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レベル50?のダンジョン〜危うくお尋ね者になるところだった件〜

次の町へ着いたショウは早速ダンジョンへと向かう。

ダンジョンの入り口の看板には050と書かれていた。


「ここはレベル50か、前のダンジョンよりも楽しめそうだな」


エルフの国のダンジョンは王国よりも強いと聞いていたので、エルフたちにとってレベル50でも人間達にとってはそれ以上の難易度だろう。

カタナを抜こうか考えたがとりあえず素手で進むことにした。


しばらく進んでいるとモンスターと遭遇した。

青い毛並みの犬のような姿のモンスターだが、その額には大きな角が生えていた。

ショウの存在に気づいたのか、モンスターはその鋭い角を向けて突っ込んできた。

普通の人間にとってはかわすことなどできない速さだったが、ショウにとっては全く問題なかった。

ショウは迫り来る角を掴んで止め、そのまま体を持ち上げ地面へと叩きつけた。

地面が割れるほどの勢いで叩きつけられたモンスターは灰となって消えてしまった。


「もろいな・・・」


動きも遅いし体力もない、この程度なら素手で十分だろう。

モンスターはとりあえず一角犬と呼ぶことにした。

ショウが奥へ進んでいると今度は複数の群れで現れた。

何匹現れようが同じことだ。

迫り来る角を掴んで叩きつける、その繰り返しで簡単に全滅させることができた。


「これがこいつらのドロップアイテムか」


ショウの足元には一角犬の角が何本も落ちていた。

拾い上げてよく観察してみる、これは良い使いみちがありそうだった。

ショウは角をポーチにしまい奥へ進む、狭い道に差し掛かった時に早速出番が現れた。

遠くから一角犬が突っ込んできている、今度は9体ほどの群れのようだ。

ショウは先程の角を1本手に取ると、群れの先頭めがけて軽く投げ飛ばした。

ショウの手を離れた角は衝撃波を撒き散らしながら凄まじい勢いで飛んでいく。

角が当たった瞬間一角犬の体は弾けるように吹き飛んでしまった。

角は後ろに並んでいた奴らも全て倒した後空中で消えてしまった、どうやら衝撃に耐えれなかったようだ。


「想像以上の効果だな・・・これは集めておいたら便利だな」


ショウは付近をうろついて一角犬をさがしはじめた、あの角は色々と役に立ちそうだ。

一角犬を見つけた端から倒していく、30本程度集めたところで一角犬の気配が付近から一切無くなってしまった。


「これ以上は無理そうだな、さっさとボスを倒して出るか」


ショウは角をしまい奥へと進む、だいぶ倒したはずだがまだまだ戦えそうだ。


「あれだけ倒しても疲れないしやっぱレベルが低いんだろうな・・・地図でも買って強いダンジョンがある町に向かうのも良いかもな」


そんなことを考えていると悲鳴が聞こえてきた、ショウは急いで声が聞こえた方へと向かう。

しばらく進むと開けた場所についた、そこには冒険者のものらしき荷物や武器などが散乱していた。

ショウの目の前には額から2本の角を生やした巨大な赤い毛並みの犬が立っていた。

角の先端には体を貫かれたエルフらしき冒険者がぶら下がっていた、ピクリともしないところを見るとどうやら死んでしまっているようだ。


ショウに気づいたボスは首を大きく振り死体を振り払うと、咆哮をあげて突っ込んできた。

ショウは突っ込んでくる角の間に体を潜り込ませ、ボスの額めがけて拳を叩き込んだ。

モンスターの巨体が宙を舞いダンジョンの壁に叩きつけられる、地面に倒れたボスはまだ灰になっていないところを見るとまだ息があるようだ。


「しぶといな・・・これでとどめを刺すか」


ショウは地面に落ちていた剣をひろい、地面に倒れているボスの体を斬りつける。

何度か斬りつけてようやく倒せたようだ、ボスの体が灰になって消えていく。

ボスが消えた後ショウは冒険者の死体を集めた、流石にこのまま放置するのは可愛そうだったからだ。

死体は全部で3体だった、どれもエルフだ。


「あんたの剣で倒せたよ、ありがとう」


剣士風の死体に剣を返そうとしたその時、広間の入り口から物音が聞こえた。

ショウが入り口を見るとそこにはエルフが3人立っていた。


「ちょうど良かった」


死体を彼らに一緒に運んでもらおうと思い立ち上がったその時、予想外のことが起きた。


「逃げろ!」

「助けてくれ!俺は何も見てない!」

「お願い!殺さないで!」


3人の冒険者は一斉に出口へ向けて走っていく、まるで化物でもみたかのような反応だ。

