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護送中~エルフの国でも勇者と呼ばれた件~

ショウが警備兵に連れて来られた場所には馬車が止まっていた。

馬車は鉄でできた牢屋を引いており、ショウはその中に入れられた。

先程戦ったサンソンはまだ目が覚めていないようだ、他のエルフに抱えられて他の馬車へ乗せられていた。


「こんな檻すぐに出れるけど大人しくしておくか」


ショウは手を縛られてもいないしカタナを取られてもいない。

いざとなったら逃げ出すことを決めた。

ショウの牢屋の周りに数人の兵士を残しほかは馬車に乗り込むと、馬車は人が歩くような速度でゆっくり動き出した。

することがない上に暇だったショウは、馬車の振動で心地よくなって眠ってしまった。


しばらくすると辺りが騒がしくなりショウは目を覚ました、一体何があったのだろう。

伸びをして体をほぐし辺りを見渡すとどうやら馬車が襲われたらしい、そこは最早戦場だった。

周りの兵士たちが黒い装束に見を包んだ謎の集団と戦っていた、どうやら兵士たちが劣勢のようだ。

ショウはどうしようか悩んでいると黒装束が近づいてきた、その手には槍が握られている。

辺りを見渡すと見張りの兵士はどこかへ行ってしまったようだ、まぁ当然と言えば当然か。


「檻の中では勇者と言えど何もできまい。我らの野望を叶えるため死んでもらおう」


黒装束は檻の隙間から槍を突き出してきた、ショウは迫りくる槍の穂先をなんなく掴んで止める。


「誰だか知らないけれど殺そうとしたってことは敵だよな?じゃあ遠慮はいらないな」


驚いている黒装束の手から槍を奪い取り投げ返す、槍は黒装束の体ごと吹き飛び木にあたってようやく止まった。

死なないように手加減したが大丈夫だろうか―――。

仲間が倒されたことに気づいたのか他の黒装束達が近づいてくるのが見えた。


「このままじゃ囲まれるな、緊急事態だし仕方ないか」


ショウはカタナを抜いて鉄の檻を容易く切り裂き外へ出る、檻から出ると同時に黒装束達が斬りかかってきた。

ショウは振り下ろされる剣や槍をカタナで全て弾き返し、黒装束達には蹴りや拳をお見舞いしてやった。

ショウの攻撃を食らった彼らは吹き飛んで地面を転がりピクリとも動かなくなってしまった。

ショウは次の敵に備えてカタナを構えたが、黒装束達は撤退し始めてしまったようだ。

どうやらショウの強さに恐れをなしたようだ。

ショウはカタナをしまうと辺りを確認する、兵士たちも傷ついてはいたが死人までは出ていないようだ。

ショウは気絶している黒装束に近づいていく、顔にかかっている布をめくるとその正体に驚いた。


「これは――エルフか?」


ショウたちを襲っていたのはエルフだった、違いと言えば肌が黒く髪は銀色なくらいだろうか。


「しかし勇者か〜この国でもその呼ばれ方するなんてな。嫌なこと思い出しちゃうな」


ショウがため息をついてい落ち込んでいると、周りを兵士によって囲まれてしまった。

そういえばショウは護送中だった、緊急事態とは言え檻も壊してしまったし面倒なことになりそうだ。

ショウがどう言い訳しようか考えていると驚くことが起きた。

何と周りの兵士たちが兜を取りショウに向かって頭を下げたのだ。


「ショウどの、いえ勇者様。今までの非礼をお詫びいたします。みなを救って下さりありがとうございます」


ショウの目の前のエルフが代表してお礼を言う、見た目で年齢は分からなかったがよく見るとこのエルフの装備は他のエルフに比べて少しだけ豪華だ。

彼がこの部隊の隊長なのだろう。


「まぁ誤解は解けたし謝ってくれるならいいよ、ところでこいつらはいったい何なんだ?」


ショウは気絶している黒装束を指さす、冒険に戻ってもいいが命を狙われているようだし色々知っておきたかった。


「彼らは魔に魅入られたダークエルフです。魔王の配下となり我らエルフだけでなくこの世全ての蹂躙を目論んでいる者たちです。恐らくあなたの噂をかぎつけて脅威になると判断したのでしょう。巫女様のお告げがあったばかりでしたからなおさら警戒したのでしょうね」


