついたのは、草野克則だった。


「え?シューゴ!?か、神阪先生?」

2人の占い師カミングアウトに皆、状況がわかっていない様子だった。


「神阪センセー、何かの間違いですよね?」

「磯谷くんこそ、勘違いしてるんちゃうんか?ワシが占い師やで!」

「お前ら!どっちがホンモノなんだよ!ふざけんな!」

お互いに困惑の表情を浮かべながらも鋭い目つきで歩み寄る磯谷周吾と神阪甲太郎に金田一が突っかかる。

金田一の一言をきっかけに、両者が掴みあう形になり、それを山崎信一や沖田鉄平らが止めに入る。


「まぁ、想定していたことじゃないか。」

と、万永琢朗が呟いた。

「ソウテイって何よ!」

歳上の権威者にも屈することなく、磯谷有姫が睨みつける。

「有姫ちゃん…。」

近くにいた田原葉月がなだめる様に磯谷有姫の肩に手を置いた。


他に、と大きな声で草野克則が言った後、ゆっくりと低い声で言った。

その声は、少し威圧的な空気を纏っていた。

「他に、占い師を名乗り出る者はいないな?」

「いる訳ないでしょ!?」

磯谷有姫が、草野克則を睨みつける。よく見ると、磯谷有姫は少し震えていた。


「占い師が2人名乗り出る結果となってしまった。認めたくなくても、今すぐに受け入れないといけない。

磯谷くんも神阪先生も、占い師を名乗り出たのは事実だ。

厳しいことを言うが、これから何が起きても、その事実を受け止めなければ、俺たちは全員人狼の餌食だ!」

「しかし、草野さん、万永さん。こうなっては…狩人はどっちを守ればいいんでしょうか?」

磯谷周吾、神阪甲太郎、金田一を引き剥がした沖田鉄平が困った顔をしている。

「どちらかを守るしかないだろう。勘だな。な?草野さん?」

「できれば、磯谷くんにも神阪先生にも話に加わって欲しいんだが、この状況では仕方ないな…。」

しかし、草野克則のその言葉は同意ではなかった。


「皆、聞いて欲しい。

 俺は共有者だ。この中のある人と俺は、お互い人間であることがわかっている。

 もう1人の人は 、今はまだ名乗り出ないことにする。

 兎に角、”確実な情報”として、俺とその人が人間であることは保証しよう。

 他に、共有者を名乗り出る者は?」


草野克則の言葉に皆、黙り込んだ。

共有者を名乗り出る者は、現れなかった。


「では、俺は人間と確定した。

 これで俺が指揮を取っても、人狼サイドに導くことはない。

 そこで、今夜は磯谷くんと神阪先生にお互いを占って欲しい。」

2人とも黙って頷いた。


「それと、今日、俺が人狼に襲われた場合、皆さんには、もう1人の共有者が誰かがわからなくなる。

 万永先生の言う通り、人狼は占い師を狙いづらい状況になった。

 このままでは、おそらく今夜、俺を狙ってくるだろう。

 簡単にやられるつもりはないが、俺も狩人の守り先候補に入れてもらえると有難い。」

「守り先は、草野さんに絞った方がよかですばい。」

「お兄ちゃんに決まってるでしょ!」

磯谷有姫の叫びは、森の奥まで広がり、やがて消えた。

静まり返った後、龍造寺猛虎は続けた。

「妹さんの気持ちはたいぎゃわかるばい。ばってん、”確実な情報”ば確実に守れんといかん。

 わかってはいよ。」

「あんた、自分を守ってもらいたくて共有者カミングアウトしたんじゃねーのか!?」

「おい!草野さんがそんなことする訳ないだろ!」

「金田くんよ。俺は”今”、”確実な情報”を提供しただけだ。もし俺が嘘をついてるなら、本物の共有者が名乗り出るはずだ。

 誰も共有者を名乗り出ないこの状況が、俺が本物の共有者だと証明している。」

金田一はガックリと肩を落とした。


気づけば辺りは真っ暗になっており、冷たい風が吹いていた。


「では、皆さん。また明日。」

草野克則が皆と内容を確認し、この日は解散になった。


・話し合いに時間を多く割く

・占い師は磯谷周吾か神阪甲太郎

・草野克則は共有者(人間確定)

・狩人の守り先は草野克則

・狩人と霊能力者は名乗り出ない。但し、霊能力者は処刑された人が人狼だった場合のみカミングアウトする

・磯谷周吾と神阪甲太郎がお互いを占う

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