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ギルド〜なぜか厄介ごとに巻き込まれた件〜

翌朝

ショウは町を出るのではなくギルドに来ていた。

ダンジョンのモンスターが弱すぎるので強いダンジョンの場所を聞いておこうと思ったのだ。

ショウがギルド員と話していると、後ろから声をかけられた。


「あの、あなたはもしかして昨日私達を運んでくれたショウさんですか?」


名前を呼ばれて振り返るとそこには昨日勘違いしてショウを襲ったエルフの冒険者達がいた。

声をかけてきたのは剣士風の男エルフだ。


「やっぱり昨日の出来事は夢じゃなかったんですね・・・」


魔法使いの女エルフは顔を歪ませて肩を落としてがっかりしていた。


「俺も信じられないけどこうして目の前にいるし信じるしか無いんじゃない?」


弓兵の男エルフはそんな魔法使いの肩に手を置き同じようにがっかりしていた。

昨日の出来事は彼らのトラウマになってしまったようだ。

ただ一人、剣士風のエルフだけは違っていた。


「昨日は私達のせいで迷惑をかけてしまいすみません。人間の冒険者は強いですがショウさんはその中でも特別ですね。レベル150以上の僕たちが手も足も出ないなんて初めてでしたよ」


あの状況で自分を犠牲にして仲間を助けようとしたエルフだけあって肝が座っているようだ。


「もう気にしてないから良いよ。ところであんたたちはなんでレベル50のダンジョンにいたんだ?それだけレベルが高ければもっと上のダンジョンに行けるだろうに」


ショウの言葉にエルフ達は戸惑っているようだ。何かおかしなことを言っただろうか?

しばらく沈黙が続いたが、魔法使いのエルフがなにかに気づいたようだ。


「あの、もしかしてダンジョンの入り口の看板の数字をダンジョンのレベルだと思ってませんか?」


入り口に掲げられているのだから勝手にそうだと思っていたが違うのだろうか?


「違うのか?このまえ30のダンジョンも攻略したけどこことあんまり大差なかったぞ」


ショウの言葉にエルフ達はかなり驚いたようだ。

剣士のエルフも弓兵のエルフも引きつった笑いを浮かべていた、魔法使いのエルフに至ってはまた気絶しかけたのかよろけていた。


「ダンジョンの入り口にある看板はこの国で何番目に難しいかを示しているんですよ。私達が出会ったのはこの国で50番目の難易度のレベル140のダンジョンです。ショウさんが攻略したと言う30のダンジョンは確かレベル200以上のパーティでも難しい難易度だったと思いますが・・・」