また巫女様のお告げとやらか――この国にも聖女のような存在がいるのだろうか。

のんびり冒険をしたいが命を狙われたままではそうはいかない。

かといってまた魔王討伐に参加するのも面倒だしどうしようか。

どうしようか悩んでいると体長がまた声をかけてきた。


「勇者様、よろしければ我々と一緒に巫女様に会っていただけませんか?そこで巫女様から詳しく話を聞いていただきたいのですがいかがでしょう?」


ショウは少しだけ悩んだがとにかく情報が足りない。

仕方なく話を聞くことに決めた。


「勇者じゃないけどお願いしようかな。それ次第では協力してもいいよ」


エルフたちから歓声が上がる、あまり期待されても困るのだが―――。

とりあえず兵士たちの手当ても終わったのでまた馬車で移動することになった。

ショウが壊れた折に入ろうとしたら慌てて止められて馬車の中へと案内された。


「げっ、こいつと一緒か」


馬車の中は互いに向かい合って6人ほどが座れる広さだったが、ショウの反対側にはサンソンが寝かされていた。

起きて暴れだしたらまた大人しくさせよう、ショウがそう決めるのと同時に、馬車はまた動き始めるのだった。


ショウを護送していた襲われる前とは違い見張りの兵士に合わせる必要はなかったので、馬車本来の速度で走ることができた。

揺られ始めて2時間ほどたったあと馬車は止まった。

ドアが開かれ先ほどの隊長が中へ声をかける。


「勇者様、サンソン様、到着です」


サンソンは相変わらず気絶しているので放っておいて外へ出ることにした、死んでいないか少しだけ心配だ。


「すごいな―――」


ショウは目の前の光景に思わず息を呑む。

そこには今まで見たことがないほどの大きな木が立っていた。

上のほうなど雲と同じ高さまであるようだ、一体いつから生えているのだろう。

振り返ればその木を中心に町が栄えている、町ではエルフだけではなく人間やほかの種族など様々な人種が行きかっていた。


「我らエルフの国の首都、ユグドラシルです。こちらへどうぞ、巫女様の元へご案内いたします」


ショウは馬車を降りて隊長の後へ着いていく、木の根元に寄り添うようにして王国のお城ほどの大きな木が立っていた。

その木はくりぬかれ中が建物になっているようだ、見張りの兵士がいるところをみるとここが巫女様がいる城?なのだろう。


中へ入ってみると意外に明るかった、何か仕掛けがしてあるのだろう。

木の香りと木の葉のこすれる音がやさしく響く、建物の中にいるのに森の中にいるような不思議な感覚だった。


ショウが連れてこられたのは王国の謁見の間のようなところだった、ここらへんの考え方はエルフも同じなようだ。


ショウが隊長と待っていると玉座側の扉が開いた、金色の鎧を身にまとい同じような金色の長い髪と青色のマントをたなびかせた美しいエルフが入ってきた。

膨らみは控えめだが胸があるので美女で間違いないだろう。


彼女が腰から剣を鞘ごと外す、体の前で杖のように剣を立てるとその上に両手を乗せた。

まるで射貫くような視線でショウを見ている、かなり警戒されているようだ。


彼女が入ってしばらくしてもう一度扉が開いた。

部屋の中の空気が変わる、まるで香水でも撒いたかのような香りが部屋を包み込む。


雪のような真っ白な肌に森の色のドレスを見にまとい、頭には繊細な細工の施された銀のティアラをつけていた。

頭の後ろでまとめた長い金色の髪が歩くたびに揺れていた。


彼女は玉座に座るとショウを見つめる、すると突然涙を流し始めた。


「お待ちしておりました、勇者様」

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