王国〜騎士団は役に立たなかった件〜
ショウが部屋で聖女の帰りを待っていると、なにやら外が騒々しくなってきた。
何かあったのだろうか?
部屋の外へ出ると、騎士たちが慌ただしく走り回っていた。
ショウは近くにいた騎士に話しかける。
「みんな慌ててるけど何かあったのか?」
騎士は膝をつき頭を下げると質問に答えた。
「ショウ様が来る前にモンスターの討伐に向かった部隊が全滅したようです。そのモンスターがこちらに向かっているため迎え撃つ準備をしているのです」
そう言うことか、これはチャンスだな。
通常モンスターはダンジョンの外に出ることはない。
外に出たら能力がかなり下がってしまう上、町にいる冒険者にすぐに討伐されるからだ。
今回のモンスターはどこのダンジョンから出たという情報もない上に、ダンジョンの外で騎士団を倒しているところを見るとどうやらかなり強い特殊なモンスターのようだ。
特殊なモンスター・・・このタイミングで現れて城を目指しているということは魔王が関わっている可能性が高い。
「何か手がかりがつかめるかも知れないな」
ショウはスライムちゃんを箱へ戻すと、戦いに参加するために外へ向かうのだった。
城門の前では騎士団長が5名の騎士たちに指示を出していた。
騎士団長はショウに気づくと敬礼して出迎える。
「俺も参加したいんだけど良いかな?」
ショウの申し出に騎士たちがざわつく。
騎士団長も驚いているようだ。
「それはありがたいですが、よろしいのですか?相手は平均レベル243の騎士3人をも倒す強力なモンスターですよ」
魔王が関わっている可能性が高いならぜひとも参加したい。
情報を得るためにも、ショウはこのチャンスうを逃すつもりはなかった。
それに自分の力がどの程度通用するかも知りたかったのだ。
「任せてくれ。そのために俺はここに居るんだからな」
騎士たちから歓声があがった。
中には安堵の表情を浮かべているものもいた、どうやら本当は不安だったようだ。
「ではお願いします。力をお貸しください」
ショウは騎士団と共にモンスターを迎え撃つべく移動するのだった。
戦いの場所に選んだのは、城から少し離れたところにある平原だ。
遮蔽物のないこの場所なら不意打ちを受けることもないし、戦いやすいだろう。
斥候の騎士を送った後、ショウと騎士たちは最後の確認を始める。
「いいか!我らが倒れればモンスターを止められるものはいない!命をかけてでもモンスターを討伐するぞ!」
騎士団長の激励に、騎士たちから歓声が上がる。
騎士たちはみな最低でもレベル250以上の手練れだ、騎士団長に至っては300以上あったはずだ。
士気も高い上に装備も十分に整っている、並のモンスターでは相手にならないだろう。
「俺の出番はないかもしれないな」
ショウがそんなことを思っていると、斥候の騎士が戻ってきた。
「ご報告します!森の中で大型のモンスターを発見!予想到着時刻まで残り5分!モンスターはミノタウロスに酷似した見た目ですが大きさは通常の2倍以上、手には巨大な両刃の斧を装備しています!」
騎士団たちに緊張が走る、ショウはいつでも動けるように準備運動をはじめた。
「聞いたか諸君!迎撃体制で待機!」
騎士団長の号令で騎士たちは剣2→槍2→弓1の順番で隊列を組んだ。どうやらこの隊列で迎え撃つようだ。
誰も死なないといいのだが・・・
隊列を組んだ騎士たちの後ろに騎士団長、その後ろにショウという並びでモンスターを待つ。
しばらくすると地面が揺れ始めた、揺れは次第に大きくなっていく。
揺れと共に遠くの方から何か巨大な赤い影が近づいてくる、どうやらあれが例のモンスターのようだ。
斥候の報告通り顔は牛で体は人間のモンスター、ミノタウロスだ。
赤い毛で覆われた体はショウの三倍はありそうだ、手にした両刃の斧がショウと同じくらいの大きさだろう。
モンスターはショウ達に気づくと雄叫びをあげた。
