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第12話 家庭教師(金髪巨乳義姉ショタコン)

 アリシアとの別れから二つ季節が過ぎ去って夏が訪れようとしている。


 夏は前世の頃から苦手だ。暑いし、ジメジメするし、虫も多いし。それでも前世の頃はクーラーという人類史上最大の発明があったおかげで家の中では快適に過ごせていた。


 だが、こっちの世界ではそうもいかない。


 ロードランド領はアルミラ大陸北東部のリース王国でもさらに北方に位置しているが、それでも夏はそこそこ暑い。風の無い日はとくに熱気がこもりやすく、屋敷の中は蒸し風呂のような状態だった。


 こんな時、魔法が自由に使えれば……。


 庭園の木陰で本を読みながらそんなことを考える。庭園には噴水があって、屋敷の中に居るよりは幾分か風も感じられた。


 魔法を組み合わせれば疑似クーラーを作れるのではないだろうか。氷系統の魔法と風系統の魔法があれば何とか……。


 いやしかし、魔法は前にアリシアの使った炎魔法を見様見真似で放ったら加減が効かなかった。あの一件以降、魔法は封印している。クーラーの再現も、一歩間違えれば部屋を氷漬けにしかねない。


 高いステータスと強力なスキルも考え物だな……。


 ニーナとナルカが庭園の噴水で水遊びをするのをわきで見ながら、暑さを誤魔化すためにページを捲る。限界が訪れたら俺も噴水に飛び込もう。


 そんなことを考えていると、俺の元へ父上がやって来た。


「ここに居たか、レイン。探したんだぞ」

「どうしたのですか、父上? 自警団に何かありましたか?」


 俺の発案で始まった自警団は、騎士団による訓練も終了して数か月前から本格的に始動している。エドガーとアランの兄弟は自警団の中心として活躍しているらしい。


「いいや、そちらは問題なく順調だ。ロードンの犯罪も目に見えて減っていると報告を受けているよ。自警団の皆も真面目に活動しているようだ」


「それは何よりです」


 いずれは自警団をより警察のような組織に発展させていきたいものだ。


「それではどういったご用件でしょうか?」


 忙しい父上がわざわざ俺を探しに来たということは、何かしら理由があるのだろう。


「うむ。実はシルヴァに頼んでお前の家庭教師を探していたのだ。ついさっき、シルヴァから書簡が届いてな。良い人材が見つかったから来週からこっちに寄越してくれるらしい」


「はあ……」


 家庭教師と言われても、今さら何を学べば良いのだろうか。剣術はエバンズやナルカ以上の強者が王国内に居るとは思えないし、座学は本から学べる。礼儀作法は父上と母上に教わってマスター済みだ。


 他に学べることと言えば、


「どうしたのだ、レイン。せっかく魔法を学べるというのに嬉しくはないのか?」

「魔法ですか!?」


 まさかと思ったがそのまさかだった。ちょうど魔法を学びたいと思っていたところだ!


 ロードランド領には魔法を使える者が少ないらしく、身近に魔法を使える者は居なかった。だから学びたくても学べなかったのだが、まさか遠く離れた王都から教えに来てくれる魔法使いが居るなんて!


 シルヴァ様に頼んだということは、きっとアリシアとシルヴァ様が屋敷に滞在していた頃から話が進んでいたのだろう。さすがは父上だ。尊敬してもし足りない。


 いったいどんな魔法使いが来てくれるのだろう。俺は期待に胸を膨らましながら一週間首を長くして待ち続けた。


 そしてついに魔法使いが家庭教師に来てくれる日の朝。


 屋敷に現れたのは、真っ黒なとんがり帽子に真っ黒なローブを靡かせる、金髪巨乳美少女だった。


「アリシアさま……?」


 彼女を一目見たニーナは不思議そうに首を傾げる。ニーナがそんな反応をしてしまうのも無理はない。王都から来たという魔法使いは、面影がアリシアにそっくりだったのだ。


「初めまして。アリス・グレイスと申します。昨年は父と妹が大変お世話になりました」


 そう言って魔法使いは一礼する。グレイス……ってことはもしかして、アリシアのお姉さんだろうか。そう言えばアリシアは姉が居ると言っていた。しかも凄い魔法使いだと自慢していたな。


「よく来てくれたわ、アリスちゃん。本当に若い頃のアリアにそっくりね」


「ありがとうございます、エリザベス様。母は私が理想とする女性なので、そう言って頂けると本当に嬉しいです」


 アリアとはどうやらアリシアの母、グレイス夫人のことだったらしい。アリシアが宮廷魔導士だと言っていたが、どうやら母上の知り合いでもあったようだ。


「さっそくだが息子のことを宜しく頼む。ほらレイン、挨拶なさい」


 父上に促され、俺は一歩前に出て貴族式の一礼をする。


「お初にお目にかかります、アリス・グレイス様。レイン・ロードランドです。これから宜しくお願いいたします」


 ここでアリシアは俺に張り手を食らわせてきたが果たして……。俺が様子を伺っていると、アリスは俺の傍で片膝をついて視線を合わせ、細くすべすべとした綺麗な手で俺の手を包み込んだ。


「初めまして、レイン様。私のことはどうか親しみを込めてアリスとお呼びください。敬語も不要ですよ」


「そ、そうか……? わかったよ、アリス」

「はぅう~っ」


 なぜか頬を赤く染めて悶絶するアリス。心なしか呼吸が荒い気がするが気のせいだろうか。


「ず、ずっと弟も欲しいと思っていたのです。レイン様、ギュってしてもいいですか……!?」


「べ、別に構わないが……」

「ぎゅーっ!」


 俺が許可するとアリスは俺の顔を豊満な胸に押し付けるように抱きしめてきた。や、柔らかい……。そして息が苦しい。顔が胸に埋まっているせいで呼吸が上手くできない。


 父上、母上、微笑ましそうに見てないで助けて……。


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