王国〜最後の一体を倒した件〜
ショウが城へついたとき、すでに時刻はお昼を回っていた。
レナードと分かれた後は休まず走り続けたのだが、予想以上にかかってしまった。
城の中へ入ると聖女の部屋へと向かう、ドアをノックすると中から聖女の声が聞こえてきた。
ショウがドアを開けて中へ入ると、聖女が飛びかかってきた。
ショウは聖女をかわすと椅子に腰掛ける、聖女は勢い余ってドアに顔をぶつけていた。
振り返った聖女は赤くなった鼻をを手で隠しながら優しく微笑んだ。
「おかえりなさい、ショウ♡」
相変わらず落ち着きのない聖女様だ、ショウは半ば呆れながら戦果を報告した。
「ただいま。とりあえずナイトキングを倒してきたよ。これで残る魔王の配下は後1体だけだ。とりあえず今日はここで休んで、明日の朝出発しようと思う」
要件を伝え終え部屋を出ようとしたショウの腕を聖女が掴んで止めてきた。
なにか話があるようだ。
「新たな情報が手に入ったので一緒に書庫まで来てください。それと、ショウ様にお願いされていた武器への加工もできましたのでそれも後でお渡ししますね」
ショウは聖女に連れられて書庫へとやってきた、この前と違い机の上や床に本は散乱していない。どうやらあらかた調べ終わったようだ。
「ショウ様にはこれを見ていただきたいのです」
聖女が一冊の本を開いて差し出してきた、そこには絵が書かれている。
汚れていて見えづらかったが、たくさんのスライムが一匹のモンスターの前に集まっているような絵だった。
反対のページには読めないが古代文字で何やら書いているようだ。
「これってスライムちゃんと同じ種族のスライムちゃんが集まってるのか?何をしているところなんだ?」
聖女は一枚の紙を取り出すと内容を読み上げる。
ショウは思わず耳を疑ってしまった。
「経験値を吸うスライムたちは、レベルがある程度まであがると魔王に食べられるのです。魔王はスライムを食べて経験値を得て強くなると書かれています。この絵は魔王がスライムちゃんを食べようと集めている絵のようです」
ショウの心に例えようのないほどの怒りが湧いてきた。
スライムちゃんの同族相手になんてことをするんだろう。
俄然魔王を倒すやる気が湧いてきた、この内容が本当ならば生かしておくわけにはいかない。
「魔王の居場所は分かっていませんが、城の総力をあげて探しています。ショウは最後の一体を倒すのをお願いします。そのための武器も用意しました」
聖女が一本の槍を持ってくる、刃の部分はショウのカタナと同じように真っ黒だった。
「これは・・・俺のカタナと同じ素材か?このまえ渡したやつが加工できたのか?」
カタナを抜いて見比べてみる、同じような色だが槍のほうが濃ゆかった。
「そうです!・・・と言いたいところですが、騎士団の鍛冶職人でもショウのカタナのように加工できなかったのです。なので槍の刃として使えるように形を整えただけです。最後の一体は空を自在に飛び回るドラゴンということで、対抗できるように投げ槍にしてみました」
どうやらショウの望むような加工はできなかったようだが、それでも十分ありがたい。
投げ槍ということで、よく見ると普通の槍よりも細かった。
「ありがとう、これで十分戦えそうだよ」
ショウが槍を背負うと聖女がこちらに手を差し出す。
その手の中には指輪が握られていた。
「遅くなりましたけれど、婚約指輪です。二人の居場所がわかるように魔法をかけてもらいました。これでどれだけ離れてもつながっていますね♡」
遅くなったも何もまだ結婚していないのだが・・・
ショウが指輪を眺めていると地震のような揺れが城を何度も襲った。
