旅立ち〜魔王を倒して二人(?)で冒険に出発した件〜
ショウは全身血まみれのまま日の光をあびながら立ち尽くしていた。
魔王を倒した、これでスライムちゃんが呪いにかかることはないはずだ。
ショウがカタナをしまうとスライムちゃんが飛び込んできた。
飛び込んできたスライムちゃんを抱きしめる、これでやっと二人(?)で旅に出れるはずだ。
「そう言えばまだやることがあったな・・・」
旅に出る前にまだ大仕事が残っていることを忘れていた。
ショウは左手にはめた指輪を眺める。
聖女からどうやって逃げるか・・・
正直言って魔王を倒すよりも難しい問題だった。
「やりすぎちゃったもんなぁ、弱すぎるんだよ」
魔王と相討ちになった工作をして逃げるつもりだったのだが、魔王が弱すぎて一欠片も残さず消し飛ばしてしまった。
どうしようか悩んでいると、斬り飛ばした変身前の魔王の手が落ちていることに気づいた。
手を拾い上げてどう処理するか考えていると良いことを思いついた。
「これは・・・使えるかもしれないな」
ショウは指輪を外すと落ちていた手にはめる。
なかなかいい感じだがこのままではバレてしまうだろう。
「燃やすか」
ショウは火をおこすと指輪をつけた手を中へ放り込む。
しばらく待った後火から取り出してみた、手はかろうじて人の手だということは分かる程度に焦げていた。
これならショウの手だと勘違いしてくれるはずだ。
「あとはもう少し激戦の跡を演出するか」
ショウはカタナを使って床や壁など至るところに傷をつけていった。
水筒の水を使って全身についていた血を洗い流し血痕もつくった。
「なかなかいい感じだな、あとは姫様たちが来る前にさっさと逃げ出すか」
ショウはスライムちゃんを抱きかかえると割れ目からダンジョンの外へ出ていった。
聖女が騙されてくれるように祈りながら、近くの村を目指した。
ーショウがダンジョンを出ていって3日後
ダンジョンの中には騎士団と共に聖女の姿があった。
城に帰ってショウを待ったのだが、いつまでも戻ってこないので見に来たのだ。
恐らくショウと魔王との決戦後になった部屋を捜索していた。
床や壁についた傷跡から相当な激戦だったと思われた。
「騎士団長!これを・・・」
騎士の一人が騎士団長に指輪をはめた黒焦げの人の手のような物を差し出す。
騎士団長はそれを受け取り、指輪を取り外すと布で汚れを落として姫様へと手渡した。
「これは・・・私がショウ様に渡した指輪です」
姫様は指輪を抱きしめてその場に崩れ落ちる。
その頬には涙が流れていた。
「彼は本当に英雄でしたな。我らを救うために立った一人で魔王に挑み、自らを犠牲にして見事うち倒してくれたのですから」
騎士団長の目も潤んでいた、意外に涙もろいようだ。
騎士たちもみな悲しんでいるようだった。
ダンジョンが悲しみに包まれる中、ふと姫様の目に黒焦げの手が見えた。
それを見た瞬間姫様の涙が止まる、黒焦げの手を拾うとまじまじと観察し始めた。
しばらく観察した跡満足したのか手を放り捨てた。
「ふふふ、まったく可愛いことをしてくれますね」
姫様が急に笑いだしたことで騎士達に動揺が走る、一体どうしたというのだろうか。
「姫様・・・?」
気でも狂ったのかと心配した騎士団長が声を掛ける。
姫様は騎士団長に笑顔を向けていた、だがその目は笑っていなかった。
「あれはショウ様の手ではありません。いくら燃えたとは言えそれぞれの指の大きさが5ミリから1センチも違います。断言します、ショウ様はきっと生きています。なにか事情があってこんなことをしたのでしょうけれど、必ず見つけてあげましょう。世界を救った英雄で、私の旦那様、そしてこの国の次期国王なのですから・・・」
姫様は指輪を見つめて嬉しそうに微笑む。
騎士たちも姫様の元気が戻ったことを最初は喜んだが、姫様が指輪を眺めていつまでも微笑んでいる様子を見て次第に恐怖を覚えていった。
「そうとなればここにもう用はありません。早く城に帰ってショウ様を探してあげましょう。こんなことをするなんてきっと私達に言い出しにくい事情があったのでしょう。早く彼の力になってあげれるように全力で探してあげてくださいね」
姫様と騎士たちはダンジョンを出ていく、ダンジョンの中には静けさが戻った。
帰り際に姫様は自分が囚われていた檻のそばを通り過ぎた。
地面に描かれた魔法陣は汚れてしまいところどころかけている部分もあった。
『そういえば、魔王が私を捉えた時おかしなことを言ってましたね。あの方の生贄として相応しいとか。今思えばなんて失礼なんでしょう。私に相応しいのはショウ様だけですのに』
思い返せば魔王は自分のことを魔王と呼んではいなかった。
なにか嫌な予感がしたが今はショウを探すことが先決だ。
逸る気持ちを抑えつつ、騎士たちと共に城へ帰るのだった。
姫様がダンジョンを捜索している時ーダンジョンの近くの村の宿屋にて
「おはようスライムちゃん!今日もぷるぷるで可愛いね!」
ショウはベッドの上でスライムちゃんを抱きしめる、スライムちゃんも相変わらずショウにベタベタだった。
ショウが魔王を倒して3日間ずっと休んでいた、あれから毎日ステータスを確認しているがスライムちゃんが呪いにかかることはなかった。
どうやら魔王が呪いをかけているというのは本当だったようだ。
「少しだけゆっくりできたしそろそろ旅に出ようか!また二人(?)でダンジョンに潜ろう!」
スライムちゃんを入れる箱も新調したし、旅に出る準備はバッチリだ。
ショウは村を飛び出すと城とは反対側のダンジョンがある町を目指して走る。
あれから聖女の追手は来ない。
聖女を騙すことに成功したと思ったが、用心するに越したことはないだろう。
これからやっと二人きりの冒険が再開できる、今度は聖女や魔王なんかに邪魔されないと良いな。
そんなことを考えながら走り続けるのだった。
最強(レベルマイナス999)の冒険者と最強(レベル999)のスライムの冒険が再び始まった。
次回ー小ネタを書きます。




