15. 能力付与の儀式
田中次郎の説明が終わっても、全員が、どこかぼんやりしていた。
人狼、妖狐、処刑投票…。目の前に突きつけられた、非現実的な現実を、皆どうしても受け止めることができなかった。
しかし、、、
「やりましょう。
リスクは大きいですが、皆で人狼と妖狐を退治しましょう。大事な人に同じ思いをさせないために。」
石原兼続が言うと、草野克則や万永琢朗が続いた。
「俺も、妻や娘に同じ思いはさせたくない。」
「私【万永】もだ。」
「あの…本当に人狼は存在するんですか?」
「草野さん、おれ【沖田】はどうしても信じられないです。」
真目正義や沖田鉄平、山崎信一が反論する。
「やはり、何かトリックが…」
金田一が口を開きかけたところで、田中次郎が言った。
「もし、人狼がいなければ、人が死ぬことはありません。
どうか、私が皆さんに能力を与えた後、明日まで待ってもらえませんか?
今日の夜、被害者が出なければ、私の勘違いということで済みますから。」
「なるほど。それならば、田中さんにお任せしたい。」
「あの…。」
大神満が言いづらそうに手を上げた。
「早くおじいちゃんの病院に行きたいので、ここから離れて、森を抜けるまで歩き続けようと思ってるんですけど…。」
「それは危険だ。もう直暗くなる。
そうなると、森の中にいるより、この村で過ごした方がいい。」
「そうですか…。」
草野克則の助言に大神満は渋々頷いた。
「では、これから皆さんに能力を付与します。
皆さん、輪になってください。」
田中次郎が能力付与の儀式を行った。
全員、目をつぶって立っていただけで、能力を与えられた人の身に何か起こるわけでもなく、儀式は終了した。
「今皆さんに付与した能力は明日から使うことができます。」
説明する田中次郎は少し寂しそうな目をしていた。
幸いこの村には一人用のコテージが20棟程あった。
皆それぞれの部屋に入り、各自眠りに就いた。
そして、次の日の朝がやってきた。