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気使い


 翌日、俺はスラム街に行くのが面倒になり、しかも寝坊したので、王城にいるねずみを狩っていた。

 兵士たちから変な目で見られるが、ここは割と広く結構ねずみがいた。

 基本的に人の邪魔にならなように音を立てないようにねずみを倒していた。倒したねずみは定期的に街中の肉屋に渡した。

 昨日から行っていることだが、ねずみの肉は街の肉屋にうるといいとねずみの肉を与えた浮浪者から情報をもらった。

 俺から渡された肉を彼らもそこに売るつもりらしい。

 なんでもねずみの肉は家畜の餌や肥料にするらしい。

 あまりにも俺が持ってくるので最終的にはタダで引き取ってもらうことになった。

 王城のねずみを2時間で狩り、街中のねずみも狩った。これで街にいるねずみはほとんどいなくなった。

 街でねずみ以外の害獣の話を肉屋で聞き、コーチと呼ばれる油虫つまりゴキブリに似た何かを狩ることになった。

 コーチを探そうとするとかなり気配があり、ねずみよりは経験値が少なくてもやる意味はありそうだ。


 俺はその日の夜にコーチの対策のため、本を読もうとした。頼ったのは同室の中村だ。

 中村から本を借りる、その際、コーチについてこちらではどうしているのかと聞くと返事があった。

 氷の初歩魔法の講義の時に この世界ではコーチは初歩氷の魔法のアイスンで倒すのが一般的らしい。

 アイスンは便利な魔法らしく、一時的な止血や足を冷やしたり、冷水を生み出せるとして重宝されている魔法。コーチの話もその一例として出てきたようだ。

 俺は中村から少し手ほどきをうけた。したら、俺でも覚えることができた。


「偵察者でも覚えられたんだね」


 感心したように言った。そうほほ笑む中村の肌が少しづよくなっていることに俺は気が付いた。

 アトピーがよくなっている。

 いい傾向だと俺は思った。なんでも、最近は女子とも仲良くなりつつあるらしい。

 中村はいいやつだし、この容姿なら彼女ができるかもしれない。

 素直にうれしいことだ。


 対する俺はというと・・・


 経験値を得ているため、身体能力はかなり上がっている。この世界に来る時とは別人ような動きができるようになっていた。

 戦闘職のやつらならもっとすごい動きができるのかもしれないが、ねずみがどんな場所にいてもあっさり追いついて倒すことができる。

 そっちのことが俺にとっては重要だった。

 少しづつ経験値を集める。そうすることが俺が生き残るすべだと俺は確信していた。


 色恋の話?おいしいのそれ?


 翌日、俺はコーチの気配を感じ、アイスンで次々にその命を奪っていく。思った通りねずみよりは経験値は低いが数が違った。

 一日で何百匹も倒すことになり、街中のコーチがほとんどを消滅させた。

 氷魔法のついでに、風の魔法を教わっておいてよかった。ゴミ集めが思ったよりも楽だった。

 コーチの死体を焼いて夜を迎えた。

 魔法の使い方も会得し、同時に使えることができるようなっていった。


 こうして、三日目が終わり、王城のメイド達が何故か俺に優しくなった。料理を持ってきてくれるようになったのだ。

 そこで、まともな食事をとっていないことを俺は思い出した。

 ただのかわりに肉屋から飯をおごってもらうことが多かったから、飯に困っていなかったからだ。


 コーチを狩り、肉屋のおやじに他に害獣がいないかときくとカラスかなと言われた。なんでもゴミなどをあさり、いろいろと迷惑を被っているらしい。

 カラスか。

 スラム街でもよく見かけるようになっていた。ネズミの死骸にもよく来てはその死体を奪っていた。

 そのころには感覚がマヒしていたので、何とも思わなかったが、冷静に考えれば、稼ぎの一部を奪っていたのである。

 まあ、殺すに値する奴らだろう。

 俺はそう思いカラスを殺しに街中を徘徊することになった。

 そこで俺はカラスの心臓を一瞬アイスンをかけるということを思いついた。一瞬びくっと反応し、すぐに飛び去った。そこにさらにアイスンをかけるとカラスははばたくのをやめ地面に落ちる。

