レベル30のダンジョン〜元仲間たちへ復讐できた件〜
レベル30ダンジョンがある町についた。
今回はダンジョンに入る前にギルドへ向かう。
ショウを捨てた仲間がいるかもしれないからだ。
「いないか・・・ダンジョンに行ったかもう次の町に行ったかだな」
探して見たが見当たらなかった。
ホッとしたような残念なような気持ちでダンジョンへ向かう。
この町のダンジョンのモンスターはスケルトンなどのアンデット系だ。
ダンジョンに入って早速人間の骨の形をしたスケルトンに出会った。
手にはボロボロの剣と盾を持っていた。
「ちょうどいい、カタナの切れ味を試してみるか」
ショウはカタナを抜くと、スケルトンに向き合う。
試しに剣で切られてみたがダメージはない、今回もあまり強敵は期待できないようだ。
スケルトンの剣をカタナで受け止めると、なんとカタナは剣を斬ってしまった。
「ボロいとはいえ剣を斬るなんてすごい切れ味だな!」
今度は盾に向かって振り下ろす。
可能な限り優しくふったのだが、盾ごと斬り殺してしまった。
灰になったスケルトンを見下ろしカタナをしまう。
「わかってはいたけどとんでもない切れ味だな。これはしばらく出番はないな」
ショウが本気で振るったらどうなってしまうのだろう。
仕方なく今回も素手で戦うことにした。
しばらくすると犬の骨のようなスケルトンが襲ってきた。
数は5匹、まるで本当の犬のような速さでこちらに向かってくる。
飛びかかってきた1匹目の頭を掴もうとしたが、力が強すぎたのか粉々に砕けてしまった。
他の4匹は飛びかかってきたところを手で叩き落とした。
それでも倒すには十分だったようで、地面に叩きつけられた瞬間灰になって消えてしまった。
「動きも遅いし脆いな。こんなやつに苦戦してたのか・・・」
以前4人できた時のことを思い出す。
呪いのせいで能力が下がっていた俺はスケルトンの剣ですら受け止めることができなかった。
仲間は笑って見ているだけだった、思い出しただけでも怒りがこみ上げてくる。
現れるスケルトンたちに怒りをぶつけながら進む、いつの間にか最深部についてしまったようだ。
このダンジョンのボスはスケルトンキングだったはずだ。
モンスターなのに魔法を使えるようで、殺した冒険者の死体を操るらしい。
「前は入り口までしか来れなかったからなー。どんなやつなんだろう」
ボスらしきモンスターを探していると、後ろから声をかけられた。
「お前もしかしてショウか?」
振り返るとそこには元仲間たちがいた。どうやらまだこのダンジョンに挑んでいるようだ。
「久しぶりだな。と言ってもそんなに経ってないけど、まだこんなところにいたんだな」
ショウはこの町について3時間足らずでここまで来ていた。
俺と別れて少なくとも5日は経っているはずだ、何をもたもたしているのだろう。
「言うじゃねぇか。ここにいるってことは呪いはもう解けたのかよ?」
「能力Gの彼が一人で解けるわけ無いでしょう。どうせまた誰かに寄生してるんでしょ」
「そうでしょうね。彼の使いみちなど荷物持ちか囮以外ありえないですから」
3人とも好き勝手に言いやがって。
殴ってやろうと思ったが多分殺してしまうだろうからやめておくか。
「好きに言ってろ。俺はボスを倒しに行くからな」
先に向かおうとしたら後ろから笑い声が聞こえてきた。
どうやら俺が一人でそんなことを言うもんだから気でも狂ったと思ったらしい。
奴らと別れてしばらく経ったが、ボスが見当たらない。
人型やオーク型のスケルトンは何度か襲ってきたが、肝心のボスが見当たらない。
「もしかすると誰か倒しちゃってまだ復活してないのか?諦めて次の町へ向かうか・・・」
帰ろうと思い始めたその時、かすかだが戦っている音が聞こえた。
「まさかボスと戦ってるのか?」
気になって見に行くと、先程別れた元仲間たちがボスらしきモンスターと戦っていた。
人型のスケルトンだが王冠を被り、きらびやかな装飾を施された杖を持っていた。
元仲間たちはどうやら押されているようだ。
大量のスケルトンを使役するキングに近づくことすらできていない。
「あーあ苦戦してんなぁ。手伝えって言われたら面倒だし隠れて見ておくか」
襲いかかってきた犬型のスケルトンを捕まえ、椅子代わりにして戦いを眺める。
正直なところピンチになっても助けに行く気はなかった。
『自分たちの実力を勘違いした愚か者の末路は決まっている。弱ければ死ぬのがダンジョンのルールだ』
以前奴らが弱っていく俺に言った言葉だ。
彼らの考えを尊重してあげなければいけないだろう。