空気が振動し、騎士達に一気に緊張が走る。
すると次の瞬間、モンスターがショウめがけて斧を投げてきた。
空気を切り裂きながらすさまじい勢いで飛んでいく斧を見て、騎士団長も騎士たちもショウが死んでしまうと思った。
一方ショウは呆れたようにため息をはいた。
「唯一の武器を投げるなんて、馬鹿だなぁ」
ショウは飛んでくる斧の刃の部分を片手で掴み、難なく受け止めた。
目の前の光景が信じられないのか、騎士団長や騎士だけでなくモンスターまで黙ってしまっていた。
ショウが斧を地面に落とすのと、モンスターが突っ込んでくるのはほとんど同時だった。
頭の角をこちらへ向け、隊列を組んだ騎士たちをなぎ倒しショウの元へと一直線に迫ってくる。
騎士団長も槍を手に立ちふさがったが無駄だった。
モンスターの突進を止めきれず吹き飛ばされてしまった。
武器を持っていないモンスターの手によって一瞬で騎士団は壊滅してしまった。
「この強さ、ますます魔王に関係がありそうだな!」
ショウは突っ込んでくるモンスターの角を掴んで止めると、そのまま持ち上げて地面に叩きつける。
地面を割るほどの衝撃を受けたモンスターの口から血が溢れた。
ショウはカタナを抜くと、倒れているモンスターの背中に思い切り突き立てる。
モンスターの絶叫が草原に響いた、ショウはうつぶせに倒れているモンスターの体を踏みつける。
体からカタナを抜き首元に当てながらモンスターに話しかけた。
「一応聞くけど,魔王の居場所とか知らないよな?」
もちろん返事はない、モンスターは唸り声のようなものを上げているだけだ。
ショウは倒れているモンスターの首を斬り落とす、喋れないなら情報を得ることは無理だろう。
首を切り落とされたモンスターは動かなくなった、ダンジョンと同じように消えるかと思ったがどうやら死体は残るようだ。
「さすがショウ様、お見事です・・・」
ショウがカタナをしまって死体を観察していると、騎士団長が声をかけてきた。
見渡すと騎士たちも起き上がっている、みな怪我はしていたが死人はいなかったようだ。
ショウは死人が出なかったことを喜んだが、騎士たちは戦力にならない事実に悲しさを覚えた。
次に魔物が出た場合、騎士たちは戦わせないほうが良いだろう。
「大したことないよ、それよりもこの死体の調査をお願いしてもいいかな?」
死体からわずかでも情報が手に入ると良いのだが望みは薄いだろう。
どこから現れたのか、それだけでも分かれば良いのだが。
「お任せください。戦闘では全くお役に立てませんでしたがそれぐらいであれば私達でもできるでしょう」
騎士団長に後を任せ、ショウは先に城へと戻っていった。
ショウが城へ着くと聖女が出迎えてくれた。
「おかえりなさい。お怪我はありませんか・・・って聞くまでもないですね」
ショウは聖女に先程の出来事を話した。
モンスターの外見の特徴と死体が消えなかったことを伝えると、どうやらその部分がかなり気になったようだ。
「確か文献にそんな記述があったような・・・調べてみますね」
そういうと聖女は城の奥へと消えてしまった、あたりも暗くなってきたことだしそろそろ休むことにしよう。
ショウは前のように中庭にテントを張らせてもらった、客室に来るようにメイド達にお願いされたがお断りした。
やはりまだ城の中は落ち着かない・・・
テントに入るとスライムちゃんを抱きしめる、やっと二人でゆっくりできそうだ。
「今日は変なモンスターを倒したよ、魔王につながる手がかりが見つかれば良いんだけど」
ショウは今日戦ったモンスターのことを思い出す。
思い出してみるとあのモンスターは真っ先にショウを狙ってきた。
もしかすると目的地はお城ではなくショウだったのかもしれないな。
「だとしたら、俺も魔王に目をつけられたのかなぁ・・・」
それならそれで好都合だ。
はやく魔王を倒してスライムちゃんと冒険に出ることを夢見ながら、眠りに着いた。