ボスも弱かったし大したことないと思っていたがどうやらかなり難易度の高いダンジョンだったようだ。


「ってことはこの国にはあと29しか強いダンジョンはないのか・・・」


ショウが次に挑むダンジョンをどこにしようか悩んでいると剣士風のエルフが声をかけてきた。


「ショウさん、貴方の強さを見込んでお願いしたいことがあります。この国に迫っている危機を退けるため力を貸してください」


エルフはショウに向かって頭を下げている、他の二人はあまり乗り気ではないようだ。


「悪いけど面倒ごとはゴメンだよ」


ショウはエルフのお願いをきっぱりと断った。

ただスライムちゃんとのんびり冒険ができればいいだけだ。

国の危機が迫っていようが自分には関係のないことだった。


「あなたの強さにはきっと何かの意味がある。それに数日前に巫女様からお告げがあったのです。我らを救う勇者様がこの地にまもなく現れると。あなたに違いありません」


厄介なことに巻き込まれる気配を感じて逃げ出そうとしたが、いつの間にか周りをエルフ達に囲まれていた。

どうやら昨日の騒ぎのせいで勇者が現れたと噂が広まってしまったようだ。

エルフ達の反応は様々だった。

半信半疑だがひと目見ておこうと集まる者、祈りを捧げている者、そして明らかに敵意を向けている者もいた。


「なんと言われようと俺は勇者じゃないよ、ただの人間の冒険者さ」


ショウが再び否定していると、人混みの後ろから急にナイフが飛んできた。

ショウは飛んできたナイフを指で挟んで受け止める、頭を狙ったところを見ると本気で殺す気だったようだ。


「下等な人間風情が勇者なわけがないだろう。お前らが弱かっただけで勘違いしてもらっては困る」


人混みが割れたその奥に、緑のローブを身にまとった長身のエルフが立っていた。

胸の辺りに美しい飾りが施された銀の羽飾りが刺してある、他のエルフたちよりも明らかに強そうだった。


「ずいぶんなご挨拶だな。本気で殺す気だった一撃を下等な人間ごときに止められて怒ってるのか?」


ショウはナイフを握り近づいていく、殺されかけて黙っていられるわけがなかった。

近づいている間に、周りの人たちのおかげで相手の素性を知ることができた。


「あの髪飾りにあのお姿・・・間違いない。巫女を守る守護者の第2位のサンソン様だ。レベル700を優に超えるエルフ1の短剣の使い手。なぜこのようなところに・・・」


サンソンと呼ばれたエルフは周りのエルフを睨みつけていた、その視線にエルフ達は一斉に黙ってしまった。

近づいてみると他のエルフたちと同じように細かったが、その身長はショウの頭2個は高かった。


「今のは手加減してやったのだ、そんなことすら分からないとは人間は本当に愚かだな。竜がスライムを殺すのに全力を出すと思うか?」


こいつは人間が嫌いでショウをバカにしているということは分かった。

まぁさっきの例えだとショウのスライムちゃんには竜如きが本気を出しても勝てないと思うがな。


「竜が全力を出しても勝てないスライムが世の中にはいると思うぞ。試してみるか?」


ショウの挑発にサンソンはかなり苛ついたようだ。

エルフにしては珍しく怒りやすいやつのようで、額に青筋が浮かんでいた。


「吠えるではないか。ギルドを人間の血で汚したくはない外へ出ろ」


サンソンはそう言い残し外へ出ていく、ショウが外へ出ようとすると剣士風のエルフが慌ててショウを引き止めた。


「ショウさんやめてください!いくら貴方が強くても彼には勝てない!この国を荒らしていた100人以上のレベル300以上のダークエルフの軍団を一人で壊滅させたやつなんです!」


レベル300がなんだ、俺はマイナス999だ。


「大丈夫だ、とりあえず殺さないように気をつけるさ」


ショウはひらひらと手を振りながら外へ出ていく、エルフたちも見物しようと外へ出ていった。


外へ出ると町のエルフたちも集まっているようだ、中には人間の冒険者の姿もいた。


「逃げる知能すら無いとは愚かだな、今なら謝れば許してやってもいいぞ。人間には土下座という謝罪方法があるのだろう。あれを俺に見せてくれ」


サンソンは変わらずショウを見下しているようだ、ふざけたことをぬかすエルフだ。


「お前を倒した後で体に教えてやるさ。死なないように気をつけろよ」


ショウの言葉に周りの人だかりがざわつく、サンソンは聞き終わる前にショウにナイフを飛ばしていた。

飛んできたナイフは遅かったので避けようと思ったのだが、後ろの人混みに刺さるコースだったので仕方なく手で弾いて地面に落とした。


「おいおい周りの人のことも考えろよ、危ないだろ」


サンソンは新しいナイフを手にショウに斬りかかってきた、こちらの話など全く聞く気がないようだ。

振り下ろされるナイフはとても遅い、まるでゴブリンに襲われているような感覚だった。

ショウは最小限の動きでナイフを躱していく、しばらく遊んでやるか。


「どうした!躱すだけで精一杯か?人間はやはり口だけだな!」


しばらく躱していたが空きてしまった、ショウはナイフを躱した瞬間に飛び上がり首の後ろに回し蹴りを叩き込んだ。

死なないように十分手加減したので、サンソンは気を失った程度で済んだようだ。

両手を前に出して地面に頭をつけたまま動かなくなってしまった。


「これが土下座さ。って言っても聞こえてないか」


周りの人混みから歓声が上がる、サンソンは相当嫌われていたようだ。


「何の騒ぎだ!」


人混みが割れて鎧を身に着けたエルフたちが近づいてきた、どおうやら町の警備兵のようだ。

警備兵達はショウと地面に倒れているサンソンを見て状況を理解したようだ。


「彼は守護者のサンソン様・・・貴様がやったのか?」


剣を抜きショウを取り囲む兵士たち、なにやら嫌な雰囲気になってきた。


「人間風情がエルフの国で暴れてただで済むと思うなよ。抵抗は無駄だ、おとなしくついてこい」


剣を向けられてはいるがショウにとっては大した問題ではない。

彼らを蹴散らして逃げることはできるだろうがそれでは本当にお尋ね者になってしまうだろう。


『事情を説明すれば目撃者も多いしそのうち解放されるだろう。とりあえず大人しくしておくか』


ショウはひとまず両手を上げておとなしく連行されることにした。

後になって思えば、この時に無理矢理にでも逃げ出しておくべきだった・・・



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