まだボスがいるのかと思いショウは後ろを振り返ったが、そこには何もいなかった。

注意深く周りを見渡してみたが、ここにはショウと死体しかいない。

そこまでしてショウは気づいた、もしかするとかなりまずい勘違いをされてしまったのではないだろうか。

辺りにボスはいない、返り血を浴びた人間の冒険者が血で汚れた剣を手に死体を見下ろしている。

状況証拠としては十分だろう。


「嘘だろ!急いで誤解を解かないと!」


ショウは剣を捨てて急いで彼らの後を追う。

誤解を解かないとお尋ね者になって冒険どころではない。

幸いにも彼らは一角犬と戦って足止めを食らっていたのですぐに追いつくことができた。

冒険者たちを囲んでいる一角犬たちを一瞬で灰に変え、冒険者達に声を掛ける。


「待ってくれ!俺の」


ショウが言い終わる前に男の剣士のエルフが斬りかかってきた。


「こうなったらやってやる!簡単に殺されると思うなよ!」


剣を握る手だけでなく全身がガタガタと震えていた、どうやら恐怖で混乱しているようだ。


「だから俺の話を」


言い終わる前に今度は火の玉が飛んできた、ショウは咄嗟に手を振って風を起こして防いだ。


「こんな化物勝てるわけ無いじゃないですか!こんなところで死にたくない!」


エルフの女がショウに杖を向けている、その声は震え目には涙が浮かんでいた。


「ごか」


今度は矢が飛んできたので手で受け止めてやった、力の加減を間違えて握った瞬間折ってしまった。


「化物め!そう簡単にやられると思うなよ!」


3人目の男の弓兵エルフは台詞は勇ましいが手が震えていた、そのせいで次の矢を上手くつがえることができないでいた。


ショウは話をしようとしたが、3人が次々と攻撃をしてくるため防ぐので精一杯だ。

防いでいるうちにショウは段々とイライラしてきた。


『こいつらが勝手に誤解してるせいなのになんで俺がこんなことしなくちゃいけないんだ?』


攻撃を防ぐ手にもついつい力が入ってしまったようだ、斬りかかってきた剣を思い切り弾いてしまった。

衝撃で剣士のエルフは宙を舞い、壁に背を叩きつけられ気絶してしまったようだ。

魔法使いのエルフが剣士に魔法をかけている、その間に弓兵エルフが短剣を手に襲いかかってきた。

ショウは短剣を奪い遠くへ投げる、武器を失なったエルフはショウに抱きついてきた。


「ここは俺に任せてお前たちは逃げろ!このことをみんなに伝えるんだ!」


ショウの腰にまとわりつきながら仲間を逃がそうとしているようだ。


「だから俺の話を聞けって!」


振り払おうとしたが力が強すぎたようで投げ飛ばしてしまった。

天井に体を叩きつけられたエルフは気を失って地面に落ちてきた。


「いや・・・来ないで・・・」


最後に残された女のエルフは涙を流して気絶した仲間を抱きしめていた。


『この人で誤解を解けないと大変なことになる!できるだけ優しく笑顔で話しかけよう!とりあえず立たせてあげないと』


ショウは慣れていないが精一杯笑顔を浮かべながら手を差し出した。


「俺の話を聞いて・・・」


ショウが言い終わる前にエルフの体がパタリと倒れた。

どうやら恐怖のあまり気絶してしまったようだ。


「まいったな、これじゃ誤解されっぱなしだよ」


どうしようか悩んだ結果、ショウは3人を外へ運んであげることにした。

大人3人を抱えていくのは大変かと思ったが、持ち上げてみると意外に軽かったため簡単に運ぶことができた。


『エルフって細いし体もやっぱ軽いんだな。まぁ楽でいいや』


ショウはダンジョンの外へ出るとギルドへ向かい気を失っている冒険者たちを預けた。

事情を説明しボスの広間に死体があることも伝えた。

最初は疑っていたギルド員も話を聞いて納得したようで、彼らが起きたら説明してくれるらしい。

これで何とか誤解されずに済むだろう。


その晩

「今日はつかれたなぁ」


ショウは宿屋のベッドの上でスライムちゃんを抱きしめる、今日は本当に危なかった。

エルフの国に入って2日目でお尋ね者になっては冒険どころではない。


「有名になったら魔王より厄介なやつが来そうなんだよなぁ」


ショウの背筋に悪寒が走る、思い出すのはやめておこう。


「明日からは普通の冒険者として過ごせるように頑張ろう」


スライムちゃんを抱きしめて、ショウは眠りについた。


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