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普通の家庭

作者: 火月

朝、昼、晩と出てくるご飯。洗濯等の家事は親が全部やってくれる。うちは父親1人の仕事で生計を立てているため、母親は家事に専念できる。教育は少し厳しかった。夜遅くまで外で遊ぶことをよしとしなかった。社会人になってもだ。

そういう環境で育った自分は子供の頃も含めてリスクがあってリターンが少ない選択をしない人間になってしまった。中学時代、部活にはいるのが義務だったため、1番楽な部活を選んだ。高校、大学に至っては部活は自由だったので入らなかった。ただ将来に直接関係してくる勉強だけを頑張っていた。

社会人になって、ちゃんとした会社の正社員になれたし、収入も安定している。客観的に見て不満を感じる要素など一つもないが、自分は不満がたくさんあった。楽して生きてきた自分は苦労して生きてきた人と比べて人間としての深み、個性、プライドが著しく低いと思った。実際自分は主張が弱い。だからこそ、不安定な家庭で育った人、一人で強く生きていける人に憧れがあった。

ある日、中学時代からの友達から遊ぼうと連絡が入った。ホストをやっていて、スポーツクラブにも入っていて女の子にもモテモテ。まともな家庭で育ってないがだからこそ自分の力で生きてきた人だ。それは、自分の憧れそのものだった。自分は彼と遊ぶことにした。

彼と彼とよく一緒に遊ぶという人たちと自分で遊んだ。一緒に遊んでいくなかでわかったことがある。彼らは何処か冷たい目をしてる。遊んだ後、帰りたくてもなかなか帰してくれない。どこか馴れ合いに依存してる部分があるなと思った。少し怖くなった。

自分ではないが、友達の1人が付き合いが悪くなった。それに対して周りの批判はすさまじく驚きを隠せなかった。裏切りに対する怒りが人一倍だった。ふと聞いた事がある。なぜいつも外に出ていて家に帰らないのか、体は疲れないのかと。彼らは答えた。家に帰っても居場所がないのだと。両親はいつも遊んでいてご飯も出てこない、家で1人でポツンといる。家に音がないのがたまらなく耐えられないという。自分には新鮮な感覚だった。

彼らと縁を切った。彼らと縁を切るのは大変で今でも相当恨んでいると思う。家に帰る。おかえりと家族が暖かく迎えてくれた。両親のしょうもない会話、いつものご飯。騒がしい家だけどその騒がしさが心地よかった。

両親がいて、ご飯が出て、家に音がある。それが他の何よりも誇らしいことであることに気付けて良かったと今では思う。

たとえ孤独を感じても、元々持ってる大切なものを捨ててまで寂しさを埋めることは愚行だ。幸せを最初から持っている人は、自分が幸せであることに気付かない。けれど幸せの手に入れ方も知らない。そういう意味では人として未熟だが、それを誇らしくは思っても恥ずかしく思うことではないのだ。


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