「自分で言った言葉には責任を持たないとな」
しばらくすると奴らがこっちに走ってきた。
どうやら勝てないと踏んだのか、逃げ出すようだ。
「おいおい、あの程度の相手に逃げ出すのか?」
3人は俺に気づくと、顔を見合わせてニヤリと笑った。
「ちょうどいい、お前囮になってくれよ!それぐらいできるだろ?」
「あんたより私達が生き残ったほうがこの世界にとって有益でしょ?」
「さぁ出番ですよ、男らしく死んでください」
勝手なことを言うと走って逃げていく。正直言ってぶん殴りたい・・・
まぁボスと戦えるならいいか、座っていたスケルトンを踏んで倒すとボスへ向き合う。
「こいつも多分弱いんだろうなぁ」
他のモンスターから察するに今回も全く相手にならないだろう。
予想通り軽く殴っただけで倒せてしまった。
加減を間違えたのかドロップアイテムは落ちなかった。
「今回もだめだったか。いつになったらまた戦えるんだろう」
ステータスオールSSになってからというもの、命の危機を感じたことがない。
死にたいというわけではないが、刺激がないのも困りものだった。
帰ろうとしたときにいいことを思いついた。
「あいつらを怖がらせてやるか」
ショウはカタナで適当に服を切り裂き、土をつけてボロボロにしていく。
準備は終わった、後は奴らを探すだけだ。
少し戻ったところで奴らを見つけた。どうやら休んでいたようだ。
「あいつ最後は役に立ったな」
「まぁ私たちが面倒見てあげたんだし最後くらい恩返ししてもらわなきゃね」
「そうですね、これぐらいしてもらって当然でしょう」
三人とも俺が死んだと思っているようだ。
ここで死を悲しんでいたら許してやっても良かったが、どうやら期待したショウが馬鹿だったようだ。
腕をダランと垂らし体を揺らしながらうつろな目をして奴らに向かっていく。
ボスの死体を操るという噂を利用して操られているふりをすることにした。
やつらは俺に気づくと慌てて武器を構えて立ち上がった。
「そういえばここのボスは死体を操るんだったな」
「死んでまで私達に迷惑をかけるなんて本当に厄介ですね」
「まぁこれで本当に最後だからいいじゃないですか、楽にしてあげましょう」
あくまで操られた死体のふりをして近づいてく。怒りを抑えるのに必死だった。
戦士の男が斧を振りかぶってきた。だが何もせず棒立ちのまま受けてやる。
斧は肩にあたった瞬間かすり傷一つ付けることができずに止まった。
肩に触れている刃の部分を片手で掴むとそのまま力を込めて粉々に砕いてやった。
「うそだろ!死体になったらこんなに強くなるのかよ!」
うろたえている戦士を軽く突き飛ばす。壁まで吹き飛んだ戦士はそのまま気絶してしまったようだ。
「私に任せなさい!死体にはこれって決まってるのよ!」
神官の女がスケルトンに効果がある光属性の魔法を唱える。
少しだけ暑かったが特にダメージはない。
怯えて涙目になっている神官に近づくとどうやら恐怖のあまり気絶してしまったようだ。
「ば、ばけもの!」
残された魔法使いの男が炎属性の魔法を放つ、だがこれも効果はない。
服を少し焦がされたぐらいだ。
魔法使いに近づき片手で首を掴むとそのまま持ち上げる。
ほんの少しだけ力を込めるとすぐに気絶してしまった。
「はあースッキリした!俺を見捨てるからこんな目に合うんだよ!」
手加減したかいもあって、みんな生きている。
雪辱を果たせたショウは彼らを外まで運んであげた。
さすがにあのまま放置していたら死んでしまうだろう。
ショウもそこまで鬼ではない。
今回はアイテムを手に入れることができなかったのでそのまま宿へ向かう。
「お待たせ、今日も頼むよ」
スライムを箱から出し優しく抱きしめる。
先ほどステータスを確認するとレベルはマイナス972まで上がっていた。
スライムを抱きしめてベッドに入る。
思えば不思議なものだ。
呪いのせいで苦戦していた俺が、呪いのおかげでここまで強くなれるなんてな。
「今度からは呪いが解けないように気をつけないといけないな」
つい数日前とは真逆のことを考えながら眠りについた。
翌日
レベルがマイナス999であることを確認すると早速次の目的地へと向かう。
ダンジョンでめちゃくちゃ強い死体が出たとギルドに報告があったらしいが、冒険者が死にかけてみた幻覚だと言うことで処理されたようだ。
報告をした3人組の冒険者は他の冒険者からずいぶん馬鹿にされていた。
次からはショウが挑んだことのないダンジョンになる。
まだ見ぬ強敵との出会いを望んで次の町へと歩き出す。
目指すはレベル35のダンジョンがある町だ。