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第67話 エルフの城~古代の英雄は化け物だった件~

アルスのいきなりの提案に、3人は固まってしまった。

そんな様子の3人に、アルスが続けて声をかける。

「そんなに難しいことを言ってはいないだろう。あの女を殺す、単純だと思うのだがな」

「いや、言葉の意味は分かるんだけどさ。いきなりすぎて困ってるだけで、それに仮にも妻だったんだろ?良いのか?」

「私としては、あまり賛成はできませんね。行き過ぎているとはいえ、イレーヌ様も人ですから、そう簡単に命を取るだなんて」

「人を殺すだなんてあなたはやっぱり悪い奴ですね!ショウ様、やっちゃってください!」

3人に次々に非難されたアルスは、まったく悪びれた様子はなく答えた。

「まず、あれはもはや人と呼べる存在ではない。俺が生きていた時代から考えると、普通の人間なら確実に死ぬほどの時が経っている。それに人であれば俺も殺そうなどとは思わん、よって悪い奴ではない。そして妻だった・・・だからこそ殺したいのだ」

最後の言葉を言うときに、どこか切なそうな表情を浮かべていた。

アルスのそんな表情を見た三人は、渋々協力することにした。

「まぁあいつにはスライムちゃんのことについて聞きたいこともあるし、探すまでなら手伝ってやってもいいぞ」

「何か事情がありそうですが、言わないということは聞かれても答えないでしょうね。どちらにせよ命を奪うことには反対です。ショウ様が言うように捕まえるだけなら手伝ってあげても良いですよ」

「私も捕まえるお手伝いならしますよ。殺すのはだめです!」



「さぁ、どこからでもかかってくるがいい!」

「あなたの活躍、特等席で見させていただきますね」

「ショウ様!頑張ってください!」

ショウ達は練兵場へと来ていた。

「・・・どうしてこうなるんだ」



あの話し合いの後、アルスが急にこんなことを言い出したのだ。

「貴様がイレーヌ相手にどこまで戦えるか見てやろう!なぁに心配するでない!この時代の戦士は軟弱のようだからな!怪我をしないように手加減してやるから安心するが良い!」

ショウは全くやる気はなかったのだが、アルスのこの発言で聖女と巫女に火がついてしまったようで・・・。

「まぁあなたが英雄といえどもそれは過去の話ですからね。魔王すら一人で倒してしまったショウ様より強いとは思えませんけど。ね、ショウ様?」

「私の城の兵士たちだって、色々あってまだ疲れが取れてないだけで本当はすごく強いんですから!あなたなんかには負けません!そうですよね、ショウ様?」

二人の熱い(?)視線のせいで、ショウはアルスと手合わせすることになってしまった。


4人しかいない練兵場の中、ショウとアルスは手の届く距離で向き合う。

「まぁがっかりさせない程度に頑張るか・・・」

そうは言っていたものの、ショウも古代の英雄と戦えることはほんの少しだけだが楽しみだった。

万が一のことがあってはいけないので、武器は無しで素手で手合わせすることにした。

「じゃあ遠慮なくいくけど、ケガしても知らないぞ?」

「かまわん、俺がケガをするなどあり得んからな」

返答を聞いたショウは、拳を固く握りアルスの胸めがけて全力でふるった。

まるで鉄を殴ったような音があたりに響き、アルスの体がふきーーー飛ばなかった。

レベルマイナス999の万全の状態のショウの拳を、アルスは微動だにせずに胸で受け止めていた。

「うむ、なかなかいい力だ、ほかのやつらとは比べ物にならん。この時代の魔王を倒したというのも嘘ではないようだな」

「そこまで余裕たっぷりに受け止められるとさすがに堪えるな。じゃあこれならどうだ」

ショウは今度は体の捻りも加えて、余裕たっぷりのアルスの顔目掛け全力で蹴り上げた。

強風が吹くほどの神速のショウの蹴りを、アルスは上半身をそらす最低限の動作で避けた。

「これを避けれるのか!でも避けたってことはこれはくらったらまずいんだろ?」

「別に当たってもどうということはないが、顔を蹴られるのは我慢できんのでな。では今度はこちらからいかせてもらおう」

アルスは上半身を戻すと同時に、ショウの胸目掛けて拳をはなった。

ショウはアルスの拳を腕でガードしたが、あまりの威力に受け止めた腕がピリピリと痺れていた。

「立っていられるとは驚きだ!ではこれはどうだ!」

アルスはショウの顔めがけて蹴りを放った。

先ほどのショウと全く同じ動きだが、早さは段違いだ。

ショウはかろうじて腕で受けることができたが、今度は耐えきれずに吹き飛ばされてしまった。

地面を何度かバウンドしながら転がって、ようやく立ち上がることができた。

「つまらん、まさかこれほど差があるとは。これでは武器を使っても俺には遠く及ばんだろう。遠慮はいらん、そいつを使え」

アルスはショウのカタナを指さして、挑発するかのように笑った。

ショウはやっと痺れのとれた腕でカタナを抜くと、アルスに向けてまっすぐと構えた。

「怪我しても文句言うなよ」

「その心配はいらん。殺す気で来い」

アルスの言葉を受けて、ショウは全力でカタナを振り下ろした。

加減をせずに全力で振り下ろしたせいで切っ先から衝撃波が飛び、あたりを土煙が覆う。

アルスの後ろの壁は、衝撃波によって一直線に斬り開かれていた。

さすがにアルスも無事ではすまないと思ったが、土煙がはれた後の光景に、聖女も巫女もおもわず我が目を疑った。

全力で振り下ろされたカタナを、アルスは親指と人差し指2本で挟んで止めていた。

「ウソだろ!?」

「やはりだめだな、お前ではこのカタナを使いこなせていない」

アルスはため息を吐くと、驚いているショウの顔を殴りカタナを奪った。

「俺のカタナを使っておいてこの程度とはな。ただ力任せに振るえばいいと言うものではない、こいつはこう使うのだ」

アルスはカタナを構えなおすと、離れているショウの頭上に向けて横薙ぎにカタナを振るった。

ショウと違い全く力を込めたそぶりはなく、ヒュンという空を斬る音が辺りに響いた。

「ふむ、久々ではこの程度か。まぁよい、今日はこれで終わりだ。お前の実力はよく分かったからな」

アルスはショウへカタナを返すと、体についた埃を払い始めた。

「ちょっと待てよ、まだ終わってないだろ。俺はまだまだ行けるぞ」

ショウは負けたままでは終われないのか、カタナを握るとアルスへと向けた。

「お前の実力は分かったと言っただろう。それでも俺に挑むというのであれば、そうだな、そろそろか。」

アルスはショウの後ろにある、遠くの山を指さした。

ショウたちがその方向を見ると、山がまるで斬られたかのように、地響きとともに横に滑るように落ちていった。

「あれぐらいは出来るようになってからにしろ。ふむ、以前であれば振った瞬間に届いていたものだが、俺の力もなかなか衰えたものだな」

大きく笑いながら城へと戻っていくアルス。

残されたショウたちは目の前で起きたことが信じられず、しばらく呆然としていた。

気をもちなおしたショウはカタナをしまうと、まだ驚いている聖女と巫女のもとへとやってきて一言。

「あいつは本当に人間か?」

巫女も聖女も、何も言えずにただ苦笑いを浮かべるだけだった。

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