 体制を立て直そうとしたところを俺がカラスを首にナイフを突き立てた。

 ねずみを殺したことでレベルようなものがあがり、身体能力が強化されたらしい。あっさり俺はカラスをしとめた。

 おそらく、そのうちアイスンを使わなくてもカラスを殺せるようなことができるのかもしれない。

 俺はこうして低空飛行しているカラスの心臓にアイスンをかけ、動きを止めたところを切りつけるということを繰り返す。

 一日で100匹以上を殺すことができた。

 そのうち、俺を見るたびにカラスが襲ってくるようになったが、すべて返り討ちにした。

 気が付けば、カラスの死体の山を作る始末だ。そのうちカラスが俺を見ると逃げるようになった。


 カラスの鶏肉は売れないが羽は売れるので、それを売って金にした。肉屋のおやじにはすっかり世話になっていた。

 たたき売りに近い値段だが、仕方ないことだろう。

 その肉屋の親父からは冒険者になることを勧められた。

 どうやら、スラム街出身向けにアウトローな職業として冒険者というものあるらしく推薦状を出すからそっちに行けと言われた。

 その日のうちに俺は冒険者登録をした。


 ねずみ狩りの名前をもらい、スライム狩りを勧められた。なんでも様々な材料の元になるので集めてきてほしいと言われた。

 冒険者ギルドの受付嬢は夜は娼婦として働いているらしく、それなりに綺麗な人だった。


 翌日からスライム狩りを始めた。

 スライムは薬草や作物などを食べてしまうので、狩るのを推奨されている生き物らしい。

 コアを壊せば死ぬ生き物だが、そのコアをとらえるのが大変らしい。

 というのも鉄などをとかす特殊な体液でできていて、死体になるとその性質が消え、のりやプラスチックのようなものの素材になるらしい。

 俺はワイン樽をギルドで借りた。スライムの死体を保存するには樽がいいらしいので、それを借りることになった。

 持って帰るときは樽を転がして持って帰ってくるのが一般的らしい。放置すると固まりやすいので拡販するための知恵だとか。

 俺はスライムが武器を溶かすらしいので、木の枝を槍に加工し、それで突き刺して倒すことにした。

 それでコアが壊れたので、その槍で倒すことにした。結果からすれば、俺はその木の槍を使って、俺はワイン樽いっぱいのスライムの死体をかき集めた。


 聞いていた話と違って木の槍でもスライムを倒すことができ、スライムの体液は武器を溶かしてしまうらしいのだが、俺にはそんなことはなく、次々にスライムを倒すことができた。

 スライムはおそらく魔物に分類されているのだろうねずみやコーチなどとはくらべものにならないほどの経験値をもらうことができた。

 俺は増えることを願ってある程度、スライムを残すことにした。また、増えたら狩ればいいと思った。

 そうそう、たまに大きな蜘蛛や狼などにも出会うことがあるが、“経験値”によりレベルのようなものが上がり、身体能力が上がった俺の敵ではなかった。

 まあ、この世界の生き物のしてくる行動が読めるので、それで御し安かったりする。


 そういえば、ステータスの確認をした方がいいと言われたので、中村から教わったステータス確認の魔法を使った。

 目の前にガラス板のようなものが出てきて、そこに光り輝く白い文字が表示されていた。その文字を読むと・・・


 【偵察者:LV15】所持スキル<気使い><看破>


 中村の話ではステータスの魔法は自分の身を対象にできる魔法で自分がどんなスキルを覚えているのか、どれくらいのレベルなのかわかるものらしい。

 スキル<看破>などがあれば、よりくわしくわかるらしい。

 <看破>は相手のステータスを見破ったりするアクティブスキルのため、【偵察者】である俺なら発現する可能性があるといっていたものだ。

 それがレベルが上がり発現したらしい。


 経験値のようなものがあるのだから、レベルの概念はあるのだろう。<看破>か自分に使ってみるか・・・



 LV:15 HP:95 MP75 AGI:40 SRT:10 CON:15 VIT:10 INT:20 DEX:20 LUC:35 MET:15


 <気使い> <気配感知>、<認識障害>などの認識や気分などに関わるスキル。所持者以外は対したことにない、もしくは気にしない特別なスキル。

 <看破> 対象のステータスやスキル、ジョブを見ることができる。敵対する場合、知能で勝負する。

 <初級魔法:氷・風> 氷と風の初級魔法が使える。便利。



「こんなもんか・・・ってか、気使いってのは複合スキルか。しかも自分以外は何でもないって思えるスキルって・・・」


 レアなスキルのわりに扱いが雑になってしまった理由が分かった。こんな妙な性質を持っているなんて思わないだろう。

 確かに特別そうなスキルだ。ただ、これだけのスキルであのスライムをたやすく倒せる理由がわからない。

 武器が解けなかったりすることも不明だ。

 そういえば、中村が初日に俺の武器をいぶかしげに見ていたのはそれが理由だろう。

 何故、ナイフが壊れていないのか。特別なナイフでないことを看破したのかもしれない。

 彼も薬草師だ。<看破>を初期から持っていたとしてもおかしくはない。俺に対して<看破>を使っていたしれない。

 故に俺の力を哀れんだ可能性もある。だから、これだけ気にかけてくれたらしい。


「これは言わないほうがいいな」


 俺はそんな気がし、<気使い>については誰にも言わないようにした。

 認識障害。

 そういえば、俺がいても誰もそれほど気にした様子はなかった。どんな場所に潜り込んでも何かを言われたことがなかった。

 それはスラム街でも同様だ。誰も俺がいても、目線を送るだけで、特に反応はなかった。

 なるほど、これは便利な能力だ。

 ねずみやコーチを殺す過程でそういう能力がいつの間にか鍛え上げられていったように思えた。

 どこにでも潜り込めるし、不自然に感じない力。さらに気配を感じそれを見つける。

 それが<気使い>らしい。


「上手くいきすぎている?」


 俺は自分の置ける状況について、思わずつぶやいた。

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