よろけたふりをして聖女が抱きついてくる、こんな時まで何考えてんだこの女は。
二人が急いで外へ出ると、城の至るところが崩れ火の手が上がっている。
傷ついた騎士を助けるメイドや執事達、武器を手に走り回る騎士達などまるで戦場のようだった。
「聖女様は地下へ避難してろ!俺はこの騒動を収めてくる!」
ショウは聖女を置いて騎士達が向かっている方へと急ぐ、そこにこの騒動の原因があるだろう。
たどり着いたのは中庭だった、キレイだった中庭も至るところから火の手が上がっていた。
「ひるむな!今こそ騎士団の意地を見せろ!」
騎士団長の怒号が響く、声がする方へ駆けていくと信じられない光景が飛び込んできた。
小さな家ほどもある赤い竜と騎士団が戦っていた。
盾を構え隊列を組む騎士たちを尻尾で容赦なくなぎ倒す、槍も剣も矢もその鱗に弾かれていた。
唯一騎士団長のみ攻撃に耐えれるようだ、竜の腕を何とか受け止めていた。
竜は炎を吐いて騎士たちを焼きながらあたりに火を撒き散らしていく、かなりの数の騎士がやられているようだ。
ショウはカタナを抜いて騎士たちと竜の間に飛び出す、騎士たちから歓声が上がった。
「ショウ様が来てくれたぞ!お前ら、邪魔にならないようにさっさと撤退だ!」
騎士団長が一斉に騎士達に号令を出すとすぐに騎士たちは撤退していく、中庭にはショウと竜だけが取り残された。
これで周りの被害を気にする必要はないだろう。
ショウはカタナを振り上げて竜に斬りかかる、だがその鋭い爪で止められてしまった。
横から尻尾が迫ってくるのが見えて慌てて後ろに飛ぶ、尻尾が風切り音を上げながら目の前を過ぎていく。
竜はその巨体に見合わず素早かった、ショウはカタナに魔力を込めて真空刃を飛ばす。
魔力3000を込めたが鱗に弾かれてしまう、竜が炎を吐こうと息を吸い込んでいるのが見えた。
ショウは自分の体を信じて竜が吐く炎へ飛び込む、炎で姿を隠し懐へ飛び込むと竜の片腕を斬り落とした。
「これがステータスオールSSの力だ!」
服が焦げてしまったが体に痛みはない、レベルマイナス999でステータスが上限近くだったので何とか耐えれたのだ。
腕を切り落とされた竜は翼を広げ空へと飛び立つ。
接近戦はまずいと判断したのか上空を旋回し、地面に向けて次々と炎を吐いてきた。
ショウは空を飛ぶ竜に向かって真空刃を飛ばす、今度は魔力10000だ。
一瞬竜の体がよろけたが、ダメージにはならなかったようだ。
そのまま空を飛び続け、炎を吐き続ける。
「くそ、なんとかしないと」
ショウは炎を避けながら次の手を考える、背中に抱えたもう一つの武器のことを思い出した。
ショウはカタナをしまうと槍を構える、こいつで撃ち落とすしか無い。
チャンスは一度きり、失敗すればショウだけでなく城の人たちは全滅だろう。
ショウは炎を避けながら竜を観察していく、どこかに勝機があるはずだ。
「見つけた!」
何度か炎を避けて気づいた、竜が炎を吐くために首を持ち上げる時一瞬だけ動きが止まるのだ。
ショウは炎を避けながらそのタイミングを待った。
竜が首を持ち上げた瞬間、ショウは渾身の力を込め槍を投げる。
空気を切り裂き衝撃波を残しながら飛んだ槍は、竜の体を見事に貫き空へと消えていった。
体を貫かれた竜が地面に落ちる、驚いたことにまだ息があるようだ。
ショウはカタナを抜いて竜の首を斬り落とす、ようやく竜は絶命したようだ。
ショウはカタナをしまいあたりを見渡す。
城の至るところから火の手が上がり、傷ついた騎士たちのうめき声や治療する人々の声が聞こえていた。
「倒せたけど、勝った気がしないな」
ショウは城の消火活動と騎士たちの手当を手伝いに向かうのだった。




