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ウルフ  作者: やなぎの裕流莉
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21. 役職者カミングアウト

犬飼陽子が話を続ける。

「生きているメンバーが人間か人狼かの情報を持てるのは占い師だけです。

 占い師が皆に情報を開示するだけで、人狼を見つける手掛かりは増えると思うんですけど。」

「…なるほど。」

「そうなると、占い師が人狼に狙われる可能性が高まるのでは?」

石原兼続の問いに犬飼陽子は明るく答えた。…ほんの少し、笑ったようにも見えた。

「ええ。でも、それはカミングアウトした占い師を狩人が守ればいいんじゃないでしょうか?

 そしたら、全員に沢山の情報が入る。」

「それいいっスね!」

金田一が便乗する。…が。


「いや、ちょっと待ってください。

 もし、人狼側の誰かが占い師カミングアウトして、占い師候補が複数になったら?」

「…あ。それは考えてなかったです…。」

大神満の一言に、犬飼陽子は下を向いた。痛いところを突かれた様子だった。

「それでもいいんじゃないか?占い師が名乗り出れば。」

意外なところから賛同意見が挙がった。万永琢朗だった。

「人狼は占い師を狙えなくなる。占い師が人狼にやられた場合、やられてない方の占い師は人狼だ。人狼は人狼を喰べないからな。」

「うーん…。」

大神満は考え込んだ。

磯谷周吾が直ぐさま質問を投げつける。眉間に皺を寄せ、驚きの表情を浮かべていた。

「2人の占い師の間で占い結果が違ったら、どっちを信じるんですか?」

「そうだな…。」

万永琢朗は、少し考えた後で、口を開いた。

「私【万永】は人狼という占い結果を信じるしかないだろうと思う。

 基本的に偽占い師は、この人は人狼でした、とは言えない。もし、嘘で人狼の疑いを掛けた場合、霊能力者によって嘘だったことがバレてしまうし、共有者に対して人狼の疑いを被せる危険性もある。

 だから…」

「だから、占い師を名乗る人狼は占い先を人間としか言えない…。

なるほど…。さすが万永さん。」

山崎信一が万永琢朗の先回りをする。

「おれも最初からそれを提案しようと思って…」

金田一が懲りずに万永琢朗に便乗しようとしたとき、大神満が割り込んだ。

「―狂人だったら?偽の占い師が狂人だったらどうでしょう?」

「基本的に変わらないんじゃないだろうか?」

「確かに。万永先生が仰る通り、結局、狂人も人狼と同じで人間としか判断できない。でも…。」

少し俯きながら話していた大神満だったが、少し強い口調で顔を上げて言った。

「狂人なら…狂人なら、人狼は喰べることができます!」

「…え?」

全員が顔を上げた。

「だから、占い師が人狼に喰われても、被害者が本物の占い師だとは限らない。

下手をしたら、本物の占い師の情報を、僕らは疑うことになります。」

全員が黙り込んだ。


しかし、万永琢朗が話し出す。

「そ…そんなこと、考えてもいなかった。そんなリスクを人狼や狂人が冒すだろうか?今、ここには人間が10人、人狼と狂人が3人、妖狐が1人だ。そんな人数比で…」

「いや。そぎゃんかも知れんばってん、おいは大神くんに賛成ばい。」

「オイラも。占い師はカミングアウトしなくても、全員で占い先を決めておいて、人狼だった場合のみ名乗り出てもらえば済む話だべ?

 占い師が誰かという情報を渡す必要はないべ。」

龍造寺猛虎や天堂真理夫が大神満をフォローする。

「だが、占い師が名乗り出る前に、早い段階で人狼にやられてしまったら?誰が占い師かわかってないと、狩人は守ることもできないし、私【万永】たちは何も情報を得ることができない。」

「占い師が複数名乗り出た場合も狩人は1人しか守れんとじゃなかですか?」

「…その通りだな…。だが、暫くは狂人に嘘の情報を流してもらうために、生かしておくんじゃないだろうか。どちらかが人狼に狙われたら、生きている方の占い師が人狼または狂人だとバレてしまうから。

 他にも、処刑裁判で占い師が処刑されそうになって、止むを得ず名乗り出た場合を考えてみて欲しい。そんなカミングアウトを私【万永】は信じられない。」

「…せやな。仰る通りですわ…。」

言葉数が少ない神阪甲太郎も納得した。


「先程も述べた通りもし偽占い師が名乗り出ても、人狼は占い師を狙いにくい。占い師が誰だかわからず、処刑裁判に掛けてしまうリスクと、占い師が誰かを人狼サイドに与えるリスク。どっちが大きいだろうか?」

「…そういう考え方もありますね。

 ただ、万永先生の方法だと、沢山の犠牲が出ます。」

「ミツル、甘いよ。どんな方法を取ろうと、犠牲は沢山出るよ。」

「…他に方法があるのかね?」

「そうですね…。」

大神満は、言葉に詰まった。


「共有者が1人だけ名乗り出る…とか?」

どれくらい経ったのだろう。

暫く沈黙が続いた後、田原葉月がポツンと呟いた。

「そうだ!それだよ!!」

「え?」

「共有者なら、偽物を名乗れない!」

「そうですね。それは名案ですね。

 共有者を騙るには2人を割かないといけない。人数比的に人狼はそんなリスクを冒さないでしょう。」

石原兼続も賛同したが、万永琢朗はまだ納得していないようだった。

「だが、占い師が名乗り出ないまま人狼に襲撃されたとき、私【万永】たちには何も情報が残らない。」

万永琢朗は反対した。

「これ以上話し合っても、平行線だな。決を採ろう。

他に意見は?」

草野克則の呼びかけには、みんな無言だった。

その空気は、他の意見はないと、そう訴えていた。


「考える時間を設けることにする。

10分後、広場に再集合しよう。」

その言葉を残し、草野克則はセブンスターの箱を取り出しながら、森の中へと消えて行った。

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